きよこの書き散らかし小説。
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Deep Forest

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第26話 ジャイさん品定め作戦、お返事編

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「あは、あははあははははっはっは」

 笑ってごまかすしかない。喉の奥から声を絞り出し、強張った口角を無理やり上げる。片手で頭を掻きながら、てへっと小首を傾げてみせた。
 ジャイさんは呆気にとられた顔でぽかーんと口を開けていたが、私の笑いにつられたのか、引きつった笑みを浮かべた。

「というわけで、帰ります」

 どういうわけなのかわからないが、ここはとっとと退散しよう。お疲れ様でした。

「ちょ、ちょ、待てーい」

 立ち上がりかけた肩を押さえつけられ、私はもう一度どさっと椅子に座ってしまった。

「今、面白いこと、言ってたよね?」

 不敵な笑みで、私をじっと見つめてくる。目をへの字に歪ませて、実に楽しそうだ。

「エッチビーの鉛筆削りの話ですか」
「そんな話してないはずだけど」
「エロな男は削ってしまえというお話ですけど、聞きますか?」
「……想像するだけで恐ろしいから聞きたくない」
「じゃあ、帰りますね!」

 有無を言わさぬ会心の笑顔を出してやる。たぶん今、我が人生で一番最高な笑顔をしてると思う。

「凛香ちゃん、シラフでエッチしようって言ったよね?」

 直球で来たよ! ズドガーンと大砲で胸を貫かれた。痛い。死ぬかもしれない。

「しようなんて言ってません。してみれば、って言われただけです」

 日本語がカタコトになる。口がカクカクとロボットみたいな動きをしてしまう。
 誰か、タイムマシーンを下さい。私、一分前に戻りたい。

「それじゃ、聞き間違いじゃなかったってことか」
「どほぢぐおい語で、『家に帰りたい』っていう意味の言語ですから、聞き間違いですね。帰ります」
「何語? どこの国? ていうか、何人?」
「う」
「う?」

 言い逃れが出来なくなった私がよっぽど面白いのか、ジャイさんの顔がどんどん意地悪くなってくる。切れ長の目を細め、笑いをこらえる口元を手で一生懸命隠してる。

「うっさい! バカジャイ! エロ! 変態! ドエス! ど根性ガエル!」
「り、凛香ちゃん、聞こえちゃうから」

 思わず怒鳴り散らしたら、ジャイさんは笑うのをやめて「しー」と人差し指を立て、ドアの向こうを目で指した。
 ああ、もう! わかってるってば。ここは会社だ。大騒ぎすれば、薄い壁の向こうに聞こえてしまうかもしれない。
 皆、仕事をしているから気付かないかもしれないけど、もしかしたらってことは充分ありえる。

「ど根性ガエルは関係ないよね」
「そんなこと言ってません」
「思いっきり言ってた」
「叫びますよ」
「すいません」

 立場は私の方が優勢らしい。

「で、どうする?」
「どうするって、何が?」

 またもやジャイさんの顔に笑みが浮かぶ。身を少し前に乗り出して、「する?」と聞いてきた。
 ……残念ながら、立場は私の方が優勢になる隙なんてほとんどない、ド劣勢らしい。

「するって、何」

 一応、聞いてみる。
 わかってます。わかってますけど、主語が無ければ、日本語ってよくワカラナイ。

「セックス」

 ぱかーと男子用の便器みたいに口が開いてしまった。口元に両手を当てれば、ムンクの叫びの出来上がりだ。
 はっきり答えられた。濁してくれなかった。やっぱり、ジャイさんはドエロだ!

「俺はいいよ。凛香ちゃんさえよければ」
「ぱ、ぱ、ぱぴぱなぱぴ」
「凛香ちゃん、宇宙と通信し始めないで」

 こ、こ、こ、この人、率直過ぎじゃない?
 宇宙と交信もしたくなるわ!

「俺は凛香ちゃんの気持ちを一番大切にしたいから。俺とヤッて、何かが変わるならその方がいいし。俺に断る理由は無いからね」

 一部を除き、すごく嬉しいことを言ってくれたけど。一部が、非常におかしいんですけども。

「今週のデートまでに考えておきなよ。一時に海浜公園駅ね」
「デート!?」
「約束したじゃん」
「してないしてない」

 いや、したけどさ。してないことにしたい。

「じゃあ、今約束ってことで。ほら、時間無いから、システムの説明をしますね」

 しゃべりながら、あっという間に仕事モードにオンしてしまったジャイさんは、さっきまでのニヤニヤ顔もどこへやら。広げたノートパソコンを真面目な顔でいじりだす。
 真っ赤になる顔を押さえつけながら、スーハーと息を整えた。顔の火照りは取れそうにない。ドキドキと高鳴る心臓を心の中で押さえつけて、パソコンの画面に集中したふりをする。

 なんで、こうも強引なんだ。
 そんでもって、なんで私は断れないんだ。

「こういうの、やめて下さい」って真面目な顔で言えば、たぶんジャイさんは聞き入れてくれるだろう。面白がってこんな風にお誘いをかけてくるのは、私が本気で嫌がってるように見えないからだ。

 ――本気で嫌だと思ってる?

 ううん。思ってない。
 本音は、違う。

 そんなの、もうずっと前から、わかってる。



 ***

『来週の金曜、あけといてね』

 仕事帰りの電車の中でボケーと中吊り広告を読んでいた時だった。
 ケータイがブルブル震えたのに気付いた。
 舞子からのメールは表題も絵文字もないそっけないものだった。

『いいけど、なんで?』

 すぐに返信メールを送ると、舞子からもすぐ返事が来た。

『合コンやるよー』
「はあ!?」

 つい声をあげてしまい、恥ずかしくなってうつむく。もう一度ケータイを見るが、やはり『合コンやるよー』の文字と、笑顔の絵文字が踊っている。
 この間、電話した時に「合コンやる?」なんて言っていたけど、まさか本気だったとは。

『十九時に新宿に決まったから。オシャレしてきてね。イケメン来るから(はーと)』

 ……マジデスカ。

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あとがき↓
拍手やコメント、ほんとにほんとにありがとうございます。
がーっと書ける時は書けるのですが、書けない時はほんとに書けないので、コメントいただけるとやる気がメラッと燃えちゃいます。
ありがたい限りです。

お返事はこちらです。


おいしいワインを飲みました。
お酒あんまり飲めないので、ワインも苦手だったんですが、飲めた!
口当たりもまろやかでお酒の臭さが無いというか。おいしいのは違いますねー。

まあ、速攻で頭痛に苛まれましたけど。
二日酔いならぬ一日酔いです。
酒、こわい!!


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拍手やコメント、ほんとにほんとにありがとうございます。
がーっと書ける時は書けるのですが、書けない時はほんとに書けないので、コメントいただけるとやる気がメラッと燃えちゃいます。
ありがたい限りです。

お返事はこちらです。


おいしいワインを飲みました。
お酒あんまり飲めないので、ワインも苦手だったんですが、飲めた!
口当たりもまろやかでお酒の臭さが無いというか。おいしいのは違いますねー。

まあ、速攻で頭痛に苛まれましたけど。
二日酔いならぬ一日酔いです。
酒、こわい!!

【2009/10/18 04:41】 | Deep Forest(恋愛)
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