きよこの書き散らかし小説。
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Deep Forest

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第22話 新婚さんいらっしゃい

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 土曜日。ジャイさんとの待ち合わせで、新宿駅に訪れた。改札のそばでぼんやり立ち、行きかう人たちを眺める。
 学生っぽいカップル、OL風の友達連れ。土曜だっていうのに仕事なのか、スーツを着た男が足早に立ち去っていく。
 人ごみの中に、ジャイさんの姿を見つけた。
 Tシャツにカーキ色のジャケットをはおり、ジーパンを履いている。いたって普通の格好だけど、スーツ姿に見慣れているせいか若く見える。そういえば、ジャイさんって何歳なんだろう。見た目からいって同年代だと思うけど、実はすごい年下だったりして……。

「凛香ちゃん」

 私の姿を見つけたジャイさんは腕時計をちらりと確認して走り寄って来た。私は「どうも」と片手を上げて、無愛想な表情を作る。

「絶対遅れてくると思ってたのに」
「なんですかそれ」
「嫌そうだったから」

 嫌そうだってわかってるなら、無理やり誘わなきゃいいのに。

「来てくれて嬉しいよ。ちゃんとオシャレしてくれてるところみると、本当は楽しみにしてくれてたりして」

 薄い唇にニタつき笑いを浮かべて、私の服装を上から下までジロジロ見てくる。衿元にリボンのスパンコールがついた白いカットソーを着て紺色のスカートを選んで履いたが、オシャレしたつもりはない。普段の服を着てきただけなのに、そういう目で見られるのは癪だ。

「普段着です。いつも通りです。特別な服ではございません」

 フンッと鼻を鳴らしてやったが、ジャイさんは「それでもかわいい」と笑った。
 思わぬ言葉に頬がかっと熱くなる。こいつ、絶対わざと言ってる。

「帰ります」
「ちょーっ! 怒んないでよ!」

 踵を返した私の腕をつかんで、そのまま手を繋いできやがった。

「さ、行きますか」
「手」
「手?」
「手、離してよ」

 仏頂面で訴えたつもりなのに、ジャイさんはやっぱり意に介さず。「さ、行きますか」と繰り返し言って、私の手を引っ張る。
 カップルでもないのに、なんで指と指からませて歩かなきゃなんないの。
 嫌だと思う反面、照れくさくて……まあいいやと思ってしまう。

「どこ行くの?」
「ベタに映画でも。観たいのある?」
「ほんとにベタなデート」

 笑ってしまう。気取ってるところがある気がしてたから、デートとか言ったらもっと仰々しいところに連れて行かれると思ってた。

「ベタなことしたいんだよ。凛香ちゃんとはさ」
「何で?」
「付き合いたいから」

 またまたご冗談を。

「なんか言うことないの? わあ、嬉しい! 私も付き合いたいのぉ! あなたと出会えて良かった! 愛してるわあ! とか」
「ばーか」

 相変わらず冷たいっ とかわめくから、ついつい笑いがこぼれてしまう。ナンパでバカな男だけど、寂しくてたまらなかった私を癒してくれたのは、紛れもなく彼だ。
 あの日、そばにいてくれた。泣いてる私をなぐさめてくれた。たとえ彼に下心があったのだとしても、今私が笑っていられるのは彼のおかげなのだ。
 そこは素直に感謝しなきゃいけない。

 つないだ手の温かさとか、横に誰かがいる安心感とか、どうでもいいことで笑顔になることとか、ジャイさんがそばにいるって、なんだかとても救われる。
 心がホコホコあったまってくる。



 ***


 ベタに映画を観た後は、ベタにお茶をした。年齢のことを聞いたら、二十七歳だっていうから、私の一個上だというのが判明した。
 たまの休日は、公園で寝そべって本読んでるとか、意味もなくふらふら散歩したりするとか、私の思っていたジャイさん像との違いに、びっくりして大笑いした。
 クラブで遊び倒したり都内で飲み明かしたりしてるタイプの人間だと思ってた。ジャイさんは意外に素朴な人なのかもしれない。
 お茶の後は、家具屋をのぞいた。ソファーを探しているらしく、ファッションビルの中にある家具屋に付き合わされたのだ。

「これいいじゃん」

 スピーカー内蔵のソファーに腰かける。隣に座ったジャイさんも「お、すげ」と興奮気味に笑った。
 背もたれにスピーカーが入っていて、目の前に置かれたテレビの映像に合わせズンズンと低音が体に響く。映画好きにはたまらない仕様だ。

「あれは? オットマン付きってかっこいいよね。セレブみたいで」
「それだけでセレブって、ずいぶん安いセレブだな」
「セレブ気分は安く味わえればそれで充分なの!」

 足置き付きのソファーに駆け寄りまた座る。座るとお尻がソファーに沈み込む。柔らかくて気持ちいい。眠くなりそう。

「新婚さんなんですか?」

 ジャイさんと二人でまったりソファーに座っていたら、スーツ姿の店員さんがにこやかに話しかけてきた。

「え! ち、違います! 全然! 赤の他人です!」
「え。あ、そうなんですか? 失礼しました。新婚さんに見えたのでつい……ソファーお探しなんですか?」

 新婚さんて。
 ジャイさんをチラ見したら、必死に笑いを噛み殺してる。

「赤のた、他人が、ふ、二人でソファーに座るかよ」

 笑いながらしゃべるから、声が震えちゃってますけど。
 ようやく笑いが止まったのか、一回咳払いして、店員さんに向き直った。

「カタログもらえます? 検討したいんで」

 店員さんがジャイさんに商品の説明をしてるのを聞きながら、私はソファーに深く腰かけ直してぼーっとしていた。
 新婚さんに見えるって、どうなのよ?
 まあ、結婚適齢期の年齢だし、間違われても仕方ないけど。
 ジャイさんと私。カップルに見えるの?
 男と女が二人でいたら、たいがいはカップルに思われるだろうけどさ。

 ジャイさんとの関係を他人をそう思われるのは嫌。……のはず。なのに、口がにんまりしてしまうのはなぜなんだろう。

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どうでもいいあとがき↓
うちのわんこがげほげほ咳をしていて、ちょっと心配。
連休で病院もお休みだったし、
ゴハンもガツガツ食べてて咳する以外は元気なようで、様子を見てましたが。
咳、止まらない(・・;

明日から病院が始まるみたいなので、連れて行くことになりそうです。
病気じゃないといいんですが・・・(涙)


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うちのわんこがげほげほ咳をしていて、ちょっと心配。
連休で病院もお休みだったし、
ゴハンもガツガツ食べてて咳する以外は元気なようで、様子を見てましたが。
咳、止まらない(・・;

明日から病院が始まるみたいなので、連れて行くことになりそうです。
病気じゃないといいんですが・・・(涙)

【2009/09/25 02:43】 | Deep Forest(恋愛)
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甘露煮
まだ途中までしか読んでませんが
ジャイさんとのやりとりと
主人公のツッコミに
いちいち笑えます。

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この記事へのコメント
まだ途中までしか読んでませんが
ジャイさんとのやりとりと
主人公のツッコミに
いちいち笑えます。
2014/05/05(Mon) 22:12 | URL  | 甘露煮 #-[ 編集]
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