きよこの書き散らかし小説。
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神様がくれた
じいに捧ぐ物語。

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第23話 浅はかだけど。

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 照りつける太陽は海をきらめかせる。

 容赦なく降り注ぐ熱線の中、汗まみれで眠る海水浴客の姿を眺めながら、実由はホルターネックの水着の紐をしっかりと結わえなおした。

 今日は休みをもらえた。だからといって特にやることも無いので、海に来ていた。
 海の家のそばにいれば、厚志や和斗や里美が相手をしてくれるから寂しくない。

 デッキチェアを広げて寝転がる。
 日焼け止めクリームをもう一度首筋につけながら、空を仰ぐ。
 青すぎる空と真っ白な雲。太陽光線は目にきつくて、視界がぼんやりと膜がかかったようにぼやける。

「フランクフルト、食べる? お嬢様」
「アメリカンドックじゃなきゃいやよ」
「あら、お嬢様。わがままねえ」

 里美のおふざけに付き合って、実由はわざと高飛車な物言いをする。
 里美は大げさに笑いながら、本当にアメリカンドックを持って来てくれた。

「くれるの!?」

 まさかもらえるとは思っていなかった実由は、ばっと飛び上がって起きる。デッキチェアがぐらりと揺れた。

「いつも頑張って働いてるから」
「うわあ。ありがとう!」

 発砲スチロールの皿にのったアメリカンドックにケチャップをかけ、かぶりつく。
 さくりとした皮の中はふんわりしていて、脂が口の中で広がる。
 奥にいるソーセージはまだ姿を見せない。

「ゆっくり休みなさいね」
「はーい」

 返事をしながら、海の家にいる厚志を見ると、目が合ってしまった。厚志はすぐに目をそらし、焼きそばを混ぜ合わせる。
 昨日の夕飯の時も、厚志は目を合わせてくれなかった。
 告白は早まったな、と思いつつも、きっとあのタイミングでしか言えなかったとも思う。

 オレンジ色の水着を指で直して、立ち上がる。
 昼前のこの時間なら、まだ話せる余裕がある。
 鉄板の前で汗をふきながら、器にやきそばを盛り付けている厚志に近付いて、笑いかける。

「あっくん」
「ん?」
「休憩時間、遊んで」
「みゅーちゃん」
「遊んで。お願い」


 ***

 浮輪に両腕をひっかけて、実由は波が立たない場所でぷかぷかと浮いていた。
 心地良い波のリズムに乗りながら、顔だけ太陽に照らされる。
 水の中に入った体は程よい水温の中で揺れている。
 ふと、誰かに見られている気がして波打ち際を見ると、厚志が軽く手を振ってくれているのを見つけた。

 昼過ぎの時間。海の家のピークタイムはひとまず終了して、休憩を回し始めたのだろう。
 実由は体を回転させて、水の中の足をばたつかせる。
 潮の流れが強くて、思うようには進まないけれど、何とか浜辺に辿りついた。浮輪を片手に抱えて厚志のいる場所まで歩く。

「上着、着てくる」

 海から出た途端、水に慣れた体は外気に晒され、全身が鳥肌に覆われる。
 震えながらパーカーをはおって、タオルでぬれた髪をぬぐい、厚志に向き直った。

「テトラポットのところに行きたい」
「ああ、うん」

 砂浜に寝転がる人たちの合間を縫うように進んで、防波堤がある方へ向かう。
 厚志と実由が花火大会の日に行った場所だ。
 花火大会の時と同じように、人目につかないその場所は、人っ子一人いない。
 波がテトラポットに当たって跳ね返り、白いあぶくが弾け飛ぶ。

 ビーチサンダルが脱げ落ちないように注意しながら、テトラポットによじ登って座ると、厚志も横に座ってくれた。

「みゅーちゃん、俺さ」
「うん」
「みゅーちゃんの気持ちは嬉しいんだ。でも、俺には理香がいて、理香が好きだ。だから、わかってほしい」
「うん」

 当然の結果なのはわかっていた。
 だから、さほどショックではない。
 けれど、体から空気がすべてぬけて、しぼんでいくような気がして、へにゃへにゃと崩れてしまいそうだった。

「でも、今までどおり、家族の一員みたいに仲良くしていきたいから」
「うん」
「俺はいつもどおりにする」
「うん」

 波の音が体を揺さぶる。震えだす体が、さざなみに呼応する。
 太陽の光に目を細めて、熱に浮かされる。
 じりじりと肌が焼けつく音がする。

「キス、してほしい」
「え?」
「私、あっくんへの気持ち、忘れたいから。最後にキスしてほしい」

 テトラポットに手をついて、うつむいた。太陽で熱せられた石から手の平に熱が伝わって、体中を覆いつくす。

 厚志がどんな行動に出るかなんて、わからない。
 これはいわば、賭けだった。
 大胆なことだって、言おうと思えば言えてしまう。必要な根性は無いくせに、とんでもないことをしでかす浅はかさは持ち合わせている。
 そんな自分を馬鹿だと思いつつも、そうすることしか、実由は知らなかった。

「あっくん」

 呼びかけたけれど、厚志を直視することは出来ない。

 厚志の手が、実由の二の腕にそっと触れた。

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あとがき↓
またもや寝てしまって、更新できませんでした・・・
ストーブの前で寝ちゃって、足にかけてたブランケットが溶けて穴開いた(@@;
危険すぎる・・・



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またもや寝てしまって、更新できませんでした・・・
ストーブの前で寝ちゃって、足にかけてたブランケットが溶けて穴開いた(@@;
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【2009/02/22 01:15】 | 神様がくれた(恋愛)
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