きよこの書き散らかし小説。
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神様がくれた
じいに捧ぐ物語。

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第21話 想いは溶けて。

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 幸せになるために人は生きていると、どこかで聞いたことがあった。
 けれど、幸せになるということが、どういうことなのか、実由にはわからない。

 自分が幸せになるために、誰かを不幸にすることもある。
 そうして掴んだ幸せを、はたして幸せと呼べるのだろうか。
 誰かの不幸の上に成り立つ幸福を、幸せと呼んでいいのだろうか。

 ジーと、ジーの奥さん。二人の写真を思い出しながら、実由は海の家の外で空を眺めていた。
 昼の太陽の光に隠れて、白い月がぼんやりと浮いている。
 水平線の向こうに、白い雲がミシュランのマークみたいな形になって、もくもくと膨れ上がる。
 夕立を予感させる、大きな入道雲だ。

 ジーとジーの奥さんみたいになりたい。
 誰かの隣で、幸せそうに微笑んでいたい。

 願望を反芻しては、カキ氷を作る厚志の背中を横目で見る。白いTシャツにうっすらと汗がにじんでいた。

 できれば、厚志と。
 厚志の隣に立ちたい。
 こらえきれない気持ちを胸の中に押し戻す。

 厚志には理香がいる。実由が幸せになるということは、理香を不幸にするということだ。

「でも……」

――私の、だから。

 理香の言葉を思い出すたび、イガイガしたものが喉をつつく。
 宣戦布告されたのだ。実由を敵視しているからこその言葉だ。
 実由を『敵』と認識して、理香はわざとああ言ったのだ。
 そう思うと、なんだかむかついてきて、実由は何度も唇を噛む。

 理香と親しい友達なわけじゃない。理香に対して負い目を感じる必要なんて、どこにもない。だったら、なにを遠慮する必要があるんだろう。
 実由の心の悪魔は、甘い甘い誘惑の言葉を吐き続ける。

「おい」

 呼びかけられて、我に返る。
 和斗がいつもの不機嫌顔で、「ぼっとしてないで手伝え」とあごをしゃくった。

「ねえ、和くん」
「なんだよ」
「和くんは、カノジョいないの」
「あ?」
「いないの?」

 眉をひそめ、和斗はうんざりとした顔でぼそりとつぶやいた。

「いねえよ」
「なんで?」
「なんでって、なんだよ」
「なんだよって、なんだよ」

 意味不明の問答を繰り返しながら、海の家に戻る。
 影に入れば、日差しが和らいで、すっと体が冷える。
 昼を過ぎた時間。海の家にいる客は大体昼寝をしているか涼んでいるかのどっちかで、閑散としている。
 里美は休憩ついでに食堂に戻ってしまって、仕事をしているのは厚志と和斗だけだったようだ。

「ねえ、なんで」
「しつけえなあ! 半年前に別れたから、いねえの!」

 半切れで答えて、和斗はずかずかと店の奥に入っていってしまった。
 二人の声に驚いた厚志がカキ氷の機械から手を離し、目を丸くして和斗の背中を眺める。

「なに、どうしたの?」
「カノジョいないか聞いたら、怒っちゃった」
「ああ、あいつ、照れ屋だからね。恋愛の話なんかしたがらないし」

 けずられた氷の山に、イチゴシロップをかけると、氷の粒があっという間に溶けて山が小さくなる。さらに氷をけずって山を戻し、三角形に整えて、シロップをまたかけた。

「食べる?」
「お客様のじゃないの?」
「さぼり。アンド、ただ食い」

 厚志はニッと歯を見せて笑い、台所の陰に座り込み、こっそりカキ氷を口に含む。

「みゅーちゃんも、今のうち」

 誘われて、実由もスプーンを手に取り、厚志の隣に座る。
 膝小僧を抱えた体勢のまま、カキ氷をすくい取る。口に含んだ途端、冷たい感触が口中に広がって、鳥肌がたった。

「和くん、女の子にモテそうなのに」
「和は無愛想だからなあ」
「あっくんは優しいから、モテるでしょ」
「そんなにモテねえよ」

 同じものを食べながら、ひそひそと交わす会話が心地いい。秘密の関係になれたみたいで、心が躍る。

「モテるよ、絶対。気付いてないだけだよ」
「そうかあ?」

 甘いシロップを含んだ氷を食べるたび、キンキンと頭で響く。それは実由の心にまで響いて、音を立てる。
 麻痺していく。口の中がしびれて、刺激が言葉を誘う。

「だって」

 言葉を切って、スプーンをぺろりと舐める。

「私、あっくんの優しいところ、好きだもん」
「お、どうも」

 実由の率直な言葉に、厚志は照れくさそうに笑った。

「理香さんが心配してたよ。『厚志は優しすぎるから、女の子を勘違いさせる』って」
「ほんとに? 理香のやつ、何言ってんだか……」
「勘違いしてもいい?」

 そっと厚志の顔を伺う。
 ぽかりと口を開け、実由を見下ろす厚志の顔には、困惑の色がありありと見て取れた。

「私、あっくんが好き」

 押さえ切れなかった。
 言わなければいけないと、実由の中で誰かが大声で叫んでいた。
 チャンスを逃したくなかった。

「好きなの」

 カキ氷が溶けて、床に滴が落ちる。それはまるで涙のようだった。

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あとがき↓
昨日、更新するつもりが寝てしまいました・・・
失礼しました。

いつも拍手ありがとうございます。

折り返し地点通過した……はずです(笑)
アルファポリスの大賞期間中には終わらないことが確定しています(^^;
28日には無理でも、出来れば3月1日に完結させたかったんですが……
でも、3月初旬には完結しますので、あと少しお付き合いしてくださると嬉しいです。

ついでに感想を聞かせていただけると、さらに嬉しいです!


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昨日、更新するつもりが寝てしまいました・・・
失礼しました。

いつも拍手ありがとうございます。

折り返し地点通過した……はずです(笑)
アルファポリスの大賞期間中には終わらないことが確定しています(^^;
28日には無理でも、出来れば3月1日に完結させたかったんですが……
でも、3月初旬には完結しますので、あと少しお付き合いしてくださると嬉しいです。

ついでに感想を聞かせていただけると、さらに嬉しいです!

【2009/02/19 01:19】 | 神様がくれた(恋愛)
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