きよこの書き散らかし小説。
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第57話 私たちの幸せ

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 その日は快晴だった。
 まぶしすぎるくらいの青に、真っ白な雲が悠々と泳ぐ。白い太陽光線を仰ぎ見て、チャペルに足を踏み入れた。
 近代的なデザインの建物で、前方は一面窓になっている。差し込む光を背にして、鉄の棒を組み合わせただけのシンプルな十字架が聳え立つ。真っ白なヴァージンロードに十字の陰が映っていた。
 並ぶ椅子の一番後ろに、私を含む舞子の高校時代の友人六人が座った。

「舞子、美人だしスタイルいいから、きっと綺麗だろうなあ」

 ほれぼれした声で友人が笑う。私もブルーのドレスを整えながら「楽しみだね」と相槌を打った。
 通路側の一番端に座れたのはラッキーだ。舞子の姿を存分に拝める。

 やがて、賛美歌のメロディーと共に神父が入ってきた。後ろから、舞子の旦那さんになる和登君。相当緊張してるのか、顔がものすごい強張ってる。
 開け放たれたドアの奥に、舞子がいるのが私の位置からだけ見えた。
 思わず、目配せを送ると、舞子はそれに気付いて、にぃっと笑いかけてくる。
 隣に立つお父さんは、緊張で棒立ち。微笑ましくてフッと吹き出してしまった。
 歩き出す二人。荘厳な音楽と、揺れるレースのベール。幾重にも重なった光沢のある白い生地がふわふわと踊る。はにかんだように笑い、百合の花を束ねたブーケをきゅっと握りしめる舞子の姿は、今まで見たことがないくらい幸せそうだった。

「舞子、綺麗……」

 つぶやかれた友人の言葉に、なぜか涙が込み上げる。
 二十七歳。その歳の分だけ、重ねた経験がある。傷ついたり、傷つけたり。子供のようにすがりつきわがままを貫こうとして、相手から逃げられたり。またその逆で、気持ちの重さがつらくて、相手から逃げたことだってある。
 そうやって、様々な関係の積み重ねで、舞子はようやく和登君と出会った。
 後悔した恋もある。未だ引きずる思いもある。だからこそ、和登君と会えたのだ。
 いつだったか、舞子は言っていた。

「こうやって生きてきたから、和登が好きになったんだと思う」と。

 私たちは、私たちなりに精一杯生きて、失敗をくり返し、その度に後悔して泣いたり喚いたり。くだを巻いて酒を飲んで、「いつになったらいい恋愛が出来るんだろう」とぼやく。
 そんな日々を重ねながら、大人になっていくのだ。
 自分のことしか考えられず、エゴをぶつけるだけの恋愛から、自分だけではなく、相手の幸せを願うように変わっていく。
 そうした変化が、きっと私たちに幸せを与えてくれる。

 舞子の手が、父親の手からはなれ、和登君の手に渡る。寂しそうなお父さんの姿に胸がつまる。

「愛は育むものです。愛は願うものです。愛は与えるものです。愛を欲してはいけません。あなたの愛はその手の平から、この手の平にそっと渡すものなのです」

 神父の手が、舞子と和登君に触れる。

「あなたたちの愛が、永遠のものとなり、魂となっても受け継がれていきますよう……」

 神様。こんな場所に立っていると、そんな存在もあるんじゃないかと思えてくる。
 私の手の平にある愛も、押し付けるのではなく、そっと渡すことが出来ていたなら。

「あなたは、和登さんを生涯の夫と定め、健やかなる時も病める時も彼を愛し、彼を助け、生涯変わらず彼を愛し続けることを誓いますか?」

 舞子の清廉な声がチャペルに響く。

「はい。誓います」

 涙が零れ落ちる。
 親友の晴れ舞台。見届けたことへの思いが溢れる。
 幸せになろうね、舞子。幸せになろう。そんで、旦那さんを幸せにするんだ。生涯をかけて。


 ***

 披露宴は舞子と和登君の大学時代の友人がものすごい盛り上がりを見せ、笑いの絶えないものとなった。
 お色直しで登場した舞子のラベンダー色のドレスに(ドレスだけじゃなくて、舞子も!)、感嘆のため息をもらしながら、滞りなく進んでいく宴を見守る。
 実はスピーチを頼まれている。とはいっても、司会者から質問をされて答えるだけの簡単なものだ。それでもたくさんの人の前でマイクを握ることに緊張を隠せない。
 披露宴が開始してからしばらくずっと、フランス料理に舌鼓をうってるはずが、味がよくわからなくなってる。

「それでは、新婦のご友人である佐村凛香さんに、新婦の高校時代について少しお話を伺います!」

 やっと名前を呼ばれ、おずおずと立ち上がった。ここで質問を受けると聞いていたのだか、「どうぞ前へ」と促される。
 そんなん聞いてないし! と舞子を睨んだら、舞子は意地悪げに笑うだけだった。
 なんてやつ!

 新郎新婦の席の横に立ち、舞子の高校時代のことや、社会人になってからの話を聞かれ、「舞子は勝気でいつも喧嘩してます」とか「相談にいつも乗ってくれてとてもいい子です」とか無難に答える。
 最後に「和登さん、どうか舞子を幸せにしてあげてください」と締め、つつがなくこなせたことにほっとしながら立ち去ろうとしたら、司会者さんが「待った」をかけてきた。

「新婦・舞子さんからプレゼントがあるそうなので、お待ち下さい」

 舞子はすっと立ち上がり、「私が先に結婚することになったら、ずっとこうしようと思ってたの」と私の前で小さく会釈する。

「次は凛香の番だと思ってます。高校からずっと、私と一緒にいてくれてありがとう。凛香のおかげで、今の私がいます。だから、次は、凛香が幸せになってください」

 マイク越しの声が震える。
 舞子の手には、ピンクのバラの花のブーケ。そっと差し出されたそれを、私は両手で受け取っていた。

「こんなの、ずるいよー」

 私の声も震えてしまう。ブーケトスをやらなかったから不思議に思ってたけど、こういうことだったのか。

「私こそ、いつもありがとう。これからもまた飲み屋でぐだぐだしようね」

 マイクに通すのは恥ずかしいから、ぼそぼそとつぶやくと、舞子は目に涙を一杯ためながらうなずいてくれた。

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あとがき↓
更新が遅くてすいません。
生活に変化があって、パソコンと向かう時間が激減(^^;

あと1話か2話で完結です!


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【2010/07/08 01:19】 | Deep Forest(恋愛)
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