きよこの書き散らかし小説。
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Deep Forest

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第47話 凛香、迷走中

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 六本木の駅からミッドタウンへと歩き、その脇にある公園を進みながら、ぽつぽつとお互いのことを話す。
 ウコン君は半年ほど前に彼女と別れて、少しひきずっていたと苦笑いを浮かべた。私も最近ふられて引きずってるよと笑ったら、「おつかれさま」と労われてしまった。
 夏の夜風は心地良く、公園を流れる小さな人口の川のせせらぎが、いっそう涼しさを感じさせる。
 隣を歩くウコン君を見上げる。
 ジャイさんより身長は少し高そうだから、百八十センチいくかいかないかくらいかな。くりっとした目元が犬みたいで、鼻筋はすっと通っている。ぽってりとした唇は女の子の唇のよう。
 この人の子供が女の子だったら、すっごい美少女になりそう。いわゆる女顔なんだろうけど、骨格がしっかりしてるから、なよなよしている風には見えない。

「俺が凛香ちゃんに会ってみたいって思ったのはさ」
「うん」
「大学三年の時だったかな……。ちょうど就活始めた時期でね。思ってた以上に大変だったから、その時に付き合ってた彼女のこと、ないがしろにしちゃったんだ」

 目線の先に広がるミッドタウンのビルの光を、私も見つめる。白い光は濃紺の空に淡く溶け込む。

「そのせいでふられてね。サークルの仲間が飲み会開いてなぐさめてくれたんだ。その時に、舞子が俺に話し出したんだよ」

 ふと右目の端に映ったのは赤い光に覆われた東京タワー。「きれい」とつぶやくと、ウコン君はぴたりと足を止め、両手をポケットに突っ込んだまま、東京タワーを仰ぐ。

「私の友達の凛香、覚えてる? あの子もこの間ふられたんだよ。同じ理由で。そしたらあの子、何て言ったと思う? って」

 目線だけを私に移して、にっと笑われた。

「何て言ったか、覚えてる?」

 覚えてないって。
 ――大学三年の終わり。確かに当時付き合っていた彼と別れた。理由はそう、就活にかまけて彼氏のことをほったらかしたのだ。それで、「俺のことなんかどうだっていいのか」とか「お前に会えないの辛い」とかグダグダ泣きつかれて……あの彼とは別れるの大変だったなあ。

「三年待ってろ!」「三年待ちやがれ!」

 はっと思い出してつい大声で叫んだら、ウコン君も同じタイミングで同じセリフを言ってきた。
 そうだそう。ぶち切れて「三年待ってやがれ」って言ったんだ。売り言葉に買い言葉的に発した言葉だったけど、今考えても意味がわからない。

「あと三年も就活やる気なのかね凛香はって、舞子のやつ、爆笑してたよ」
「舞子のおしゃべりっ」
「俺、それ聞いた瞬間、凛香ちゃんに会ってみたくてしかたなくてさ。それまでも凛香ちゃんの話は色々聞いてたけど、やっぱり面白い子だなあ、会ったら絶対楽しいんだろうなあって、期待してたんだ。でも、就活中だったから、諦めた。ずっと忘れてたのに……また別れたタイミングで、凛香ちゃんの話を舞子から聞いた」

 舞子、どんだけウコン君に私の話をしてんだよ。「舞子のバカ」「おしゃべり」ぶつくさ文句を言っている私を、ウコン君はニコニコと見つめてくる。
 優しい視線に心臓が高鳴る。頬が赤くなっていくのがわかって、「やっぱり夏は夜でも暑いなー」なんて言ってごまかしてみた。

「凛香ちゃんの名前を聞いたら、大学の時の『会いたい』って気持ちを思い出した。でもその時は凛香ちゃんはまだ彼氏がいたから、会うわけにはいかないかって思ってたんだ。そしたら、凛香ちゃん、彼氏と別れたって話が出てさ。会うしかねえよって盛り上がったんだよ」

 薄墨色の雲が、月を隠す。都会の光に負けた月明かりは、姿を隠しても何も影響を及ぼさない。夜でも明るい空の下で、私は、私を愛おしそうに見据える黒い瞳に捕らわれていた。
 いつか見た、真摯な視線は、ぐわりと胸の奥で渦を巻いて、溢れ出す。

 ――やっくんを思い出していた。

 居酒屋の暗がりの中で、私に「結婚しよう」と言ってくれた。あの時の瞳。私を放さないと、繋ぎ止めようとする視線。
 愛情を示す瞳を前に、身がすくんだ。押しつぶされそうだった。

「こんな風にタイミングが合うのも、きっと何かの縁だと思うのは、都合が良すぎるかな」

 恋愛はタイミングだ。誰だっけ。誰かが言ってた。恋愛はタイミングとフィーリングとハプニングだと。
 こうやって何かしらのタイミングがかみ合って、「この子いいな」となんとなく感じて、互いを意識させるような事柄が起こってしまえば、簡単に恋愛はスタートするんだろう。
 簡単で、難しい。恋はいつも、私の心を置き去りにする。

「押しすぎてるかな?」

 何も言わない私に不安を抱いたのか、ウコン君は短い黒髪を手でいじりながら、肩をすくめた。そんなこと無い、と首を振る。

「そろそろ帰ろうか」
「うん」
「また連絡するね」

 うん、とうなずくわけにはいかない。私にはジャイさんがいる。あっちにふらふらこっちにふらふらするなんて情けないし、二兎を追うつもりもない。

 近くの地下鉄へ向かう階段を降り、ウコン君と別れる。手を振って背中を見送った途端、どっと疲れが湧き出て、思わず大きなため息をついてしまった。

「やばいかも」

 NOと言ってしまえばいいのに、なぜ何も言えないんだ。はっきりしないのは一番まずい。相手にとっても自分にとっても、いいことなんてひとつもない。
 なのに、どうして「彼氏がいるから困る」と言えないんだ。彼氏がいてもいいから考えてほしいと言われたから? ジャイさんへの気持ちがわからない以上、彼を振ってしまうのはもったいないから? モテ期を楽しみたいから?

 どんな理由でも、自分勝手で思いやりが無い。

「もうやだ」

 弱音をこぼしだしたら、止まらなくなる。生え出した根っこが心の隅々まで広がって、どこにもゆとりが無くて、がんじがらめにされたみたいで、息苦しさだけが残る。

 私、どこに向かえばいいんだ。どうすればいいんだ。

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あとがき↓
エイプリルフールじゃないですか!
なんか嘘つかないといけないですね(^^)
おもしろい嘘を職場でしかけないと・・・ニヤニヤ

もう少しで10万HITです。
せっかくだから投票的なことでもやろう!とFC2の投票のツールをゲットしたけど、考えてみれば何を投票するんだろう・・・

この作品の登場人物で人気投票!と思ったけど、登場人物少なすぎて結果が見えてるし笑

1位 凛香
2位 ジャイ
3位 ウコン

↑こうなると見た。

その前に、人気投票うんぬんが出来るほどの票が集まるとも思えないし(^^;

投票で何をやるかを投票してもらおうかと考えた今夜・・・

そういえば、1万HITで書くって言った「空に落ちる」番外編も手付かずだった\(^^)/


拍手やコメントありがとうございます。
とんでもなく励みになります。涙出ます。
お返事はResにてかえしてます。


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エイプリルフールじゃないですか!
なんか嘘つかないといけないですね(^^)
おもしろい嘘を職場でしかけないと・・・ニヤニヤ

もう少しで10万HITです。
せっかくだから投票的なことでもやろう!とFC2の投票のツールをゲットしたけど、考えてみれば何を投票するんだろう・・・

この作品の登場人物で人気投票!と思ったけど、登場人物少なすぎて結果が見えてるし笑

1位 凛香
2位 ジャイ
3位 ウコン

↑こうなると見た。

その前に、人気投票うんぬんが出来るほどの票が集まるとも思えないし(^^;

投票で何をやるかを投票してもらおうかと考えた今夜・・・

そういえば、1万HITで書くって言った「空に落ちる」番外編も手付かずだった\(^^)/


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【2010/04/01 02:20】 | Deep Forest(恋愛)
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