きよこの書き散らかし小説。
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Deep Forest

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第43話 グッドタイミング? バッドタイミング?

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「また朝帰り!」

 家に着いた途端、母親に怒鳴りつけられた。こっそり部屋に入って何食わぬ顔してようと思ったのに。お母様は仁王立ちで待っておられました。
 まさか玄関でずっと私の帰りを待っていたわけないだろうけど、なんでちょうどよく玄関にいるかね、この母は。

「朝じゃないから、朝帰りじゃないもん」

 小学生並のいいわけを口にしたら、母の目がいっそうつりあがった。口は災いの元……。

「彼氏と別れたと思ったら、もう新しい人出来たの?」

 なんで別れたこと話してないのに知ってんだ。

「まあ、うん」

 あいまいに返事すると、でっかいため息をつかれた。

「今度はうちに連れて来なさいよ。あんたも豊介も恋人が出来てもこそこそするんだから。紹介くらいしてくれたっていいじゃない」

 いや、紹介なんてしようもんなら、舞い上がって結婚結婚になるでしょうが。適齢期の娘なんですから、そのくらいわかってるっつうの。

「あんまり夜遊びばかりするんじゃないわよ」

 ぶつぶつと文句言いながら、母は掃除機を抱えて居間に行ってしまった。
 安堵のため息を漏らしながら、二階にある自室に引っ込む。
 ベッドに体ごと倒れこんで、枕を抱き寄せる。
 ジャイさんと付き合うことになってしまった。しかもやることやってしまった。もっと焦らすべきだった。流されやすい性格だったのか、私は。
 思い出すだけで体中が火照ってくる。初めてジャイさんと会った日の夜よりも優しい手つきと甘い言葉。すっかり酔わされて、溺れかけた動物が空気を求めるかのようにジャイさんと繋がることを望んだ。
 薄闇の中で、私を見つめる切れ長の瞳が愛おしく思えて、ごつごつと骨ばった体をぎゅっと抱きしめた。
 こぼれそうになる言葉の数々を必死に飲み込んだ。
 私からそれを言ってしまうことが憚られた。
 幼稚な恋の駆け引きを、私はまだ続けようとしてる。

 抱きしめた枕が変形しまくってることに気付いて、両手を広げる。ちょうどその時、放り投げたケータイが着メロを響かせた。

『六時に六本木駅の二番出口に待ち合わせでいいかな?』

 あて先:うこん君。

 ウコン君って誰? 頭にハテナマークが飛び交いまくったところで、口がドカンと落ちるように開いた。
 すっかりすっかり忘れてた!
 舞子の大学時代の友達だ。食事に行く約束をしてたじゃないか!

 どうしよう。断ろうか。断った方がいいだろう。
 そう思い、親指を動かしかけた時、またメールが来た。嫌な予感に冷や汗をかきながら、メールを開くと、『予約取ったから、遅刻厳禁でよろしく』とニコニコマークがニコニコしている。
 なにこれ。私の思考回路を覗いたんですか。タイミング良すぎ。
 どうしようかと腕組みしながら逡巡して、まあいいかと結論がすぐ出た。
 どうせ彼とどうこうなることも無いだろうし、やましいことをしようとしてるわけでもない。
 この一回こっきりのこと。六本木でおいしいゴハンにありつきたいし。

 すぐに体を起こし、クローゼットを開く。そうと決まればとっとと準備をしないと。


 ***


 夏は日が長くて好きだ。もう六時だというのに、太陽はまだ白い光を発している。カーディガンの裾を直しながら、ぼんやりとビル群を見上げていたら、ポンと肩を叩かれた。

「ごめん、俺の方が遅れたね」
「ううん。私もさっき来たばっか」

 白いTシャツにブラックジーンズというこざっぱりとした格好で現れたウコン君は、大きな瞳を細めて笑いかけてきた。
 真夏の光線でいっそう爽やかさに磨きがかかってみえる。まぶしいっ!

「行こうか」
「うん」

 土曜の夕方という時間帯のせいだろう。カップル達が手をつなぎ歩く姿がそこかしこに見える。微妙な距離感を保ちながら歩道を進む私たちも、彼らから見れば、立派なカップルなんだろう。

「イタリアンの居酒屋でさ。すごくおいしいから凛香ちゃんを連れて来たかったんだ」

 人ごみに翻弄されそうになる私をかばうようにほんの少し後ろを歩いてくれる、その気遣いがニクイ。
 絶対この人モテるんだろうなあ。

 六本木ヒルズの少し手前の路地裏に入ると、途端に人通りが少なくなる。お店の看板がオレンジや緑や白い光を放ち、ガラス窓に反射する。
 その一角こじんまりとしたヨーロッパのおうち風なお店が、どうやら目的のお店のようだ。
 ランプの淡いオレンジ色に照らされる店内は、落ち着きのある木目調の家具で統一され、赤いカーテンがクーラーの風で揺れている。
 隅の席に案内され席についたところで、店員がキャンドルをひとつ、テーブルに置いた。
 半地下のせいか、店内は暗く、キャンドルのオレンジの光が妖しく揺れる。ムードがあるお店だなと、辺りを見回す。二人席ばかりで、ほとんどがカップルのようだ。

「料理がすごくおいしいんだよ」

 料理メニューを睨み、おいしそうなものをチョイスしていたら、頼んでおいたビールがやって来た。
 料理を適当に頼んで、乾杯を交わす。
 グビリと飲み込んで、口元についた泡をそっとぬぐい、「おいしい」と声を漏らす。ウコン君は、「凛香ちゃんって、豪快だなあ」とクスクス笑ってきた。

「舞子から凛香ちゃんのことずっと聞いてたからさ、なんだか初めて会った気がしないよ」
「舞子のやつ、何言ってたの? 凛香はいつも行動が変とか?」
「それはよく言ってた」

 やっぱり! 舞子のバカ。

「ずっと会ってみたかったんだよなあ。思ったとおり、かわいくて面白いね、凛香ちゃんは。会いたいって、言ってみるもんだよね。タイミングも良かったし」

 タイミングって、私とやっくんが別れたタイミングってこと?

「ほら、これおいしいんだよ。食べて」

 差し出された肉料理をぱくりと口に放り込む。
 ぱっちり二重の瞳が、私の一挙手一投足に降り注がれていることに否が応でも気付く。温かみのある視線で嫌な気はしないけど、食事をしているところを見られているっていうのはどうにも恥ずかしい。うつむき加減になりながら、もぐもぐ食べるしかない。ちょろりと目線を上げたら、ウコン君とバチンと目が合う。
 ふっと細められる瞳に、キャンドルのオレンジ色が灯されていた。

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あとがき↓
更新が遅くなり申し訳ないです。
月末月初は仕事がもりもりなのと、飲みに行って遊び呆けてたら、もう3月11日(苦笑)

アルファポリスの恋愛小説大賞にエントリーしてたのですが、気付いたら終わってましたね・・・
もしも投票してくださった方がいましたら、ほんとにほんとにありがとうございます。

来週、香港に旅行に行って来ます。
オススメスポットとかあったら教えてください(^^)

拍手やコメントもいつもありがとうございます。
お返事はResにて返しております。



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更新が遅くなり申し訳ないです。
月末月初は仕事がもりもりなのと、飲みに行って遊び呆けてたら、もう3月11日(苦笑)

アルファポリスの恋愛小説大賞にエントリーしてたのですが、気付いたら終わってましたね・・・
もしも投票してくださった方がいましたら、ほんとにほんとにありがとうございます。

来週、香港に旅行に行って来ます。
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【2010/03/11 02:31】 | Deep Forest(恋愛)
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