きよこの書き散らかし小説。
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

Deep Forest

目次へ
TOPへ

第42話 がけっぷちダイブ!

+++++++++++++

 自信過剰な男だ。
「俺を見ろ」って。「行動で判断しなさい」って。自分に自信がなきゃ、言える言葉じゃない。
 馬鹿じゃないの、心の中で呟いて、残りわずかだったビールを一気に飲みこむ。

 でも、そういう力強い言葉が、心を打ったのも確かだった。
 舞子が言っていた。言葉なんて信用できない。男は平気で嘘をつくって。
「愛してる」とか「お前しかいない」なんてセリフ、誰だって吐ける。心でそう思ってなくても、口にするのは簡単なこと。

 だからこそ、それが真実だと行動で指し示すしかない。
 ジャイさんは、そうしてくれると、言ったのだ。
 もしかしたら、ものすごく肯定的に前向きに考えすぎてるかもしれない。
 ジャイさんの今の言葉も、『嘘』なのかもしれない。私の気を引こうと、体のいいセリフを吐いてみただけなのかもしれない。

「何か飲む?」

 差し出されたメニューを受け取り、焼酎の一覧を眺め、「タンタカタン、ロック」と言ってメニューを返す。

「お、今日は飲む気だな」

 ジャイさんは嬉しそうに笑って、ちょうど料理を持ってきた店員さんに焼酎二杯とチェイサーを頼んだ。

「まあ、そういうわけだから、付き合うか」
「はあ?」
「付き合わなきゃ判断しようがないだろ?」

 強引なっ!
 ……でも、その通りだ。
 嘘か本当かなんて、今の段階の付き合いじゃ判断できない。
 彼がどういう人間なのか、表面上の部分でしか知らないのに、批判的に見るなんて馬鹿らしくもある。
 疑い出したらきりがない。起こってもいないことに悩んでばっかりで、前にも後ろにも進めないのなら、前に進んだ方がましってもんだ。
 ふと、舞子や英美子の顔が浮かんできた。
 結婚に転職。進み始めた友人たち。
 社会に出て四年。仕事にも慣れ、生活も安定した今。それぞれの新しい道を模索し始める年齢。

 私も、進み始めるべきなんだろう。

「ちゃんと、言って」
「なに?」
「ジャイさんの悪いところだね。相手を口車に乗せて、うまくコトを運ぼうとするの。私、ジャイさんが私のことどう思ってるのか、聞いてないよ。私の気持ち次第とか言って逃げないでよ」
「凛香ちゃんはどうなの?」

 ズルイ会話だ。
 私に言わせようとしてる。
 わかってるだけに、言いたくない。

「……付き合ってあげてもいいよ」
「あれ、素直だね」

 ごめんね、ジャイさん。
 好き、とは言えない。
 私は、自分の気持ちに嘘をつきたくない。ジャイさんへの気持ちが、いまだにつかめない。
 でも、だから。
 こういう始まり方をしてもいいじゃない。
 お互いが好きで始まる恋愛なんて稀だ。私の方に気持ちがなくて、ジャイさんだってよくわからない。なのに付き合いだしたとしても、大人になった今では、何の不思議もない。

「惚れさせてくれるんでしょう?」

 ジャイさんをまねて、意地悪く笑ってやる。ジャイさんはパカリと口を一瞬開けると、息を吐き出して「任せてよ」と笑った。

 ***

 この夜の判断を、私はどう思うのだろう。
 いつか後悔するのだろうか。また傷ついて泣くのだろうか。
 今は、まだ、闇の中……。迷路の中で惑っているだけ。

 酔いの回った体は火照って熱い。冷たいウーロン茶をぐいと飲み込んだところで、後ろから抱きすくめられて、噴き出しそうになった。

「ちょっと」

 文句を言おうと振り返ったところで、耳元を舐められる。くすぐったくて身をよじろうとしたのに、密着した体が邪魔で身動きが取れない。
 飲み屋から出て、私とジャイさんはジャイさんちへと向かった。
 終電で帰ろうかと思ったけど、手を繋がれて「一緒にいよう」と言われたら、断ることが出来なかった。
 付き合いだしたのだから、こうなるのも自然な流れだ。

「手をつないでキスをしてデートして。順番どおりに進めるって言ってたじゃない」

 いつだったか、ジャイさんはそんなようなことを言ってたはずだ。

「手もつないだし、キスもしたし、デートもしたじゃん。順序良く進んでるよ」
「でも、全部、付き合う前だよ!」

 反論してるのに、ジャイさんは聞こえないふりをしてくる。ぴったりとくっついて、私の首筋に顔をうずめ、「やっと手に入った」とぼやく。
 ほんわりとしたネコみたいなジャイさんの毛がくすぐったい。
 ネコに抱かれてるみたいで、嫌な気はしない。

「俺、けっこう我慢してると思わない?」
「どこが」
「同じ部屋で、同じベッドで寝たのに、我慢した」
「一晩だけじゃん!」
「嫌だったら、我慢するよ」

 髪質だけじゃなくて、性格までネコみたいな男!
 こういう時だけ甘えてくるとは!

「嫌なら言えよ」
「そうやって、私に判断させようとするの、ずるいよ」
「尊重してるんだよ」

 うまく言い包められてる……。
 それなのにさ、うまい具合に言い包められる私って、単純なのかな。

 答えに窮して口をモゴモゴさせる。どう答えればいいのかわからなくて、ジャイさんの膝に手を乗せた瞬間だった。
 隙をつかれて、キスされる。あ、と声を出そうとしたら、それも隙になって舌をさしこまれた。
 私の舌を絡めとり、歯列をなぞってくる動きが私を翻弄する。負けじと彼の首に手を回し、キスし返した。
 背中をなでてくる手の感触に体が呼応して、胸が高鳴る。

「ベッド、行く?」

 ん、とうなずく。
 指先から足の先まで、じんじんと熱い。
 ジャイさんの手の熱が愛おしくて、その手を掴む。
 チュ、と音を立て降り注ぐ唇が、私の心に花を咲かせた。

+++++++++++++

次話(第43話)へ
目次へ
TOPへ

拍手いただけると嬉しいです!

FC2blog テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

【2010/02/25 03:16】 | Deep Forest(恋愛)
トラックバック(0) |
コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿
URL:

Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。