きよこの書き散らかし小説。
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Deep Forest

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第39話 強引な男たち

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 ベッドに体を投げ出し、ぼんやりと天井を眺める。投げ出した写真を一枚手に取り、目の前にかざした。
 ジャイさんを受け入れる心の準備をしたいと思った。
 そのためには、やっくんとの思い出ひとつひとつを整理して片付けていかなければいけない。心に繋ぎ止められた思い出を、後悔の念として残すのではなく、良い思い出に変えていかなければ。
 気持ちの問題は、解決する手段を持たない。
 だからこそ、行動を起こして、気持ちをあるべき場所に持って行く必要がある。

 あるべき場所――アルバムにしまうように、過去の恋愛の一ページへと、納める。

 私は元彼の写真を捨てるタイプの人間ではない。元々写真自体あまり撮らないから、歴代の彼氏との写真なんて本当に数枚しかないし、捨ててしまったら、アルバムがスカスカになってしまう。
 やっくんとの写真も、やはり六枚しか無かった。一年でこの枚数なら、多い方だろう。
 捨ててしまうべきか、今までどおり、アルバムに入れておくか。
 引っ張り出したアルバムを目の前に悩んでしまい、面倒くさくなってベッドに寝転がった。
 アルバムから抜き出した写真を眺め、写真の中の思い出を掘り返す。

 水族館や映画館、アウトレットに遊園地……ありきたりのデートの積み重ねなのに、どうして心に残るのだろう。
 どうして、忘れたくないと、思ってしまうのだろう。

 ケータイから着信音が流れる。大好きな曲も、物思いにふけっている時に聞くと、うざったくてしかたない。
 画面にはメールのマークが点滅している。
 小さくため息をつきながら、メールを開くと、『うこん君』という文字が目に付いた。

 ……うこん君って誰。

『じゃあ、仕事の後に飲みに行こうか? 今週の金曜はあいてる?』

 じゃあ、という始まりの文面ということは、すでに何回かメールのやり取りをしてる人だ。送信メールのフォルダを開き、何通か自分が送ったメールを確認して、ようやく思い出す。
 浩太君。合コンの席で知り合った人だ。
 また遊ぼうと誘われて、『いいよ』と返した。それで、このメールが来たんだ。

 今週の金曜は、ジャイさんとの約束がある。けど、あれって、約束になる?
 一方通行だったし、なによりお泊りのお誘いだ。
 付き合っても無いのに、お泊りだなんて。ついこの間やらかしたけど、あれは『流れ』ってもんだ。止むを得ず泊まることにしたのであって、泊まることが目的だったんじゃない。
 ジャイさんをいまいち信用できないのって、絶対、あのお軽い誘い方のせいだ。

 それはさておき。どうしよう。『いいよ』と文面を作っては消し、『金曜は無理かも』と作っては消し。それを四、五回繰り返して、ようやくNGの返信をすることに決めた。

 ジャイさんとの約束、っていうよりは、先約優先ってことで。

「ごめん、その日は約束がある、と」

 送信ボタンを押すと、またすぐに返事が来た。

『土曜は?』

 土曜は予定無い。大丈夫と返信してすぐに、土曜に会うのは嫌だなと唇を噛んだ。
 だって、一日中のデートに誘われるかもしれなくなる。
 あまりよく知らない人とずっと一緒に過ごすのは、気を使ってかなり疲れる。ゆっくりしたい休みの日に、わざわざ神経すり減らすのも馬鹿らしい。
 やっぱりダメ、とでも返そうかとケータイに再び手を伸ばした瞬間、メールが届いたことを知らせる着メロが高らかに流れた。

『また会いたかったから嬉しいよ。夕飯に付き合ってくれるかな? 六時に六本木駅でいい?』


 ***

 一週間はあっという間で、仕事に追われながらワタワタしてたら、もう金曜になってしまった。
 ジャイさんにお泊りを誘われてるけど、お泊りグッズなんて用意してない。
 大体、『お泊りグッズ持って来い。置いてっていいから』って一体どういうつもりなんだ。
 わけがわからない。好きなら好きって言えばいい。どうして言ってくれないんだ。
 私がやっくんを忘れたら告白するって、ジャイさんらしくない。
「俺に惚れろよ」とかかっこつけて言ってきそうなのに。

「佐村、伝票」
「ありがとうございます」

 パソコンのディスプレイの上からにょきっと生えた川田の手には数枚の伝票が握られている。この間さんざん怒ったから、今週はけっこうきっちり伝票を渡してくれているのだ。

 エクセルで作り途中の書類を保存し、管理システムから伝票登録画面に行く。商品コードを入力して登録したところで、時計をちらっと伺い、周囲の状況を見渡す。
 普段は営業先から直帰することがほとんどの営業担当の男性陣が、今日は三人も残っている。珍しいこともあるもんだ。

「岸川さん、今日は私、七時前に上がりますね」

 隣の席の頼れる先輩、岸川さんに了承を得るために話しかけると、電卓を打ち鳴らながら(岸川さんは穏やかそうな外見に似合わず、電卓の打ち方が豪快だ。高速でバシバシと入力している音が離れてても聞こえてくる)、「お疲れー」と了承してくれた。

「すいません、お先に失礼します」
「なんだよ、佐村。デートかあ?」

 川田がオヤジ丸出しの半笑いで聞いてくるから、「ええ。川田さんと違ってモテますので」とにっこりと笑ってやった。

「お、俺だってモテるっつーの」

 とかなんとか必死に言ってるが、無視してやろう。

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あとがき↓
仕事が急激に忙しくなってきました(涙)
余裕だと思ってたのに、全くもって余裕がなくなってきた。ひー!


拍手やコメント、ありがとうございます。
お返事はResにて返しております(^^)


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仕事が急激に忙しくなってきました(涙)
余裕だと思ってたのに、全くもって余裕がなくなってきた。ひー!


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【2010/02/19 06:17】 | Deep Forest(恋愛)
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