きよこの書き散らかし小説。
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

Deep Forest

目次へ
TOPへ

第35話 人生の進め方

+++++++++++++

 合コンの二次会でビリヤードを一時間ちょっとやったところで、終電も近くなったため解散となった。
 終わり際に、全員でケータイの番号とアドレスを交換し、それぞれの電車に乗り込む。
 私と舞子は地元が一緒だから、同じ電車に乗って帰路に着いた。

「浩太、どうだった?」
「え? 誰?」

 ビリヤードをやったおかげで、たいぶお酒はぬけてきたけれど、電車の揺れがほろ酔いの時の視界の揺れに似ていて、ぼんやりと思考がお花畑になっている時だった。
 隣でウトウトしていた舞子が、寝ぼけた声で私に問いかけてきたのだ。

「ほんと、凛香は人の名前覚えないよね……」

 こうた。聞き覚えの無い名前に首をかしげる。舞子はだらりと肩を落とし、でっかいため息をついた。

「幹事の男だよ。私の友達!」
「あー、あのイケメンか」
「浩太、凛香のこと気に入ってたっぽいからさ。あ、言っとくけど、合コンでの話じゃないからね。大学時代からってことよ。私が凛香のこと話す度に『凛香ちゃんはいいキャラしてる』『凛香ちゃんは面白い』って大絶賛だったんだよ?」

 お笑い芸人に対する評価っぽいのがどうも気に入らないが、好意を抱いてもらえるっていうのは素直に嬉しい。

「大学の頃は、凛香には彼氏がいたから、紹介せずに終わっちゃったけど、久々に会ったら『凛香ちゃんはどうしてる?』って聞いてきてね。凛香も彼と別れたし、ジャイとはうやむやだし、いいタイミングなのかなって思って」

 ふうん、と鼻で相槌を打ち、顎に手を当てる。イケメンの印象があまりに薄くて、どう反応してよいものなのかわからない。
 一生懸命、イケメンのことを思い出す。
 ビリヤードのあるバーに行くまでの道のりでの会話、ビリヤードをしながらの会話。その時の表情。
 なんとなくでやり過ごした彼の側面を記憶の底から手繰り寄せる。

 ワックスで遊ばせた髪型やブルーのネクタイとスーツの合わせ方をみてもオシャレさんっぽいし、顔の造形も良かった。二重の大きな瞳はややつり上がっていて男らしく、厚めの唇が色っぽい。女の子ウケする顔立ちだろう。
 ジャイさんはまっすぐに入った二重の筋が綺麗な切れ長の目で、精悍な印象はあるが、口元にニヤニヤがどうもイヤラしくて、遊び人ぽいイメージしか出て来ない。
 ジャイさんに比べると、ずいぶん真面目そうに見えるし、出来る男のニオイがある。
 顔面的な部分で言えば、ジャイさんとイケメンのどっちかを選ぶとなったら、イケメンのがより私好みだ。

 性格はどうだろう。
 イケメンはとにかく優しかった。イケメンだけに。いや、イケメンは関係無いか。
 ビリヤードをやった時、わざと最後の9を落とさずに女の子に譲ってくれるあたりとか、さりげなく教えてくれる仕草とか。
 これがジャイさんだったら、9を大喜びで落として「凛香ちゃんは下手くそだなあ」なんて勝ち誇ってきそうだ。アドバイスを請おうもんなら、本当に手取り足取り、エロエロな手つきで触って教えてきそうだし。
 おお。どう考えてもジャイさんよりもイケメンじゃないの。

「イケメン、いいかも!」
「まじで? じゃあ、また遊んでやってよ。喜ぶだろうし」
「うんうん!」

 でも。女の子の扱いがうまいってことは、それだけ遊んでるってことだ。
 イケメンはもしかしたら、ジャイさん以上の遊び人かもしれない。
 一応、用心しておこう。
 ジャイさんとの前科(出会ってすぐににゃんにゃん事件)もあるし、慎重に生きるにこしたことはない。

 頭の中でジャイさんとイケメンを比較していたら、地元の駅に着いた。
 私は東口に、舞子は西口に行くので、ここでお別れだ。

「じゃ、またねー」

 さっさと行ってしまう舞子の腕をつかむ。

「待って待って。ちゃんと言ってなかった」
「え? なに?」

 お酒の残る舞子の仕草は、いつもよりも大きくて、体を揺らして小首をかしげる。
 いつものクールな舞子には見られない、かわいい仕草だ。

「結婚、おめでと」

 頬をぽっと染めて、舞子はフフと笑う。幸せそうな笑顔は、見るだけで気持ちをほっこりさせてくれる。

「ありがと」
「うん。またね」

 手を振って、別れる。
 気持ちが踊る。目の前が桜色に染まる。
 お酒を飲んでいるせいもある。だけど、これは、舞子の幸せオーラが私に移ったせいだ。たぶんきっと。


 ***

「結婚かあ」

 休み明けのだるい体を持て余しながら、会社の同僚の小崎英美子(こざきえみこ)と屋上で空を見上げていた。
 初夏の空の下で食べるお弁当は、仕事中とはいえ、ピクニック気分にさせてくれる。

「もう二十代の折り返し地点過ぎちゃったもんなあ……」

 ウィンナーを弄びながら、英美子は憂鬱そうな低い声でうなった。
 高校時代の友達が結婚するという話をした途端、英美子はげんなりした表情を見せ、こんなことを言い出した。

「凛香は、この仕事に満足してる?」
「ええ?」
「毎日毎日、伝票めくって数字睨んで、書類作ればミスばっかで怒られて。営業のバカは口先ばっかで事務仕事なんかほったらかし。ぜーんぶ私たちに押し付けて、今頃、どっかの喫茶店で『今日はかったりいから仕事切り上げて直帰しよー』とか言ってんだよ? 最近、なんでこの仕事してんのかわかんなくなっちゃった」

 英美子と私は部署は違うが、やっている仕事はほぼ同じだ。
 英美子のいう愚痴はつまりはイコールで私の愚痴でもある。

「事務にやりがい求めてもね……」

 と言ってしまうのは、間違っているのかもしれない。
 でも、OLの中の何割かは、事務仕事にやりがいなんて求めてないし、生きるため、金のためだ。
 給料は悪くないし、アフターファイブだってそれなりに楽しめる。
 そりゃ月初めと月末は残業三昧だけど、月中ならそれなりに遊べるし、趣味やショッピングを楽しむ余裕がある。
 その余裕を楽しむための、仕事でしかない。

「私、仕事辞めるかも」
「え? どうするの?」
「専門学校に行こうかと思ってるの。ずっとネイルの仕事に興味があってね。転職、しようかな」

 東京の空は、見上げるほど灰色に霞がかかる。フィルター越しに見るようなノイズまじりの空の色は、気持ちをげんなりさせて、うっとおしい。

「どう思う?」

 聞かれて、英美子を見る。
 いきなり大きな穴を穿たれたみたいに、空洞になった心は言葉を見つけ出せず、「うん……」とあいまいにしか返事出来なかった。

 結婚や転職。
 転機にさしかかっているんだと、感じた。
 それが、やけに重くのしかかったのだ。
 今までとは違う、転機に思えたから。
 高校や大学受験、就職の時も大きな転機と言えたけど、それは、レールに乗っかって生きてきた中での選択だった。
 けれど、もう、違う。
 自分の人生を、自分の意思だけで決める。
 その決断をする人たちが周りに増えてきたことに、なんだか自分だけ取り残されていくようで、大人として成熟していく人たちから見放されていくようで、寂しく思えたんだ。

+++++++++++++

次話(第36話)へ
目次へ
TOPへ

拍手いただけると嬉しいです!

あとがき↓
25歳から28歳あたりって、自分の人生にたいして悩む時期なのかなって思います。
仕事にしても、プライベートにしても。

この仕事続けていいのか、とか。
そろそろ結婚したい、とか。
結婚するなら、その先はどうしようとか。

仕事と自分のこの先の人生が密接に繋がっていることを実感する年齢というか・・・

この作品を読んでいる皆様の年齢層ってどのくらいなんだろう?

主人公と同年代の方々が読んでくれていたら、嬉しいなーと思います。
もちろん、年齢関係なく、様々な年代の方に読んでいただけていたら、それが一番嬉しいのですが(^^)



拍手やコメント、いつもありがとうございます。
ほんとに励みになってます。
お返事はResにて返しております。


追記を閉じる▲
25歳から28歳あたりって、自分の人生にたいして悩む時期なのかなって思います。
仕事にしても、プライベートにしても。

この仕事続けていいのか、とか。
そろそろ結婚したい、とか。
結婚するなら、その先はどうしようとか。

仕事と自分のこの先の人生が密接に繋がっていることを実感する年齢というか・・・

この作品を読んでいる皆様の年齢層ってどのくらいなんだろう?

主人公と同年代の方々が読んでくれていたら、嬉しいなーと思います。
もちろん、年齢関係なく、様々な年代の方に読んでいただけていたら、それが一番嬉しいのですが(^^)



拍手やコメント、いつもありがとうございます。
ほんとに励みになってます。
お返事はResにて返しております。

FC2blog テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

【2010/01/31 03:40】 | Deep Forest(恋愛)
トラックバック(0) |
コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿
URL:

Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。