きよこの書き散らかし小説。
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Deep Forest

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第34話 飲み会スタート!

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 合コンは十九時を少し過ぎた時間から開始された。
 格子戸でしきられた和室の掘りごたつで、女三人、男三人が向かい合って座る。

 一番左端に座った私の前には、がたいの良い髪を短く刈った男の人が座っている。目が細くて鋭いけれど、笑うと目尻にしわが寄って途端に人懐っこそうに見える、なんだか憎めなさそうなタイプの人だ。
 その隣に座るのは、真ん中で分けた髪がさらさらな四十代近くっぽい人で、黒々した眉毛が印象的だ。
 入口の近くに座っている人が今日の幹事らしく、舞子が好みそうなあからさまなイケメン君だった。浅黒い肌と、スーツが良く似合う細身の体型。二重の瞳は色気があるのが遠目でもわかる。ワックスで躍らせた短い髪も、彼によく似合っている。

「それじゃあ、乾杯といきますか」

 全員に飲み物が行き渡ったところで、幹事の人がビールジョッキを掲げて「おつかれー! かんぱーい!」と音頭を取り、初対面の男女がグラスを小突きあう。
 コクコクとビールを流し込んで一息つくと、緊張感が少しほぐれた。

 合コンのセオリーどおり、乾杯の後は自己紹介だ。がたいがいい男は秋吉さんといい、四十代っぽい男の人は田中さんといった。幹事は西岡というみたい。

「凛香ちゃんは何の仕事してるの?」

 目の前に座っているがたいがいい男――早くも名前を忘れたから武蔵と呼ぼう。元格闘家の武蔵に似てるし――がにこにこと笑顔で聞いてくる。

「事務。OLです」
「ああー。っぽいね」

 ぽいって、どこらへんが?

「幹事は舞子ちゃん? 舞子ちゃんとはなに繋がり?」

 隣に座る舞子に目配せしながら聞くから、舞子が「高校の同級生」と答えてくれた。

「へえ! じゃあけっこう付き合い長いね。俺、上京したから、高校の友達とかって疎遠になってるよ」
「地元が関東だから。引っ越す子も少ないしね。秋吉さんはどこの出身なの?」

 ペースよくビールをあおりながら、私と舞子と武蔵が会話を交わす。
 イケメンと黒眉さん――名前は忘れました――は、舞子が連れて来た職場の後輩の子・千春ちゃんと何か楽しそうにしゃべっている。
 早くも二手に分かれちゃったな、とそっちをちらりと見た瞬間、イケメンと目が合った。
 アーモンド形の目が一瞬丸くなるが、すぐにふっと細くなり、にこりと笑いかけられた。
 うわお。イケメン会心の一撃!

 互いの趣味や最近あったことや、仕事の内容の話やら、時に一対一になったり、全員で話したりしながら合コンの時間は過ぎていく。
 武蔵もイケメンも眉黒さんもそれなりにいい人で、会話は面白い。
 アタリの合コンと言っても間違いはないかもしれない。

「ビリヤードでもやりに行く?」

 合コンが始まって三時間が経過した頃、イケメンが腕時計を確認しながら全員に問いかけてきた。

「ビリヤードって、女の子たちは出来るの? 俺と田中さんはよく行くけど……」

 武蔵が黒黒さんの肩をたたきながら、頭を揺らした。顔が真っ赤になってるし、武蔵、少し酔ってるのかな。

「舞子、ビリヤード得意だもんな」

 ビリヤードを提案したイケメンが、柔らかそうな唇に笑みを湛え、「こいつ、プロ顔負けなんだ」と舞子を褒め称える。
 イケメンと舞子は大学の同級生らしい。大学の時の仲間でよくビリヤードに行っていたらしく、私も付き合わされて何度か二人でビリヤードに行ったことがある。

「久しぶりだからやりたいねって話してたんだよねー。行こうよビリヤード」

 舞子が賛成し、私も「いいよ」とうなずいた。千春ちゃんはビリヤード初心者だが、「やってみたい」と意気揚々に答えたから、二次会はビリヤードに決まった。

 お酒の入った体はふわふわと軽い。いつもはかかとが痛くなるヒールも、今は痛みを感じない。
 飲み屋を出て、駅の方へ向かって歩いてすぐの場所に、ビリヤードやダーツが出来るお店がある。
 そこに行く道すがら、気付くと隣にイケメンがいた。

「凛香ちゃん、酔ってる?」
「ん? そうでもない」
「顔赤いよ」
「お酒入るとすぐ赤くなるの。でも、そんなに酔ってないよ」

 そんなに、酔ってはいないと思うが、ビール一杯とカクテル二杯、焼酎二杯飲んでる。私の経験上でいうと、あと一、二杯が限界だろう。
 それ以上飲んだら、たぶん、ただの酔っ払いになる自信がある。

「凛香ちゃんのことは舞子から聞いたことあるから、一回会ってみたかったんだよね。居酒屋では席が離れててあんまり話せなかったから残念だったよ」
「え! 舞子から聞いたことあるって、なに?!」

 舞子のやつ、何を言いふらしてんだ。

「人の名前を全然覚えないとか。俺の名前、覚えてる?」
「……寒くて耳が痛いから聞き取れない」
「もう夏だよ、寒くないよ」

 ちっ。イケメンはイケメンだろうが。名前なんて覚えられないっつーの。

「……池……たに?」
「全然違う」

 イケ……なんとかさんだよね? もしくは、なんとかイケさん?

「北池さん!」
「全然惜しくないけど、惜しい」

 くすくすと笑われて、口を尖らせる。
 大体、いっぺんに三人も名前なんて覚えられない。
 名札でもつければいいのに。お見合いパーティみたいにさ。

「じゃあ、下の名前で覚えてよ。俺、浩太(こうた)。覚えられる?」
「こう、こう君ね。うん、覚えた。こう君こう君こう君」

 呪文のようにくり返し言っていれば、いつか覚えるだろう。
 こう君こう君こう君……うこ君うこ君んこ君んこ君……

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【2010/01/25 04:28】 | Deep Forest(恋愛)
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