きよこの書き散らかし小説。
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Deep Forest

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第31話 アラジャイグマの見解

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 溢れ出した涙は止めることもできず、こっそりと鼻をすすりあげた。ばれないようにしたつもりだったけど、しんと静まり返った部屋では、その音はやけに大きく響いて、恥ずかしくなり布団の中に顔をもぐりこませた。

「……もしかして、泣いてる?」

 くぐもった声が横から聞こえてくる。
 泣いてないよ、と返事をしたら、また鼻水がたれそうになって、ずずっとすする。

「どうした?」

 泣いているってばれてしまうのが嫌で、ジャイさんに背を向ける。私の動きに合わせたように、隣から衣擦れの音がする。ジャイさんは私の方に体を向けたのかもしれないけど、もう背中を向けてしまったから、わからない。

「……凛香ちゃんは、意外と人に言いたいことを言わない子だよね」

 眠たげな柔らかい声が、すぐ近くから聞こえてくる。
 ジャイさんの指摘に、私は何も答えられない。

「辛いなら、言えばいいのに……。ちゃんと聞くし」
「つ、つらくなんか、ない」

 泣いているってバレバレな嗚咽交じりの鼻声しか出せなくて、ますます身を縮こまらせる。

「普段は傍若無人なくせに、弱いところを見せたがらないよなあ」

 ジャイさんの声は優しい。父親が娘の悪いところをぼやいてるみたい。悪いところを話してるのに、そこには愛情があるから、嫌なかんじがしない。
 はっとする。
 ジャイさんの言葉は、私に対する愛がある。
 だから、こんなにも心にじんと響く。包み込むようなこの雰囲気が、私の心を解きほぐしてくれる。

 ――私、ずっとずっとこの声に癒されてた。
 低音の声が心地良くて、ゆりかごの中で眠っているような気持ちにさせてくれる。
 初めてジャイさんと寝たあの日から、私はこの声に魅了されていた。

 そして、惹かれてた。

 優しく触れてくれる指先に、私を想ってくれる言葉ひとつひとつに。

「ジャイさんといると、何もかも洗い出される気がする」
「なんだそれ。アライグマ?」
「アラジャイグマ」

 ぷ、と噴き出す。アラジャイグマ、ちょっとかわいいかも。

「ねえ、腕枕して」

 もそもそと動いて、ジャイさんと向き合う。だけど、やっぱり恥ずかしくて、顔は見られなかった。
 ジャイさんの腕が布団から出されて、私の頭の下におさまる。
 そのまま体を引き寄せられたから、私はジャイさんの胸の中に顔をうずめる格好になった。
 ほんのりと煙草の匂いがする。
 煙草の匂いなんて、あまり好きではないのに、なぜだかもっと吸い込みたくなった。
 スーハースーハーしたら、ただの変態になるから、我慢するけど。

「ジャイさんは、なんで私が好きなの? 本当に好きなの?」

 ベッドの中で、聞くべきことじゃないかもしれない。
 セックスをするためなら、平気で「愛してる」って嘘をつく男なんてざらにいるのだ。

「面白いし、楽しいし。やることなすこと変てこで空回りしてるくせに必死でさ。平気で男と寝る女なのかと思えば、元彼のことをずるずるひきずって、一途丸出し。存在自体が面白すぎて、手放したくなくなった。俺のそばにいてよ」
「あんまり、嬉しくない言葉ばっかり」
「そう? 褒めてるつもりだよ」

 顔がニマニマしてしまう。抱き寄せられているせいで、今の表情はジャイさんにばれない。こんな顔、絶対に見られたくないから、抱き寄せられてて良かった。
 だって、素直な気持ちで、言えるんだもん。嬉しい。

 うん。嬉しい。

「……ありがとう」
「それは返事になってないな」

 少し不機嫌になったジャイさんの声が、ちょっとこそばゆい。

「だって、ちゃんと好きって言ってないよね」

 催促してるみたい。でも、言ってほしい。言葉にしてほしい。
 ベッドの中での、戯言の愛でもいい。セックスをするための、嘘でもいい。

 私を捕まえてよ。

 離さないで、強引でもいいから、連れ出してほしい。

 迷いの渦の中で、惑うばかりの心。ループする苦しみから、助け出して。

 私の肩を抱く手に、きゅっと力がこもる。
 熱く、強い手。

「凛香ちゃんが、ちゃんと元彼を吹っ切ったら、告白する」

 首筋がひやりと冷たくなった気がした。

「俺に逃げようとしてるだろ?」

 それは、何度も何度も、そう本当に何度も自問自答してきたことだった。
 私、今、流されて、楽な方の答えに逃げようと……してた?

「別に俺はそれでもいいけど、凛香ちゃんは納得できる?」

 体が固くなって、汗がにじみ出る。見開いた目が乾いて、また涙が出そうになる。

「昔の男を吹っ切るために、他の男を見つけるのだってありだよ。だけど、凛香ちゃんはそれで平気なタイプじゃないじゃん? 不安なことや不満なことを抱えまま付き合いだしても、うまくいかねえし。凛香ちゃんがちゃんと答えを出さなきゃ、進まないでしょ」

 答え。答えって、何?
 どんな答えを出せと言うの?
 不安なことや不満なこと?
 私が一体、何を抱えているというの?

「凛香ちゃんは、俺のことを好きになるから、俺は気長に構える」
「……な、なにそれ! どこから来る自信!?」

 思わず顔をあげる。ジャイさんと視線がかみ合う。
 涼しげな瞳を私に向けて、にやりと笑う。いつもの不敵な笑みを前に、私は蛇ににらまれたカエルのように動けなくなってしまった。

 落とされる口付けを、私は拒めない。
 首筋に添えられたジャイさんの手が熱い。少し乾いている手に触れられるたびに、その部分の水分を取られてしまいそう。
 口の中に侵入してくる舌を招きいれ、自分の舌を絡ませる。
 ジャイさんの背中をつかんだ手が熱を放ち、体全体が熱を帯びていく。
 ほんのりと漂う煙草の香りは、まるで媚薬のよう。
 名残惜しく、下唇を噛みながら、口を離す。

「これ以上は、だめ、だからね」
「わかってるよ」

 ぎゅっと抱きしめられたら、ほっとしてしまった。
 泣いていたのが、馬鹿みたい。

「……惚れさせてみせてよ」

 首筋に吐息を這わせて、挑戦的に言葉を吐く。

「言うねえ」

 ジャイさんが笑う。
 鼓動が溶け合う。
 愛おしい時間を、私はただ抱きしめる。

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あとがき↓
メリークリスマスイブです!
つーか、クリスマス、はやっ!!


私のきゃわゆい甥っこと姪っこに何か買ってあげたいけど、クリスマスはがっつりがーーーーっつり仕事なので、渡せてもお正月…(涙)
クリスマスプレゼントじゃ、ない、よね……(涙)


拍手やコメント、ありがとうございます!Resにてお返事しております!


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メリークリスマスイブです!
つーか、クリスマス、はやっ!!


私のきゃわゆい甥っこと姪っこに何か買ってあげたいけど、クリスマスはがっつりがーーーーっつり仕事なので、渡せてもお正月…(涙)
クリスマスプレゼントじゃ、ない、よね……(涙)


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【2009/12/24 03:00】 | Deep Forest(恋愛)
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マミ
初めて書きます。いつも楽しみに読まさせていただいてます。今夜はなにげなく立ち寄ってしまってコメントまで書いてしまって明日は仕事なのに・・・
もう夜中の2時すぎ・・・
なんもなかった今年のクリスマス 立ち寄ってよかったです。ほんのりした31話でちょっと私もあったかい気持ちになりました。とても良くねむれそうです。
更新楽しみにしています。頑張ってください。

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コメント
この記事へのコメント
初めて書きます。いつも楽しみに読まさせていただいてます。今夜はなにげなく立ち寄ってしまってコメントまで書いてしまって明日は仕事なのに・・・
もう夜中の2時すぎ・・・
なんもなかった今年のクリスマス 立ち寄ってよかったです。ほんのりした31話でちょっと私もあったかい気持ちになりました。とても良くねむれそうです。
更新楽しみにしています。頑張ってください。
2009/12/26(Sat) 02:18 | URL  | マミ #EKsGaSlY[ 編集]
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