きよこの書き散らかし小説。
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Deep Forest

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第30話 ぎゅって抱きしめて

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 一人暮らしの男の家に泊まるなんていうのは、実に一年以上ぶりになる。
 やっくんは結婚していたから家に呼んでくれるわけがないので、泊まりの時っていうのはホテルばかりだった。
 それもあまりしょっちゅうではない。仕事がハードだと聞かされていたから、会えないことに違和感を覚えることがなかったけれど、要は奥さんと一緒に暮らす家に帰らなければならないのだから、そうそう私とデートなんて出来なかったのが真相だったんだろう。
 やっくんの言うことをすべて鵜呑みにして信じきっていた私は、なんというか……本当にバカな女なんだと思う。

 シャワーを浴びながら、念入りに体を洗う。もしかしたら、を考えてしまう。
 だって、ジャイさんは私と付き合いたいと、何度も言ってきてる。そういう関係になることを望んでいるのだから、こんな千載一隅のチャンスを逃すはずない。
 私が男だったら、大喜びで今頃ベッドメイクしてるところだ。

 ――これで、いいのだろうか。
 いや、いいわけない。互いの気持ちも確認せずに、ヤることだけヤッてしまったら、あとはなし崩し的な関係になるだけだ。
 一歩間違えれば……セフレになるんだろう。
 自分が何を望んでいるのかわからない。
 ジャイさんが好きだという気持ちが、ないわけじゃない。
 でも、やっくんへの気持ちがまだ心の隅でくすぶったままで、恋愛する気力なんてどこにもいない。
 すがりついて、そばにいてと叫びたい。
 ずっと一緒にいてほしいと、ただそれだけを願う。
 その感情の向かう先は、本来ならやっくんで、やっくんがいなくなったから、その場所を埋めるみたいに私の心に入り込んできたジャイさんに気持ちが傾いている。

 つまり、ジャイさんはやっくんの代わりなのかもしれない。

「そんなのは恋じゃないよなあ……」

 つぶやいて、シャワーを止める。ひたひたと垂れる水をバスタオルでふき取り、ジャイさんから借りたスエットを着た。
 ぶかぶかの服の袖をまくりながら、洗面台に写る自分の顔を凝視する。
 化粧を落とした顔は、なんとなく疲れている。暑さで顔が火照っているからまだましだけど、明日の朝はかなりやばい顔になっていそうだ。
 廊下の奥の、ジャイさんがいる部屋を見る。
 さすがに、すっぴんを見せるのは恥ずかしい。

 化粧ポーチから携帯用のボトルに入った化粧水を取り出し、顔に叩きつける。眉毛を書き、フェイスパウダーを薄く塗ると、多少は見苦しくない顔になった。
 昔はすっぴんで歩くなんてへっちゃらだったのに、今じゃ化粧無しで過ごすなんて考えられない。

 女はこうやって化粧を覚えることで、自分の心もごまかして生きてるんじゃないか。
 化粧という鎧で顔面を覆いつくして、ついでに体中全部全部全部武装してるんじゃないか。

 ため息がとても長く吐き出される。

 何もかもが見えなくなってる。私自身の心でさえ、今は闇の中だ。


 ***

 ドアを開けると、先にお風呂に入っていたジャイさんはすでにベッドに入って寝ていた。
 がっくりと肩を落とす。
 妄想だけどさ……ベッドで両手広げて待ってるかと思った。ジャイさんだし。

「ねーえ。私はどこで寝ればいいのー?」

 なんかむかついたから、足でジャイさんのお尻を軽く蹴ってやった。壁を向いて寝ていたジャイさんは、「いてえ、けつが割れた」と目をしょぼしょぼさせながらわめく。

「けつは元から割れてるでしょうが」
「奥まで食い込んで裂けた」

 どんなけつしてんだ。

「ここに寝ればいいじゃない」

 左手で布団をつかみ、おいでとばかりに空間を空けてる。

「……同じベッド」

 ついつぶやくと、ジャイさんは不服そうに口を尖らせた。

「俺んちソファーとか無いし。他に寝具無いし。寝るならここ」

 ぽんぽんと布団を叩いてる。
 いや、でもでもでも! そこは、まずい……と思うんですよねえ。

「な、な、なにもしないよねえ」

 お風呂に入る前に聞いたことをくり返し聞く。ジャイさんはニコニコ笑ってうなずいたが、その笑顔がよけいに信用できない。

「明日会社じゃん。早く寝ようぜ」

 そうそう。明日は会社だ。早く寝ないと、寝坊しちゃう。
 って、そういう問題じゃないし!

「腕と足を紐で結わえていい?」
「SMプレイ? 俺、ちょっとそういう性癖は……」
「ち、ち、ちちちちちちがう! ジャイさんが触ってこないようにするためだっつうの!」
「俺の隣って、そこまでしないと嫌なわけ? じゃあしょうがないなあ。俺は床で寝るよ……」

 もそもそと動いて、半泣き顔でベッドから這い出てる。
 家主にそんなことさせるわけにはいかないから、大急ぎで肩をつかむと、力ずくで布団に戻してやった。

「私が床で寝るから!」

 と言った矢先、ジャイさんに腕をつかまれ、思いっきり引っ張られた。
 バランスを崩し布団に倒れこんだら、それ幸いにと、掛け布団をかけられてしまった。

「お、おぬし、やりおるな」
「なんで時代劇口調なの?」

 だってだって、こいつ、悪代官よりやり手だよ!

「さあさ、とっとと寝ましょうねえ」

 ポンポン、と私の肩を叩き、ジャイさんは目を閉じてしまった。

 あれ、寝ちゃうの?
 少し拍子抜けして、肩の力が抜けた。
 布団の端をつかみ、顔にかぶせる。
 シングルベッドはせまく、ジャイさんの肩は触れるか触れないかの距離にある。
 温もりが伝わる距離は、隣に誰かがいるって安心させてくれると同時に、心臓を高鳴らせた。

 なぜだか涙が出そうになった。
 腕枕をして、ぎゅって抱きしめてほしいと、思ってしまった。
 よけいに寂しくなるのは、過去の幸せな記憶を蘇らせるからだろうか。
 やっくんの腕枕は、心地良かった。
 一緒に眠る時、私を抱き寄せて、肩をトン、トン、と叩いてくれるあのリズムが好きだった。
 寄せられた体から伝わる、鼓動の音が愛おしかった。

 もう、やっくんに会えないんだと、かみしめていた。
 今の私を想ってくれる人が、横にいるのに。
 私は、もう二度と会うことのない人に、心を寄せていた。

 それはとても滑稽で、情けなくて……涙が勝手に溢れていた。

+++++++++++++

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あとがき↓
お久しぶりですっ
11月あたりから更新がとろくなっていて、申し訳ないです(涙)
けして忙しすぎるとか体調を崩して…とかじゃないので。


エアコンがね、壊れたんですよ(涙)
なんか、リモコンが使えなくて。本体の故障なのかリモコンの故障なのかわかりませんが、修理を呼ぶにはちょっと部屋が荒れてて、人に見せられまへん(^^;
というわけで、ハロゲンヒーターのみで生きてみたら、今度はハロゲンヒーターが壊れた\(^^)/

なんか破壊光線的なものを飛ばしてるんでしょうか(涙)

そんなこんなで、パソコンいじるのも寒くて寒くて。
こんなひもじい思いをすることになろうとは・・・


ハロゲンヒーター、やけども負ってしまったので(なにしてるんだ)、やつとはおさらばすることにしました。
新たに空気清浄機能のあるヒーター買って、今はポカポカです(^^)

エアコン? あんたなんか一生使ってやらないんだからっ(なぜかツンデレ風)


家電とバトルしている間にも(苦笑)、たくさんの拍手ありがとうございました。
エアコンとの別れにもめげずに、生きていけますっ


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お久しぶりですっ
11月あたりから更新がとろくなっていて、申し訳ないです(涙)
けして忙しすぎるとか体調を崩して…とかじゃないので。


エアコンがね、壊れたんですよ(涙)
なんか、リモコンが使えなくて。本体の故障なのかリモコンの故障なのかわかりませんが、修理を呼ぶにはちょっと部屋が荒れてて、人に見せられまへん(^^;
というわけで、ハロゲンヒーターのみで生きてみたら、今度はハロゲンヒーターが壊れた\(^^)/

なんか破壊光線的なものを飛ばしてるんでしょうか(涙)

そんなこんなで、パソコンいじるのも寒くて寒くて。
こんなひもじい思いをすることになろうとは・・・


ハロゲンヒーター、やけども負ってしまったので(なにしてるんだ)、やつとはおさらばすることにしました。
新たに空気清浄機能のあるヒーター買って、今はポカポカです(^^)

エアコン? あんたなんか一生使ってやらないんだからっ(なぜかツンデレ風)


家電とバトルしている間にも(苦笑)、たくさんの拍手ありがとうございました。
エアコンとの別れにもめげずに、生きていけますっ

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【2009/12/18 02:59】 | Deep Forest(恋愛)
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