きよこの書き散らかし小説。
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Fly high, High sky

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第18話 道程

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 すぐさまチェックアウトし、車を走らせる。
 夏の深夜は冷たい夜露を含み、うっそうとした空気が濃密に充満する。少しだけ開けた窓から聞こえてくる風の裂く音をBGMに、私はアクセルをベタ踏みする。
 ラーメン屋の所在地は、はっきり覚えていない。来た道をたどりながら、何度も引き返し、それでも通ってきた道は私を導いてくれる。

 まるで人生ゲームみたいだと思った。旅の始まり、サイコロでルートを決めるやり方に、人生ゲームを連想した。
 行きたい場所もやりたいこともなく、サイコロを振り、なんとなくで決めるルート。それはまるで、私たちのこれまでの人生のようだった。
 特に将来の展望もなく、進むべき道もよくわかっていない。運任せ、風任せの人生。小学校、中学校、高校、大学……すでに用意されていた道を、何の疑問もなく歩んできた。

 だけど、いざ社会への出ようとする時、気付いてしまう。

 何のために生き、どうやって生きていきたいんだと。
 ルーレットやサイコロをどれだけ振ろうが、人生ゲームでは、道の先に起こる出来事は決められている。
 でも、違うんだ。
 何が起こるかわからない、道なき道を歩いていくのが、人生ってやつなんだ。

 私たちは私たちの人生を、私たち自身で選択し、自らの足で進んでいかなくてはならない。
 そのための覚悟と強さを、身につけなければならない。
 
 美月と並んで歩いてきた。
 ずっと一緒に進んできた。
 これから先、きっと私たちの道はどんどん離れていく。
 ずっと横にいて支えてあげられない。美月が倒れても、きっと気付いてあげられない。
 だから、何かあったら、言ってほしい。辛かったらきつかったら、何もかもが嫌になったら、言葉に出してほしい。
 けつを蹴って奮い立たせてやるし、優しい言葉でなぐさめてやる。
 私が必要な時、必要だと言ってくれれば、いつだって助けてやる。
 間違ってることをしてたら、殴って目を覚まさせてやる。

 ずっとそばにはいられないのだ。味方でいることだってできないこともある。
 それでも、私たち、友達でしょう?

 私たちはそういう風に大人になっていくんだと、思いたい。

 途中でフェードアウトするなんて、許さない。
 絶対、許さない。


 ***

 ラーメン屋にたどり着いたは、翌日の昼前だった。
 ずっと運転していたのに疲れは全く感じなかったが、車を停めラーメン屋に入ろうとした時には疲労困憊で倒れそうだった。
 ラーメン屋さんは開店していて、昼のピークタイムで人がいっぱいいた。私は店の座敷でぐったりしながら、おじさんが暇になるのを待った。
 おじさんは私のことを覚えていて、私が店に入った時、疲れきった私に気遣い、座敷で休んでろと言ってくれたのだ。
 おじさんはラーメンを手際よく作り、おじさんの奥さんなのかパートさんなのかわからないけど、おじさんと同年代の太ったパンチパーマのおばさんが忙しそうに動き回る。ぼんやりとそれを眺めていたけど、いつしか私は眠ってしまっていた。

 ふと目が覚めると、お店は閑散としていた。洗い物をする音だけが店の奥から聞こえてくる。
 立ち上がり、カウンターから台所に顔を出す。
 おじさんが気付いて、「何か食うか? ラーメンでいいか?」と聞いてきたから、私は小さな子どもみたいにいじいじしながら、うん、とうなずいた。
 座敷に戻り、テーブルに置きっぱなしになっていた水をごくごくと飲み干す。ポットが用意してあったから、すぐに注いで、またごくごくと飲んだ。
 少しして、湯気の上がったラーメンが目の前に差し出させる。
 見た瞬間に、お腹がぐうぐうと喚きだすのだから、現金なものだ。

 ラーメンを食べ終えた頃、おじさんが煙草を吸いながら、私の前に座ってきた。

「あの、すいません。突然押しかけて。しかも……休ませてもらっちゃったし」
「いや、いいんだよ。無駄に店は広いからな。夕方までは店は閉じてるし、ゆっくりしていけ」

 水を飲む。
 冷たい水が喉を通っていくのがわかった。

「美月のこと……私と一緒にいた子のことなんですけど」
「一緒じゃねえようだが、置いてきちまったのか?」
「いえ……いなくなっちゃって」
「自力で帰ったのか、保てなくなったのか、俺にはわからんな」

 保てなくなる? 意味がわからず、首をかしげる。

「あの嬢ちゃん、霊体だろう? 姿を保てなくなって、いなくなったのかもしれん」
「言ってる意味が、わからないんですけど」

 れーたい? ほーたいの間違い?

「生きてるのか死んでるのかまではわからんがな、幽霊ってやつだ。気付いてなかったんだな」
「おじさん、頭おかしいの?」

 つい本音をこぼしてしまい、慌てて口を塞ぐ。ほぼ初対面の人に、失礼すぎる。

「はは、よく言われる。俺は見える人間だから、変なもんはよく遭遇するんだよ。見えないやつからしたら、俺みたいな輩は『頭がおかしい』んだろうな」
「すいません。でも、美月は私にははっきり見えてました。幽霊じゃありません」
「あんたとあの嬢ちゃんは波長が合うから、あんたにははっきり見えたんだろ。俺にはぼやけて見えたぞ? それに、あの嬢ちゃんはあんたの前に立つためにああして霊体になったんだろうから、あんたにはっきり見えるのは当然のことだろうよ」

 すんなりと納得できるわけがない。
 そのはずなのに、私は諦めの境地に立たされたかのように、おじさんの言葉を素直に受け取っていた。

「美月は……自殺したって、聞かされました」
「そうかい。それは……辛いなあ」

 この旅の最中、美月が人と接触した姿を、私は一度も見ていない。このおじさん以外は。

 コンビニにも行かず車の中にこもり、ホテルや民宿でチェックインする時、後ろで眺めているだけだった。あのナンパしてきた男の子達も、一人は美月の姿を認めてたが、もう一人は見ていない。おそらくあの彼は、『見えていた』だけなんだろう。私と同じように。

 美月は確かに私と一緒にいた。
 でも、生身の人間では、なかった。

 
 美月は……何のために私と一緒にいようとしたのだろう。
 死んでしまったのに、私と旅に出た理由は何だったんだ。

 くり返し、くり返し。
 私たちは思い出話に花を咲かせた。

 死ぬ時、人は走馬灯のように過去を見るらしい。美月にとっての、それだろうか。

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【2009/12/05 03:55】 | Fly high, High sky(青春コメディ)
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