きよこの書き散らかし小説。
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Fly high, High sky

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第17話 逃げていた

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「お母さん?」

 実家に電話をかけると、母親が出てくれた。旅行から帰ってきたの? 遅い時間ねえ、と眠そうに答える母にすがる気持ちで先ほどまでの出来事を話した。

『……美月ちゃんのおうちに電話してみるから、あんたはそこで待ってなさい。美月ちゃんのおうちの電話番号は変わってないわよね?』

 うなずいて、電話を切る。
 ケータイを握りしめ、お母さんからの電話を待つ。美月の実家の番号は、ケータイに登録していない。自分で事態を把握できないもどかしさで、胃がむかむかする。
 吐きそうになり、トイレに駆け込む。
 だけど、胃液が喉まであがってくるだけで吐くまでには至らず、私を楽にしてくれない。

 トイレから戻り、ベッドに倒れたところで、ケータイが鳴った。出ると、開口一番『美月ちゃんと旅行に行ったのって、本当なの!?』と母が怒鳴ってきた。

「なに、どういうこと? 嘘ついてどうすんの? こんなことで嘘なんかつかない」

 反論する。しばらくの沈黙の後、母はため息をついた。

『……美月ちゃんとあんたが一緒にいるわけ、ないのよ?』
「は?」
『本当は男の人と一緒なんじゃないの? たちが悪い嘘はやめてちょうだい』
「たちが悪いって、どういう意味」

 疑われることが癪に障る。美月が行方不明だなんて嘘、それこそたちが悪い。そんな嘘つくわけないじゃないか。信用してくれない母親が、むかついてしょうがない。

『美月ちゃん、自殺したって』
「え、なに? なに? なんて言ったの、今』
『美月ちゃん、自殺したんですって。和実、あんた、なんで嘘をつくのよ……!』

 言葉の意味が捉えられず、口を動かすことしか出来ない。
 今、お母さんはなんて言った? じさつ。じさつと言った。
 何言ってるんだ。お母さんのほうがよっぽどたちの悪い嘘をついてる。失笑してしまう。

「お母さんこそ、嘘やめてよ。美月はさっきまで一緒にいたんだよ? なのに自殺って、何つまんない嘘ついてんだか」
『三日前に、自殺したんだそうよ。あんたと一緒にいるわけないでしょう。なんで、あんた笑ってるの? 笑えないでしょう。どういうことかわかってるの?』

 息を飲む。涙交じりの母の声は嘘をついているとは思えなかった。

「冗談やめてよ」

 笑いながら言った。だって、こんなのありえない。笑い飛ばしたくなる。

『お母さんは嘘なんてついてない。早く帰ってきなさい。早く帰ってきて、ちゃんと説明しなさい』

 馬鹿げてる、それだけ言って、電話を切った。
 私が男と旅行に行ったと思って、私を懲らしめてやろうとしているに違いない。
 そう思いたいのに、事実がすんなりと心の底に落ちていっていた。
 美月は死んでいたのだとしたら、私の横にいた美月は……何者だったというんだ。
 まさか幽霊?

 でも、もしそうだとしたら、この突然の失踪に合点がいってしまう。

「嘘に決まってる」

 大体、美月が自殺? あの能天気大魔王みたいな子が、自殺する?
 ありえない。
 ありえない?

 ありえない、わけない。あの子は、けして強い子ではない。
 ああやってバカなふりをしているのは、そうすることが一番、楽に生きれると知っているからだ。
 美月はしたたかな女だ。人に疎まれることが多く敵を作りやすいからこそ、すんなりかわす術も逃げるやり方もわかってる。
 だけど。
 不器用な子だ。
 楽に生きるための手段を知っていても、心はついていかない。

 小さなことに傷つき、周りに嫌われることを恐れ、だから、何もわかっていない顔をして、自分の心の傷に気付いていないふりをしてきただけだ。

 私はそれをわかっていたから、逃げたんだ。
 誰かの支えを必要とする美月に、寄りかかられることを恐れた。
 私はあんただけの私じゃない、私には私の道がある。美月の介入で、自分が傷つきたくなくて、逃げたのだ。
 美月のそばにいればいるほど、自分の醜い部分を垣間見た。
 女特有の嫉妬心や、薄汚い陰険な気持ち。
 見たくもない自分の一面を、露にされる。
 それは美月が近くにいると実感するほど大きくなるから、逃げてしまった。

 美月は馬鹿だ。
 自分を支えられるのは、自分しかいない。どれだけ支えを手に入れても、それは永遠ではない。
 私も、駿介も、美月が倒れそうになったらそばにいて助けてあげることは出来る。でも、支えにはなれない。
 駿介が美月から離れたのは……きっと私と同じ気持ちになってしまったからだろう。

 立ち上がる。
 美月が自殺? 馬鹿げてる。
 確かめないといけない。自分の目で確かめなければ、私は何も信じない。

 だって、美月が死んでいて、私の隣にいたのが幽霊なんだとしたら、あのナンパしてきた男や、ラーメン屋のステテコオヤジが見たのは何だと言うんだ。
 私の横に美月はいた。それは確かなことで、絶対だ。

 ふと、思い立つ。
 あのラーメン屋のおじさんは、美月と話だってしてる。あのおじさんと話したい。
 あなたは見ましたよね? 美月と私が一緒にいたのを見ましたよね? と。




 心許なくなる自信を、取り戻したかった。
 私と美月が一緒に旅したこの三日間が夢だったと思いたくなかった。
 確かめなければいけないと、思ったのだ。

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【2009/12/05 03:52】 | Fly high, High sky(青春コメディ)
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