きよこの書き散らかし小説。
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Deep Forest

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第29話 決行の夜

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「観たい映画って」
「トトロ」
「メイちゃん?」
「さつきちゃん」

 ジャイさんが観たがっていたのは、なんと『隣のトトロ』だった。ジャイさんとトトロがうまく私の中で一致しない。
 頭の中で見事にジャイアンとトトロがコラボしてしまい、ジャイアンがあの美声で歌を歌い、トトロがオカリナ吹いてる図が頭の中でエンドレスに流れている。

「凛香ちゃんはわかってないなあ。トトロは永遠の憧れだって」

 どんな憧れだよ。

「ああいう田舎で家族で暮らしてさあ、秘密基地作って、子供にしか見えない幻を見て。すんげー憧れる」

 もしかして、ジャイさんて家庭の温かさに飢えてる? だから、ああいう家族の幸せな姿に憧れちゃうのかな。

「ジャイさん、大丈夫だよ。幸せな家庭をジャイさんなら築けるよ。ジャイさん軽い性格っぽいけどいいパパになりそうだもん」

 つい慰めてしまったら、ジャイさんはぽかんとしながらも「ありがとう」と笑ってくれた。

「でも聞き捨てならないなあ。軽い性格っぽいってなんだよ。俺は重い性格だぞ」
「それはそれで嫌だけど」
「じゃあ重軽い性格」

 重いんだか軽いんだかわからん。
 ジャイさんが用意してくれたお茶をすすりながら、トトロを観る。
 時折、ジャイさんをチラ見するけど、ジャイさんは私のことなんか気にも留めてないのか、テレビの画面を食い入って見つめている。なんか、子供みたい。

「ジャイさんちって、どういうご家庭?」

 CM中に聞いたら、「え? オヤジとオカンと兄貴がいる、一般家庭」と普通の回答が返って来た。

「家族仲はいいの?」
「普通だよ。凛香ちゃんは?」
「私? うちは両親と弟のいる、一般家庭だよ」
「仲良し?」
「普通じゃない? 弟はからかって遊んでる」

 今頃、うちの弟はくしゃみでもかましてるんじゃないだろうか。

「家族と仲良くやれてる子って、いいよな」
「なんで?」
「結婚したら、自分の親とも仲良くやってくれそうじゃん」
「ジャイさんって、結婚も考えてるの?」
「ある程度はね」

 結婚の二文字が出てくるには、早くはない年齢だろう。ジャイさんは二十七で、私は二十六だ。周りの友達ももう何人かは結婚してるし、子供がいる子もいる。
 でも、私自身の心が、まだ『結婚』をリアルに考えていないから、こうやって『結婚をそれなりに考えている人』が間近に現れると、びっくりしてしまう。
 もうそんな歳なんだ。でも、そりゃそうだよね。もう二十代後半だもん。でも早くない? そういう考えがグルグル回る。

「凛香ちゃんは、結婚とか考えてないの?」
「あんまり……。彼氏もいないし」
「だから、俺のこと彼氏にすればいいじゃん。俺、真面目だよ」

 真面目な男は、軽くそんなことを言わないっつうの。真面目じゃないの、確定。

「嫌だわー。ものすげー疑ってる目をしてるわー」

 オカマ口調で言いながら、私の前で手を振ってくる。
 そりゃ疑いますって。

「男の人はすぐ嘘をつきますから」
「断言かよ」
「断言だよ」

 誠実そうで真面目そうなやっくんでさえ、ケロリと嘘をついたのだ。
 男なんて生き物を信用しちゃいけません。今日から佐村家の家訓に加えよう。

「俺が嘘つきかどうかは、凛香ちゃんが見極めればいいよ」
「なにそれ、自信ありげ」
「で、今日はどうするの?」
「何が?」

 白い壁に飾られたシンプルな丸いシルバーの壁掛け時計を指差され、はっとする。
 いつの間にかトトロは終わっていて、二十三時を回っている。

「帰る?」
「そりゃ……」
「泊まる?」

 帰るって言おうとしたのに、言葉を遮られた。

「言ったよね? 選択権は凛香ちゃんにあるって。俺は止めないし、何も言わない」

 って言ってますけど、腕をがっつりつかまれてます。
 帰るなって、手が言ってますよ。目は口ほどにものを言うって言いますが、今現在、手が口ほどにものを言ってます。

「な、な、な、」

 どどどどどどどどどどうすればいいですか? 神様仏様、凛香はどうすべきだと思いますか?
 今、ものすっごいかよわい子羊の気分。狼に食べられるっ! メー!
 トトロに出て来るばあちゃんが、「めーいちゃーん」と頭の中で騒ぎ出した。メーはメーでもそのメイじゃないっ。
 これが大混乱ってやつですね!

「もう少し、一緒にいよう」

 どかーーっん、頭が爆発する音がした気がした。ばあちゃんは頭の中でメイちゃんの靴を見つけて泣き叫んでます。ばあちゃん、それ、メイちゃんの靴じゃないから、大丈夫だから。

「な、な、なにも、しない?」
「なにもって?」
「……えっちなこと」
「しないよ」
「何もしないって言う男の人は信用しちゃいけないって、メイちゃんが言ってた」

 メイちゃんはそんなこと言うわけがない。もう脳みそ、破裂した。

「凛香ちゃんは俺のこと、信用してないの?」
「し、し、してますっ! めちゃくちゃ信用してます! 何もしないっすよね! 知ってますよ! ジャイさんは、紳士っすもん! 何もしないっすよねええ!」
「なんで、下っ端ヤンキー口調なの?」
「いや、私なんて下っ端っすもん。下っ端に手を出す総長なんているわけないっすもん!」
「俺、総長?」
「総長っす。うすっ! どこまでもついていきやすっ」

 メイちゃんとばあちゃんと総長とヤンキーが頭の中で踊り狂う。
 もうどうしたらいいのかわからない。
 なるようになればいいんだ。

 いいじゃないか。ジャイさん品定め作戦、決行だ!

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あとがき↓
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なのに拍手やコメントをいただけてうれしい限りです(涙)

トトロも好きだけど、ラピュタも好きです。飛行石がしぬほどほしい。
あのちーへいせーん♪


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【2009/11/25 02:05】 | Deep Forest(恋愛)
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