きよこの書き散らかし小説。
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Fly high, High sky

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第4話 ミノムシの思い出

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 国道6号に向かって、車を走らせる。
 6号はそう遠くないから、すぐにたどり着くだろう。渋滞を避けて裏道の県道に入り、細い道をくねくねと曲がる。
 美月はせんべいをぼりぼりとかじりながら、道路地図を睨んでいた。

「次のサイコロが357になったらディズニーランドのほうに行けるよー」

 浮かれたことを言っているが、美月の言うサイコロ方式では、357号の数字は出なくないか? 選択肢は1~16しかないじゃないか。今更気付いた。
 そう教えてやると、美月は「しまった!」と口を大きくあけて、しばらく道路地図を睨み続けていた。

「美月ってさあ、突拍子もないこと思いつくくせに、絶対爪が甘いよね」
「うるさい!」
「思い出しちゃった。小学生の時のこと」

 美月と同じクラスになったのは、小学一、二年と、五、六年しかない。中学も高校も一緒だったけど、ずっとクラスは別だった。
 だから、昔の思い出をふと思い出すとき、まっさきに思い浮かぶのは小学生の頃のことだった。

 あれは確か、二年生の時だったと思う。
 美月が突然、秘密基地を作り出すと言い出した。
 美月の家は小学校のすぐ近くで、小学校と美月の家のちょうど真ん中辺りに小さな裏山があった。そこに秘密基地を作ると言って、小さなシャベルとハサミを持って出かけたのだ。

 雑木林の木を切って、テントみたいにするとはりきっていたけれど、小学生用の小さなハサミでは小枝くらいしか切ることが出来ず、美月はミノムシの住処みたいな小枝の塊を作って、早々と諦めた。
 美月に無理やり連れ出された私は、美月の「ひみつきちをつくるんだよ! そこにロボットのはっしんそうちをとりつけて、うらやまがばかーって割れて、だんだだんだだん! はっしゃーーー!」という訳のわからない言葉にそそのかされ、ルンルン気分で穴を掘っていた。

「かずみちゃん、もぐらの穴でも作ってんの?」

 私が掘った穴を見た美月は、爆笑して馬鹿にしてきた。夢見がちな乙女だった私の乙女部分をことごとく破壊する女、それが美月だ。
 一方の美月が作り上げたのは、ミノムシの巣みたいな枝の山だ。諦めるにしてももう少し頑張ってほしいところじゃないか。

「みのむし……!!」

 思い出し笑いが止まらなくて、唇が震えてしまう。
 美月に馬鹿にされたのがむかついてしょうがなかったのに、美月のミノムシの巣を見たら、どっちもどっち状態で、笑い転げるしかなかった。
 あの頃から美月は、しょうもないことに熱心になるくせに自分のおバカさで失敗する、間抜けな子だったのだ。

「ちょっとお。ミノムシのこと、思い出して笑うのやめてよねえ」
「だって、あれは無いよ。ミノムシの秘密基地作ってやったのかよって話じゃん。あー、バカだったよねー」
「ミノムシは喜んでたよ、絶対!」

 喜ぶわけないっつの。

「サイコロのルールの話だけどさあ」

 昔のバカ話を思い出して、話が逸れるところだった。サイコロのルールを変更しなくては、国道1~16号しか行けないで終わってしまう。

「1が出たら一桁、2が出たら二桁、3が出たら三桁で、サイコロ振ればよくない?」

 名案が浮かんで提案するが、美月はよくわかってない様子で首をかしげる。

「だから、最初に一回振って1の目が出たら、次にサイコロ振った数字の国道に行くの。2が出たら、サイコロを二回振って、一回目と二回目の目を組み合わせた国道、3が出たら、三回振って……ってかんじでさ」
「和実、頭いーいー!」

 美月の褒め言葉は軽い。全然褒められた気がしないのは、気のせいじゃないと思う。

「最初に振った時に4から6が出たらどうすんの?」

 美月にしては珍しく、問題点に気付いたようだ。

「振りなおせばいいんじゃない?」
「和実、あったまいーいー!」

 ……褒められた気がしないのは、気のせいじゃない。


 ***

 6号に近付いたころ、またサイコロを振った。出た目は最初が2、つまり、二桁の国道に向かうことが決まった。
 次が5、その次が1。で、51号に向かうことに。
 道路地図をなぞっていた美月から歓声が上がる。

「海だよー! 和実、海沿い!」

 はしゃぐ美月は道案内をやめてしまったから、仕方なく私は路肩に車を止めて、美月から道路地図を奪った。
 私の車はカーナビが無い。こうやって道路地図をなぞりながら行き先を決めなければいけないのだ。

「ほんとだ。茨城の海沿いの道路だね」
「和実、水着持って来た!? 私、持って来てるー!」

 持って来てるわけがない。
 車の窓から差し込んでくる強い日差しを仰ぐ。ギラギラと照りつく夏の太陽はバックミラーに反射して、目の端できらめく。
 時計を見ると、十二時過ぎ。
 昼時の時間だ。今から51号を目指すとなると、着くのは二時か三時くらいだろう。
 となると、海に入るには少し潮風が強く冷たくなってきついかもしれない。

「ま、ルールはルールだしね。行きますか」

 腰をさすりながら一息入れて、方向指示器を右に動かす。
 コンビニで買ったおにぎりのビニール包装をはずし、口に放り込んだ。
 美月はポテトチップスの袋を開けながら、「海、海」と変な歌を口ずさんでいる。

「海についたら、ラーメン食べよう」

 ばりぼりポテトチップスを食べてるくせに、まだ食べ物のこと考えてるのか。
 でも、海の家っていったら、ラーメンだよね。

「いいね、海の家のラーメン!」

 美月は馬鹿な子だけど。
 だからこそ、ちっぽけなことが楽しくなる。ラーメンごときが死ぬほど楽しみになるのだから、美月のハイテンションは侮れない。

 太陽の光が、ハンドルを握った右手を焼く。熱を帯びる右半身にだけタオルをかけて、車の流れの中に入っていった。

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【2009/11/09 03:20】 | Fly high, High sky(青春コメディ)
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