きよこの書き散らかし小説。
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Deep Forest

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第28話 俺んち、来る?

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 俺んち来る? ってあんた。
 思春期のお子ちゃまじゃないんだから、俺んち行ってのほほんとお茶だけして終わるわけがないってことくらいわかってる。○○○や××××や△△△△△△は当然するでしょうよ!
 ていうか、そうだよ。シラフでセックスしようぜ! って言い出したのは私じゃないですか。
 お父さんお母さん、本当にごめんなさい。凛香は「カーンチ! セックスしよ!」のセリフで有名な某ドラマの悪影響を受けました。観たことないけど、あのドラマ。

「か、か、か、こ、こ、こ」
「にわとりのまね?」
「ちいがわ!」

 違うわ! って言ったつもりが、もう日本語しゃべれてない。だって、だって。ちゃんと考えなきゃ。
 このままついていったら、なし崩し的にやることになるだろう。夕飯食べた時はお酒飲まなかったから、今現在、思いっきりシラフだし。
 でも、それを望んでるんじゃないの? ジャイさんの気持ちを試したいんじゃない。
 ジャイさんが本気なのかどうか……知りたいんじゃないの?

「ジャイ、さんは、どう、してほしい……?」

 たどたどしい声で質問をして、ジャイさんを見上げる。ふわふわの髪が風で揺れている。その下の目は月明かりを浴びて、白く光を湛えていた。

「一緒にいたいな、もう少し」

 握った手の平にきゅっと力が入ったのがわかった。注がれる視線が恥ずかしい。
 急激に熱くなる頬を冷たい海風がなでていった。

「……うん」

 ついついうなずいてしまった。だって、ジャイさんの顔は、子犬が飼い主に「置いて行かないでえ!」って言いたげな表情を作るのとそっくりなんだもん。
 ムツゴロウさんの物真似しながら「一緒にいるう!」って叫びたくもなる。
 すっかり平常心は吹っ飛んでしまった。
 もう、もうなるようになれだ。私だっていい大人だ。突発的なセックスを後悔するような乙女心は、もうどっかに忘れてきてしまった。……たぶん。
 歩き出したジャイさんの手に引っ張られて、電車に乗り込む。ジャイさんのアパートはここから三十分ほどらしい。
 電車に揺られながら、隣に座るジャイさんの顔をのぞきこむ。「なに?」と目で問いかけてくるジャイさんを直視できなくて、すぐに視線をずらした。
 つないだ手はそのまま。この手をいつ離してくれるんだろう。

「そういえば、部屋、掃除してないな」
「汚い?」
「散らかしてはいないと思うけど。汚かったらごめん」
「別に、平気」
「布団は干してあるよ」
「やだ、なに言ってんの」

 なんなんだ、この付き合いたてのカップルみたいな会話は。
 初めてのお泊りでどきどき☆ウフフ☆な、初々しいまでのできたてほやほやカップルの会話っぽい。そんで、ついついそういう会話にわざとしてしまう自分が情けない。女ってもんは怖いもので、どうしても演技してしまうんだよ。
 舞台に立てば女優魂に火がつくように、今の私は、今の現実に酔いしれてはまりこんでいる。酒は飲んでいないのに、飲んだ時みたいに心が浮かれてる。なのに、浮かれて飛び跳ねる心臓の裏で、冷静な自分もしっかりいて、叱責を繰り返している。

 なに、バカなことしてるんだ。セックスして何になる? ジャイさんへの気持ちが固まるとでも思ってる? やっくんを忘れられるとでも思ってる?

 ――違う。
 ひっかかっているのは、もっと別のことだ。
 もっと、自分自身の気持ちと向き合わなければいけない。今の私は、風船のようにふわふわと飛んで、地に足がついていないだけのバカな女だ。
 きちんと考えなければいけないことから、目をそらしてる。
 怯えていることから、目をそらしているだけだ。

 ***

 ジャイさんの家は、駅から徒歩五分ほどのアパートだった。見た目はマンションに近く、レンガっぽい造りの外観はなかなかおしゃれだ。二階の一番端の部屋がジャイさんの部屋で、階段のすぐそばの部屋に案内された。
 廊下の右にトイレと風呂、左に小さなキッチンという一般的な1DKで、部屋はたぶん六畳か七畳くらいだろう。グレーを基調にしているのか、ベッドカバーもカーテンもグレーだった。散らかっていると言っていたけど、元から部屋にあまり物を置いていないからなのか、散らかっている印象はない。テーブルの上に置かれた灰皿にこんもりと吸殻が溜まっているのと、今朝脱いだままらしいスエットが床に落ちているのが気になるくらいだ。

「そこ、座って。お茶用意する。ウーロン茶でいい?」
「うん」

 指差されたテーブルの前に座る。ガラステーブルは煙草の灰が落ちていて、うっすらと汚れていた。

「ようこそ、我が城へ」
「大魔王がいる」
「凛香ちゃんは勇者?」
「ある意味、勇気はあるかもね」

 台拭きでささっとテーブルを拭いて、ウーロン茶を差し出してくれる。受け取って、すぐにゴクリと飲み込んだ。
 火照った体には、冷たいウーロン茶が心地いい。

「海浜公園、なかなかよかったな」
「うん」

 左横のベッドに寄りかかりながら、ジャイさんもテーブルに座る。家にいるからなのか、すっかり寛いだ様子で、足を大の字に広げて大あくびをしてる。
 なんか、左半身だけ緊張で体が固くなってきた。今、九時ちょい前。私の終電がたぶん0時少し前くらいだろうから、あと三時間。
 私は一体ここで何をすればいいんですか? 世間話ですか? 恋バナですか? それとも。

「テレビでも観る? 観たい映画やってるんだよね」
「いいねいいね!」

 神様ありがとう! これで二時間はつぶれました!

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【2009/11/09 01:28】 | Deep Forest(恋愛)
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