きよこの書き散らかし小説。
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Fly high, High sky

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第15話 私たちの距離

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 福島県から南下し、千葉県を目指す。
 途中途中でコンビニに立ち寄り、その度に私はしびれた足と腰を伸ばした。
 さすがに三日連続の運転は疲れた。そろそろこの旅も終わりにしたいと言ったら、美月は怒るだろうか。
 本日五件目のコンビニに寄る頃には、すっかり日も暮れ始めていた。
 田舎道のコンビニは、隣にある林からの蝉の声が絶えず聞こえ、アスファルトから立ち上る熱気のせいか蜃気楼のように思えた。
 自分勝手な美月は、運転手そっちのけでまたもや爆睡している。
 天使のような寝顔をひょっとこみたいな顔になるまでつねってやりたい衝動を抑えて、コンビニに入った。
 冷房の効いた店内に入ったら、暑さに慣れてきていた体をいっせいに鳥肌が覆いつくす。
 腕をさすりながら、せわしなく動いている店員のおばちゃんに声をかけた。

「この辺にビジネスホテルってあります?」

 なんか仕事をしている最中に話しかけられたからだろう。ものすごいめんどくさそうな顔をされてしまったが、おばちゃんは「もう少し行ったら、名前は忘れたけど安いホテルありますよ」と指をさして教えてくれた。
 お礼のつもりでアイスとガムを買って、コンビニを出る。途端に蝉の声が雨みたいに降り注ぐ。

 いつの間に起きたのか、美月が車から出て、ぼんやりと夕焼けを眺めていた。

「眠り姫、お目覚めですか」
「王子様がなかなか現れないから、自分で起きました」
「まあ、哀れ」

 助手席側で車にもたれかかる美月に、運転席側からアイスを手渡すと「わああ! ありがとう!」と大歓声を上げてアイスにかぶりつく。

「綺麗だね」

 光を陽炎みたいに漂わせ、少しずつ暮れていく太陽は、美月の白い肌をオレンジに染めていた。

「私、夏の夕暮れって好きだなあ」

 感慨深げにつぶやく。私もうんうんと深くうなずいた。

「夏は夕暮れだっけ? あ、夏は夜か」

 昔、教科書で読んだ何かの言葉を思い出した。春はあけぼの……なんとかかんとか。

「春はあけぼの、夏は夜、秋は夕暮れ、冬はつとめて、ってやつでしょ? 清少納言の枕草子だよ」
「美月、よく覚えてたね」

 当然でしょ、とつんとすまして見せる美月をわざと鼻で笑ってやる。

「夏は月夜もいいし、蛍もいいよね、雨が降っても赴きあるじゃん。っていう内容だよ。私も好きだなあ。清少納言、いいこと言うよ。夏の涼しい夜風に風鈴が鳴ってさ、まんまるの月が白く輝いてるの。蛍が星みたいに夜空を舞って。雨の名残みたいな湿気の匂いもたまらんたまらん」

 美月が言うと、清少納言の赴きある言葉も台無しに軽くなる。

「そろそろ行こっか。早く休みたいでしょ」

 美月に促され、車に乗り込む。
 夕暮れの光は車の中もオレンジ色に染めていた。


 ***

 古びたビジネスホテルのツインルームにチェックイン出来た私たちは、すぐに思い思いに寛ぎだした。
 ゴハンはいつも通りコンビニ弁当で済ませ、たらふくになったところで、私はすぐに風呂に入った。
 髪を乾かし、ベッドに潜る。
 美月は風呂に入らずに寝巻きに着替え、お菓子を抱えてテレビに見入っている。
 連日の運転ですっかり疲れている私は、布団に入った時点ですでに半分眠りそうになっていたが、テレビの音が気になって、なかなか寝付けない。

 美月に「そろそろ寝ようよ」と声をかけたら、素直にベッドに倒れこんだ。
 歯磨きは? と言おうと思ったけど、めんどくさいから言わないことにした。
 美月が布団にちゃんと入ったのを見届けて、部屋のライトを消す。
 窓のカーテンの隙間から零れ落ちるネオンの光が、薄闇の中でレース模様を描いていた。

「そういえば、美月はなんでこんな旅行思いついたの?」

 憂さ晴らしなら、別にこんなあっちに行ったりこっちに行ったりするようなしちめんどくさい旅をしなくてもよかったはずだ。海なり山なり、楽しめるスポットなんて山ほどある。

「えー。桃源郷探しだってばあ」
「はいはい。それはわかったから」

 美月の妄言には付き合いきれん。

「んー……なんて言うかなあ。私たち、今、いろんなことを決めなきゃいけない時期じゃん?」

 二十二歳。ストレートに大学に行った子なら、社会に出る歳だ。
 私たちは人生の大きな節目にいる。どこの会社に行くのか、どんな仕事をするのか、どうやって社会と関わるのか……。
 今決めた道によっては、仕事に生きることをこの先選ぶかもしれないし、腰かけOLになって結婚することになるのかもしれない。
 今はまだはっきりと見えないけれど、たぶん、大切な選択をしようとしているのだと思う。

「人生のおっきな岐路にいるんだよね。すごく大事なところにいる気がするんだ」

 うなずく。もしかしたら、私たちは、人生を左右する分かれ道の前に立たされているのかもしれない。
 その自覚はとてつもなく薄いけれど。

「だから……よけいにさ。今だから出来ることをしたいんだよね。こうやって意味もなんもないことが出来るのも、まだ子供で通じる今だけなんじゃないかって思うし」

 二十歳を越えれば大人の仲間入りだ。でも、学生という身分は、自分を子供のままでいさせてくれる。はめをはずしても許される甘えたポジションに、私たちは安住している。

「それにね、和実と二人で遊べるのも、これが最期な気がしてさ」
「何言ってんの」
「だって……大学入ってから、私たち、距離が出来たじゃん。なんとなく、こうやって疎遠になってくんだろうなって思ってたんだよ」

 美月と離れたくて、私はわざと美月と遊ばないようにした。
 そうしなければ、美月が嫌いになるって、自覚していたから。
 嫌だった。美月を嫌いになることが。だから、距離を置いて、嫌いにならないポジションを保ちたかった。

「きっとこのまま離れて、それこそ同窓会とかで会って『和実じゃーん、久しぶりー! 十年ぶりだよねー!』なんて言い合うようになるんだろうなって」

 小学生からずっと隣を歩いてきた。
 それが当たり前だった。
 だから、その当たり前を苦痛に感じ始めたことが、怖かった。
 離れていく距離を実感していたのは、何も私だけじゃなかったんだ。美月だって、気付いていた。
 私たちは、いつの間にか、お互いがお互いの距離を遠ざけたくて、それが怖くて近付きたくて、二人の間に出来た大きな溝に気付かないふりをし続けていた。本当はもう、とっくの昔に知っていたのに。

 もうきっと一緒にはいられない。
 亀裂は少しずつ広がる。

「ずっと子供でいられたらいいのにね。大人になんてなりたくないよ」
「そんなの、無理だよ」

 環境や友達を変えながら、どんどん大人になる。それは絶対に抗えない。

 天井に向かって伸ばされた美月の細い手が、薄闇に白く浮かびあがる。
 今頃気付いたけど、美月、やつれたんじゃないだろうか。
 細すぎる腕をつかんで「ちゃんとゴハン食べてんの?」と説教したくなったけど、ぐっとこらえた。

「もっと大人になったら、もっともっと私たち、離れていくよね。和実が中学生の時に言ってたみたいに。私たち、ずっと一緒にいられない」

 時間を止めてしまいたくなるんだよ。美月は呟いて、体をひねらせた。
 張りのあるシーツのすれる音が響く。

「ねえ、和実は中学生の時に言ったこと、まだそう思ってる? ずっと一緒にいることが、ずっと味方でいることが友達じゃないって、言ったじゃん? 今でもそう思ってる?」

 うん、小さくうなずいた。

 その考えは変わってない。
 ずっと一緒にいなくたって、味方だって言えなくなっても、それでも、私たち友達でしょ? そう言い合えるようになりたい。
 誰かに寄りかかるんじゃなく、自分の足で立つことが、美月には必要だと思うから。

「和実、私ね」

 美月の消え入りそうな声が、なんだか切なくて、私はぎゅっと目をつぶって、シーツに顔をうずめた。

「だめなんだ。何もなくなった気がして、自分が空っぽになった気がして。駿介と別れてから、もう、何も、見えなくなっちゃった」

 冷房の機械音が耳障りだった。
 美月のか細い声を聞き取ろうと、耳に神経を集中させるのに、妙な悪寒がして、意識が分散してしまいそうになる。

「怖い。怖いんだよ。独りでいることが怖いの。私、今、大切な時期にいるってわかってるのに、目指したいものが何も無くて、何をしたらいいのかわからないの……。皆、離れてくだけで、そばにいてくれない。全部、通り過ぎてくだけなんだよ。友達も彼氏も」

「美月、なに馬鹿なこと言ってんの」

 ばっと体を起こし、美月がいるはずのベッドを睨む。

「美月?」

 けれど、そこに、美月の姿は無かった。

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【2009/12/01 03:57】 | Fly high, High sky(青春コメディ)
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第16話 美月の行方

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「え……なんで」

 ついさっきまで美月はそこにいた。なのに、隣のベッドには美月の姿は無い。
 トイレに行った気配も、どこかに隠れるような動きも、何も無かった。
 本当に忽然と、美月はいなくなったのだ。
 事態が把握できず、冷や汗だけがどっと溢れ出る。
 乱れたシーツに触れる。ひやりと冷たい。寝ていたはずの美月の温もりはどこにも無い。

「え、と。み、美月? どこ?」

 声を出し、返事を待つ。冷房の作動音だけしか聞こえない。
 溢れ出す汗をぬぐい、ベッドから這い出る。美月はいたずらが好きだ。あせる私を、どこからか見ていて笑っているに違いない。

「もう! つまんないよ、こういうの!」

 半笑いで怒鳴りながら、ユニットバスのドアを開けた。暗闇が漂うだけで、人の気配すらない。トイレの横にある風呂桶の中も覗き込む。覗き込まなくても丸見えだったからそこに何も無いのはわかっていたけど、確かめずにはいられなかったのだ。

「美月?」

 剥き出しの肌が冷房の風によって鳥肌に覆われる。両手で二の腕をさすり、部屋を振り返る。しんと静まり返った室内には、私以外の人の気配はどこにも無く、闇だけが存在していた。
 体がのしりと重くなる。氷の粒で体中を覆われたみたいに、冷気が私を食らいつくそうとする。

 なんなんだ。なんなんだ、これは。

 まるで、美月なんて最初からいなかったみたいな、この雰囲気は、一体なに?
 美月の荷物は鏡台の隅に置いてある。美月が寝ていた形跡のあるベッドだって、美月の存在を主張する。ぽかりと美月の姿だけを抉り取ったみたいに、最初から無かったことにされたみたいに、美月の存在だけが消えうせていた。

「嘘でしょ……」

 フロントに電話をかける。美月はこっそりと部屋を出て行ったんだ。きっと、風に当たりに、外に出たんだ。
 フロントの男性が電話に出たから、私は女の子が出て行かなかったか、その辺に女の子はいないか、怒鳴るように聞いた。
 私の勢いに戸惑っている様子で、男は「誰も通っていないし、女の子もいません」と声を上ずらせた。
 どうせ、寝ぼけて周りをちゃんと見てなかったんだろう。ビジネスホテルのフロントなんて、きっと使えないやつが多いんだ、そう言い聞かせて、部屋から飛び出る。
 エレベーターを降り、フロントに駆け寄ると、電話で聞いたことと同じことを聞いた。電話に出た男と、フロントにいるこの男は同じやつだろう。
 しどろもどろに「先ほどの方ですよね? 電話でお話したとおり、ここを通った人はいません」と答えるだけだった。

「でも、いなくなっちゃったんです。どこかにいると思うんですけど」

 食い下がる。だって、おかしい。こんなことあるはずない。ほんの数分前まで一緒にいた子が、突然姿をくらますなんて、ありえない。

「ちょっと、待って下さい」

 フロントの男は、困惑した様子のまま、奥の部屋に行ってしまった。仕方なく、私はガラス製のドアごしに外を眺め、美月らしき人がいないか探してみる。
 入口が裏通りにあるためか、人通りは一切無い。街灯の白い光に虫が群がっているのが、影になって見えた。

「あのう」

 さっきのフロントの男とは別の、整った身なりの女の人が眉間に皺を寄せながらも作り笑いを浮かべて話しかけてきた。

「お連れ様がいなくなったとお伺いしたんですが……」

 この人、チェックインした時にフロントにいた女の人だ。だったら、美月のことを見たはず。
 なんとなく安心して、短く息を吐いた。

「あの、私と一緒にいた女の子……目がくりっとしてて、長い黒髪が綺麗な子、覚えてますか? あの子がいなくなっちゃって」
「え? あの……チェックインされた時に一緒にいた方ってことですよね?」
「そうです。私の後ろにいた……」
「私は、お客様お一人しか姿を拝見しておりません。お友達は、どこにいらしたんですか?」

 息が吸えなくなりそうになり、ゴホ、と咳をした。
 チェックインした時、宿帳に名前を記入して……その時、美月は私のすぐ後ろで、「和実って、なにげに字綺麗だよねー」なんて茶々を入れてきた。

「私のすぐ後ろにいました」

 すがるような思いで、言った。声がわずかに震えた。

「思い違いを……されていませんか? お客様しかいらっしゃいませんでしたよ? お二人でのお泊りだとおっしゃっていたのに、もう一方の姿が見えなかったのでよく覚えてます。お友達、いなくなってしまったんですか? 私たちもお探ししますが」
「あ、いえ……大丈夫。すいません」

 頭の中が真っ白だ。
 どういうこと? 美月がいなかった? そんなバカな。つい数時間前のことを思い違いするなんて、ありえない。
 美月はすぐ横にいた。ずっといた。

 頭を下げ、すごすごとエレベーターの前に戻る。上のボタンを押し、エレベーターが来るのを待つ間、もう一度、玄関を見た。

 神隠し? 人が突然いなくなるなんて、神隠しってやつしか思い浮かばない。
 一瞬のまどろみの中で私は、現実とそっくりそのままの異世界にワープしてしまったんじゃないだろうか。
 こんな馬鹿げたことがあってたまるか。

 ようやく一階まで降りてきたエレベーターに飛び乗り、自分の部屋に戻る。美月が戻ってきてるんじゃないかと一縷の望みを抱いて部屋のドアを開けたが、やはり、そこには夜の闇しかなかった。

「なんで? どういう、こと?」

 わけがわからない。乾いた喉に無理やり唾を流し込み、電源を切っていたケータイをつかむ。
 わなわなと震える指に「ちゃんと動け!」と活をいれ、電話をかけた。

 誰か。助けて。
 なにが起こっているのか、教えてほしい。

『もしもし』

 電話に出た懐かしいテノールの声は、混乱した頭にじんわりと染み入る。溢れ出る涙をこらえきれず、嗚咽をこぼした。

「知己……!」

 電話の向こうの知己が、よそよそしく冷たい空気を孕んでいた。でも、私は気付かないふりをした。
 なぜ知己を頼ってしまったのか、冷水を浴びせられたかのように、一気に冷静になってしまった。

『なに?』

 別れたのに、今更なんだよ? そう言ってきそうな感情の無い声が怖かった。

「ご、めん。美月が……いなくなっちゃって。あせっちゃっただけ……」

 すぐに切ろうと、ケータイを耳から話そうとした時、知己の声に温かみが戻ったのがわかった。
「どうしたんだよ?」と心配そうに問いかけてきてくれたのだ。

「美月と、一緒に旅行に、来てる、んだけど、美月が、突然いな、いなくなっちゃって。どこに行ったか、わからないの」

 横隔膜が痙攣して、うまくしゃべれない。

『なに? はぐれたの?』

 はぐれたのとは違う。だって、美月は消えたのだ。マジックショーみたいに、一瞬で消えてしまった。

『美月ちゃんのケータイに電話かけて出ないなら、美月ちゃんの親か自分の親に電話して聞いてみろ。もしかしたら、先に帰ったのかもしれないし、連絡が来てるかもしれない』
「うん」
『電話、出来るか?』
「うん、平気」
『電話かけたら、俺に連絡しろ。和実はテンパるとなにしていいかわからなくなるだろ。俺に聞けばいいから。いいか? 美月ちゃんと親に電話かけるんだぞ』
「うん」

 鼻水をすすりあげ、電話を切る。
 美月の携帯電話に電話をかける。何回かのコール音のあと、留守電に切り替わってしまった。

 これはきっと、夢だ。
 連日の運転で疲れきった体が、脳みそが。私に悪夢を見させているのだ。

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【2009/12/05 03:48】 | Fly high, High sky(青春コメディ)
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第17話 逃げていた

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「お母さん?」

 実家に電話をかけると、母親が出てくれた。旅行から帰ってきたの? 遅い時間ねえ、と眠そうに答える母にすがる気持ちで先ほどまでの出来事を話した。

『……美月ちゃんのおうちに電話してみるから、あんたはそこで待ってなさい。美月ちゃんのおうちの電話番号は変わってないわよね?』

 うなずいて、電話を切る。
 ケータイを握りしめ、お母さんからの電話を待つ。美月の実家の番号は、ケータイに登録していない。自分で事態を把握できないもどかしさで、胃がむかむかする。
 吐きそうになり、トイレに駆け込む。
 だけど、胃液が喉まであがってくるだけで吐くまでには至らず、私を楽にしてくれない。

 トイレから戻り、ベッドに倒れたところで、ケータイが鳴った。出ると、開口一番『美月ちゃんと旅行に行ったのって、本当なの!?』と母が怒鳴ってきた。

「なに、どういうこと? 嘘ついてどうすんの? こんなことで嘘なんかつかない」

 反論する。しばらくの沈黙の後、母はため息をついた。

『……美月ちゃんとあんたが一緒にいるわけ、ないのよ?』
「は?」
『本当は男の人と一緒なんじゃないの? たちが悪い嘘はやめてちょうだい』
「たちが悪いって、どういう意味」

 疑われることが癪に障る。美月が行方不明だなんて嘘、それこそたちが悪い。そんな嘘つくわけないじゃないか。信用してくれない母親が、むかついてしょうがない。

『美月ちゃん、自殺したって』
「え、なに? なに? なんて言ったの、今』
『美月ちゃん、自殺したんですって。和実、あんた、なんで嘘をつくのよ……!』

 言葉の意味が捉えられず、口を動かすことしか出来ない。
 今、お母さんはなんて言った? じさつ。じさつと言った。
 何言ってるんだ。お母さんのほうがよっぽどたちの悪い嘘をついてる。失笑してしまう。

「お母さんこそ、嘘やめてよ。美月はさっきまで一緒にいたんだよ? なのに自殺って、何つまんない嘘ついてんだか」
『三日前に、自殺したんだそうよ。あんたと一緒にいるわけないでしょう。なんで、あんた笑ってるの? 笑えないでしょう。どういうことかわかってるの?』

 息を飲む。涙交じりの母の声は嘘をついているとは思えなかった。

「冗談やめてよ」

 笑いながら言った。だって、こんなのありえない。笑い飛ばしたくなる。

『お母さんは嘘なんてついてない。早く帰ってきなさい。早く帰ってきて、ちゃんと説明しなさい』

 馬鹿げてる、それだけ言って、電話を切った。
 私が男と旅行に行ったと思って、私を懲らしめてやろうとしているに違いない。
 そう思いたいのに、事実がすんなりと心の底に落ちていっていた。
 美月は死んでいたのだとしたら、私の横にいた美月は……何者だったというんだ。
 まさか幽霊?

 でも、もしそうだとしたら、この突然の失踪に合点がいってしまう。

「嘘に決まってる」

 大体、美月が自殺? あの能天気大魔王みたいな子が、自殺する?
 ありえない。
 ありえない?

 ありえない、わけない。あの子は、けして強い子ではない。
 ああやってバカなふりをしているのは、そうすることが一番、楽に生きれると知っているからだ。
 美月はしたたかな女だ。人に疎まれることが多く敵を作りやすいからこそ、すんなりかわす術も逃げるやり方もわかってる。
 だけど。
 不器用な子だ。
 楽に生きるための手段を知っていても、心はついていかない。

 小さなことに傷つき、周りに嫌われることを恐れ、だから、何もわかっていない顔をして、自分の心の傷に気付いていないふりをしてきただけだ。

 私はそれをわかっていたから、逃げたんだ。
 誰かの支えを必要とする美月に、寄りかかられることを恐れた。
 私はあんただけの私じゃない、私には私の道がある。美月の介入で、自分が傷つきたくなくて、逃げたのだ。
 美月のそばにいればいるほど、自分の醜い部分を垣間見た。
 女特有の嫉妬心や、薄汚い陰険な気持ち。
 見たくもない自分の一面を、露にされる。
 それは美月が近くにいると実感するほど大きくなるから、逃げてしまった。

 美月は馬鹿だ。
 自分を支えられるのは、自分しかいない。どれだけ支えを手に入れても、それは永遠ではない。
 私も、駿介も、美月が倒れそうになったらそばにいて助けてあげることは出来る。でも、支えにはなれない。
 駿介が美月から離れたのは……きっと私と同じ気持ちになってしまったからだろう。

 立ち上がる。
 美月が自殺? 馬鹿げてる。
 確かめないといけない。自分の目で確かめなければ、私は何も信じない。

 だって、美月が死んでいて、私の隣にいたのが幽霊なんだとしたら、あのナンパしてきた男や、ラーメン屋のステテコオヤジが見たのは何だと言うんだ。
 私の横に美月はいた。それは確かなことで、絶対だ。

 ふと、思い立つ。
 あのラーメン屋のおじさんは、美月と話だってしてる。あのおじさんと話したい。
 あなたは見ましたよね? 美月と私が一緒にいたのを見ましたよね? と。




 心許なくなる自信を、取り戻したかった。
 私と美月が一緒に旅したこの三日間が夢だったと思いたくなかった。
 確かめなければいけないと、思ったのだ。

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【2009/12/05 03:52】 | Fly high, High sky(青春コメディ)
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第18話 道程

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 すぐさまチェックアウトし、車を走らせる。
 夏の深夜は冷たい夜露を含み、うっそうとした空気が濃密に充満する。少しだけ開けた窓から聞こえてくる風の裂く音をBGMに、私はアクセルをベタ踏みする。
 ラーメン屋の所在地は、はっきり覚えていない。来た道をたどりながら、何度も引き返し、それでも通ってきた道は私を導いてくれる。

 まるで人生ゲームみたいだと思った。旅の始まり、サイコロでルートを決めるやり方に、人生ゲームを連想した。
 行きたい場所もやりたいこともなく、サイコロを振り、なんとなくで決めるルート。それはまるで、私たちのこれまでの人生のようだった。
 特に将来の展望もなく、進むべき道もよくわかっていない。運任せ、風任せの人生。小学校、中学校、高校、大学……すでに用意されていた道を、何の疑問もなく歩んできた。

 だけど、いざ社会への出ようとする時、気付いてしまう。

 何のために生き、どうやって生きていきたいんだと。
 ルーレットやサイコロをどれだけ振ろうが、人生ゲームでは、道の先に起こる出来事は決められている。
 でも、違うんだ。
 何が起こるかわからない、道なき道を歩いていくのが、人生ってやつなんだ。

 私たちは私たちの人生を、私たち自身で選択し、自らの足で進んでいかなくてはならない。
 そのための覚悟と強さを、身につけなければならない。
 
 美月と並んで歩いてきた。
 ずっと一緒に進んできた。
 これから先、きっと私たちの道はどんどん離れていく。
 ずっと横にいて支えてあげられない。美月が倒れても、きっと気付いてあげられない。
 だから、何かあったら、言ってほしい。辛かったらきつかったら、何もかもが嫌になったら、言葉に出してほしい。
 けつを蹴って奮い立たせてやるし、優しい言葉でなぐさめてやる。
 私が必要な時、必要だと言ってくれれば、いつだって助けてやる。
 間違ってることをしてたら、殴って目を覚まさせてやる。

 ずっとそばにはいられないのだ。味方でいることだってできないこともある。
 それでも、私たち、友達でしょう?

 私たちはそういう風に大人になっていくんだと、思いたい。

 途中でフェードアウトするなんて、許さない。
 絶対、許さない。


 ***

 ラーメン屋にたどり着いたは、翌日の昼前だった。
 ずっと運転していたのに疲れは全く感じなかったが、車を停めラーメン屋に入ろうとした時には疲労困憊で倒れそうだった。
 ラーメン屋さんは開店していて、昼のピークタイムで人がいっぱいいた。私は店の座敷でぐったりしながら、おじさんが暇になるのを待った。
 おじさんは私のことを覚えていて、私が店に入った時、疲れきった私に気遣い、座敷で休んでろと言ってくれたのだ。
 おじさんはラーメンを手際よく作り、おじさんの奥さんなのかパートさんなのかわからないけど、おじさんと同年代の太ったパンチパーマのおばさんが忙しそうに動き回る。ぼんやりとそれを眺めていたけど、いつしか私は眠ってしまっていた。

 ふと目が覚めると、お店は閑散としていた。洗い物をする音だけが店の奥から聞こえてくる。
 立ち上がり、カウンターから台所に顔を出す。
 おじさんが気付いて、「何か食うか? ラーメンでいいか?」と聞いてきたから、私は小さな子どもみたいにいじいじしながら、うん、とうなずいた。
 座敷に戻り、テーブルに置きっぱなしになっていた水をごくごくと飲み干す。ポットが用意してあったから、すぐに注いで、またごくごくと飲んだ。
 少しして、湯気の上がったラーメンが目の前に差し出させる。
 見た瞬間に、お腹がぐうぐうと喚きだすのだから、現金なものだ。

 ラーメンを食べ終えた頃、おじさんが煙草を吸いながら、私の前に座ってきた。

「あの、すいません。突然押しかけて。しかも……休ませてもらっちゃったし」
「いや、いいんだよ。無駄に店は広いからな。夕方までは店は閉じてるし、ゆっくりしていけ」

 水を飲む。
 冷たい水が喉を通っていくのがわかった。

「美月のこと……私と一緒にいた子のことなんですけど」
「一緒じゃねえようだが、置いてきちまったのか?」
「いえ……いなくなっちゃって」
「自力で帰ったのか、保てなくなったのか、俺にはわからんな」

 保てなくなる? 意味がわからず、首をかしげる。

「あの嬢ちゃん、霊体だろう? 姿を保てなくなって、いなくなったのかもしれん」
「言ってる意味が、わからないんですけど」

 れーたい? ほーたいの間違い?

「生きてるのか死んでるのかまではわからんがな、幽霊ってやつだ。気付いてなかったんだな」
「おじさん、頭おかしいの?」

 つい本音をこぼしてしまい、慌てて口を塞ぐ。ほぼ初対面の人に、失礼すぎる。

「はは、よく言われる。俺は見える人間だから、変なもんはよく遭遇するんだよ。見えないやつからしたら、俺みたいな輩は『頭がおかしい』んだろうな」
「すいません。でも、美月は私にははっきり見えてました。幽霊じゃありません」
「あんたとあの嬢ちゃんは波長が合うから、あんたにははっきり見えたんだろ。俺にはぼやけて見えたぞ? それに、あの嬢ちゃんはあんたの前に立つためにああして霊体になったんだろうから、あんたにはっきり見えるのは当然のことだろうよ」

 すんなりと納得できるわけがない。
 そのはずなのに、私は諦めの境地に立たされたかのように、おじさんの言葉を素直に受け取っていた。

「美月は……自殺したって、聞かされました」
「そうかい。それは……辛いなあ」

 この旅の最中、美月が人と接触した姿を、私は一度も見ていない。このおじさん以外は。

 コンビニにも行かず車の中にこもり、ホテルや民宿でチェックインする時、後ろで眺めているだけだった。あのナンパしてきた男の子達も、一人は美月の姿を認めてたが、もう一人は見ていない。おそらくあの彼は、『見えていた』だけなんだろう。私と同じように。

 美月は確かに私と一緒にいた。
 でも、生身の人間では、なかった。

 
 美月は……何のために私と一緒にいようとしたのだろう。
 死んでしまったのに、私と旅に出た理由は何だったんだ。

 くり返し、くり返し。
 私たちは思い出話に花を咲かせた。

 死ぬ時、人は走馬灯のように過去を見るらしい。美月にとっての、それだろうか。

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【2009/12/05 03:55】 | Fly high, High sky(青春コメディ)
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Deep Forest

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第30話 ぎゅって抱きしめて

+++++++++++++

 一人暮らしの男の家に泊まるなんていうのは、実に一年以上ぶりになる。
 やっくんは結婚していたから家に呼んでくれるわけがないので、泊まりの時っていうのはホテルばかりだった。
 それもあまりしょっちゅうではない。仕事がハードだと聞かされていたから、会えないことに違和感を覚えることがなかったけれど、要は奥さんと一緒に暮らす家に帰らなければならないのだから、そうそう私とデートなんて出来なかったのが真相だったんだろう。
 やっくんの言うことをすべて鵜呑みにして信じきっていた私は、なんというか……本当にバカな女なんだと思う。

 シャワーを浴びながら、念入りに体を洗う。もしかしたら、を考えてしまう。
 だって、ジャイさんは私と付き合いたいと、何度も言ってきてる。そういう関係になることを望んでいるのだから、こんな千載一隅のチャンスを逃すはずない。
 私が男だったら、大喜びで今頃ベッドメイクしてるところだ。

 ――これで、いいのだろうか。
 いや、いいわけない。互いの気持ちも確認せずに、ヤることだけヤッてしまったら、あとはなし崩し的な関係になるだけだ。
 一歩間違えれば……セフレになるんだろう。
 自分が何を望んでいるのかわからない。
 ジャイさんが好きだという気持ちが、ないわけじゃない。
 でも、やっくんへの気持ちがまだ心の隅でくすぶったままで、恋愛する気力なんてどこにもいない。
 すがりついて、そばにいてと叫びたい。
 ずっと一緒にいてほしいと、ただそれだけを願う。
 その感情の向かう先は、本来ならやっくんで、やっくんがいなくなったから、その場所を埋めるみたいに私の心に入り込んできたジャイさんに気持ちが傾いている。

 つまり、ジャイさんはやっくんの代わりなのかもしれない。

「そんなのは恋じゃないよなあ……」

 つぶやいて、シャワーを止める。ひたひたと垂れる水をバスタオルでふき取り、ジャイさんから借りたスエットを着た。
 ぶかぶかの服の袖をまくりながら、洗面台に写る自分の顔を凝視する。
 化粧を落とした顔は、なんとなく疲れている。暑さで顔が火照っているからまだましだけど、明日の朝はかなりやばい顔になっていそうだ。
 廊下の奥の、ジャイさんがいる部屋を見る。
 さすがに、すっぴんを見せるのは恥ずかしい。

 化粧ポーチから携帯用のボトルに入った化粧水を取り出し、顔に叩きつける。眉毛を書き、フェイスパウダーを薄く塗ると、多少は見苦しくない顔になった。
 昔はすっぴんで歩くなんてへっちゃらだったのに、今じゃ化粧無しで過ごすなんて考えられない。

 女はこうやって化粧を覚えることで、自分の心もごまかして生きてるんじゃないか。
 化粧という鎧で顔面を覆いつくして、ついでに体中全部全部全部武装してるんじゃないか。

 ため息がとても長く吐き出される。

 何もかもが見えなくなってる。私自身の心でさえ、今は闇の中だ。


 ***

 ドアを開けると、先にお風呂に入っていたジャイさんはすでにベッドに入って寝ていた。
 がっくりと肩を落とす。
 妄想だけどさ……ベッドで両手広げて待ってるかと思った。ジャイさんだし。

「ねーえ。私はどこで寝ればいいのー?」

 なんかむかついたから、足でジャイさんのお尻を軽く蹴ってやった。壁を向いて寝ていたジャイさんは、「いてえ、けつが割れた」と目をしょぼしょぼさせながらわめく。

「けつは元から割れてるでしょうが」
「奥まで食い込んで裂けた」

 どんなけつしてんだ。

「ここに寝ればいいじゃない」

 左手で布団をつかみ、おいでとばかりに空間を空けてる。

「……同じベッド」

 ついつぶやくと、ジャイさんは不服そうに口を尖らせた。

「俺んちソファーとか無いし。他に寝具無いし。寝るならここ」

 ぽんぽんと布団を叩いてる。
 いや、でもでもでも! そこは、まずい……と思うんですよねえ。

「な、な、なにもしないよねえ」

 お風呂に入る前に聞いたことをくり返し聞く。ジャイさんはニコニコ笑ってうなずいたが、その笑顔がよけいに信用できない。

「明日会社じゃん。早く寝ようぜ」

 そうそう。明日は会社だ。早く寝ないと、寝坊しちゃう。
 って、そういう問題じゃないし!

「腕と足を紐で結わえていい?」
「SMプレイ? 俺、ちょっとそういう性癖は……」
「ち、ち、ちちちちちちがう! ジャイさんが触ってこないようにするためだっつうの!」
「俺の隣って、そこまでしないと嫌なわけ? じゃあしょうがないなあ。俺は床で寝るよ……」

 もそもそと動いて、半泣き顔でベッドから這い出てる。
 家主にそんなことさせるわけにはいかないから、大急ぎで肩をつかむと、力ずくで布団に戻してやった。

「私が床で寝るから!」

 と言った矢先、ジャイさんに腕をつかまれ、思いっきり引っ張られた。
 バランスを崩し布団に倒れこんだら、それ幸いにと、掛け布団をかけられてしまった。

「お、おぬし、やりおるな」
「なんで時代劇口調なの?」

 だってだって、こいつ、悪代官よりやり手だよ!

「さあさ、とっとと寝ましょうねえ」

 ポンポン、と私の肩を叩き、ジャイさんは目を閉じてしまった。

 あれ、寝ちゃうの?
 少し拍子抜けして、肩の力が抜けた。
 布団の端をつかみ、顔にかぶせる。
 シングルベッドはせまく、ジャイさんの肩は触れるか触れないかの距離にある。
 温もりが伝わる距離は、隣に誰かがいるって安心させてくれると同時に、心臓を高鳴らせた。

 なぜだか涙が出そうになった。
 腕枕をして、ぎゅって抱きしめてほしいと、思ってしまった。
 よけいに寂しくなるのは、過去の幸せな記憶を蘇らせるからだろうか。
 やっくんの腕枕は、心地良かった。
 一緒に眠る時、私を抱き寄せて、肩をトン、トン、と叩いてくれるあのリズムが好きだった。
 寄せられた体から伝わる、鼓動の音が愛おしかった。

 もう、やっくんに会えないんだと、かみしめていた。
 今の私を想ってくれる人が、横にいるのに。
 私は、もう二度と会うことのない人に、心を寄せていた。

 それはとても滑稽で、情けなくて……涙が勝手に溢れていた。

+++++++++++++

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拍手いただけると嬉しいです!

あとがき↓
お久しぶりですっ
11月あたりから更新がとろくなっていて、申し訳ないです(涙)
けして忙しすぎるとか体調を崩して…とかじゃないので。


エアコンがね、壊れたんですよ(涙)
なんか、リモコンが使えなくて。本体の故障なのかリモコンの故障なのかわかりませんが、修理を呼ぶにはちょっと部屋が荒れてて、人に見せられまへん(^^;
というわけで、ハロゲンヒーターのみで生きてみたら、今度はハロゲンヒーターが壊れた\(^^)/

なんか破壊光線的なものを飛ばしてるんでしょうか(涙)

そんなこんなで、パソコンいじるのも寒くて寒くて。
こんなひもじい思いをすることになろうとは・・・


ハロゲンヒーター、やけども負ってしまったので(なにしてるんだ)、やつとはおさらばすることにしました。
新たに空気清浄機能のあるヒーター買って、今はポカポカです(^^)

エアコン? あんたなんか一生使ってやらないんだからっ(なぜかツンデレ風)


家電とバトルしている間にも(苦笑)、たくさんの拍手ありがとうございました。
エアコンとの別れにもめげずに、生きていけますっ


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【2009/12/18 02:59】 | Deep Forest(恋愛)
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*1月26日に拍手からコメント下さったほたさま*

拍手&コメントありがとうございます。
あけましておめでとうございます(^^)
2010年初コメ、嬉しいです。ありがとうございます!
年末近くは更新が滞りがちだったので、今年はエンジンをかけてもう少し早いスパンで書ければと思ってます。
こちらこそよろしくお願いします。


*1月2日に拍手からコメント下さったみどりさま*
(反転してお読み下さい)

拍手&コメントありがとうございます。
そんでもって、あけましておめでとうございます!
こちらこそ今年もどうぞよろしくお願いします(^^)
一度でいいから、あんたは私に惚れるから待ってる!とか言ってみたいです。こんなのなかなか言えないですよね(笑)
今年もみどりさまをニマニマさせられるように頑張ります。
ご感想、いつもありがとうございます。励みになります!



*1月2日に拍手からコメント下さった菫様*

拍手&コメントありがとうございます。
そして、なろうから、いらっしゃいませ!
おやじ乙女!! 凛香を表すのに、こんな的確な言葉があろうとは!
これからは紹介文とか書く時は、おやじ乙女・凛香にしたいと思います笑
Deep forest というタイトルはかなりてきとーにつけたんですが(苦笑)、
意外に作品のテーマに納まってくれました。
深い森を凛香がどう抜けていくのか、見守ってくださると嬉しいです。
菫様にうんまい物語をまたご提供できるよう頑張ります。
素敵なご感想、ありがとうございました!


*12月26日にコメント下さったマミさま*

コメントありがとうございます。
2時!!次の日、お仕事中に居眠りしてしまわなかったか心配です(笑)お疲れ様でした。
クリスマスの夜に、マミさまにあったかな気持ちをお届けできたようで、本当に嬉しいです。
私もマミさまから素敵なご感想というプレゼントをいただけて、ステキなクリスマスになりました(^^)
またぜひいらしてください。
ご感想、ありがとうございました!


*12月25日にコメント下さったこゆみさま*

コメントありがとうございます。
こんな辺境にいらしてくださるとは思っておらず、感謝感謝です!
学生の頃の恋愛って、相手の気持ちがわからなくて深読みしすぎて自滅したり翻弄されたり、不器用な恋愛をする姿が微笑ましくって好きです。
またぜひ遊びに来てください。
ご訪問嬉しかったです。ありがとうございました!



*12月24日に拍手からコメント下さったほたさま*

メリークリスマスです(^^)
拍手&コメント、ありがとうございます。
ほたさまはもしかして受験生!?
ぜひ勉強の息抜きに、また読みに来てくださいね。
勉強、頑張ってください!
アラジャイグマ(笑)の活躍をご期待下さい。
ご感想、ありがとうございました。励みになります!


*12月23日に拍手からコメント下さったみどりさま*
(反転してお読み下さい)

拍手&コメント、ありがとうございます。

凛香も本当はジャイさんにしがみつきたくってしかたないんです(笑)
失恋って、気持ちが弱くなってしまうから、正しい判断も出来なくって、どんどん深みにはまってしまうというか。
タイトルの『Deep Forest』もそういう意味からきてます。
凛香自身がどういう答えを出すのか、ジャイさんが何を考えてるのか(笑)、最後までぜひ見守っていただけると嬉しいです(^^)

エアコン、壊れたんですか!!
暖房器具の使えない冬の恐ろしさ、よくわかります・・・!!
空気清浄機能付きだと夏も使えるので、かなり便利ですよー。
みどりさまもインフルエンザや風邪に気をつけてくださいね。
ご感想、ありがとうございました!



*12月5日に拍手からコメント下さったみどりさま*
(反転してお読み下さい)

拍手&コメント、ありがとうございます。
お返事が遅くなってしまって、申し訳ありません。
しかもしかも、せっかくお読みいただいたのに、更新が止まっている状態になってしまい、重ねて申し訳ないです(涙)

最初は青春コメディのつもりで書いてたんですが、どんどこシリアスになってしまいました(^^;
女の子の友情ってすごくドロドロしてることもあって、清々しい友情なんてそう多くはないと思ってます。
みどりさまがおっしゃるとおり、時にうまくいかないことがあるからこそ良いなって私も思います。
そういう、女の子同士の友情の良さを描ければいいなーなんて考えておりますので、どうぞこの先の物語を楽しんでいただけたら嬉しいです。

みどりさまにとって心に残る作品になるように頑張ります(^^)
あと数話で完結なので、どうぞ最後まで付き合ってください。
ご感想ありがとうございました。
いつもほんと嬉しいです。


【2009/12/18 03:23】 | 拍手・コメントお返事
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Deep Forest

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第31話 アラジャイグマの見解

+++++++++++++

 溢れ出した涙は止めることもできず、こっそりと鼻をすすりあげた。ばれないようにしたつもりだったけど、しんと静まり返った部屋では、その音はやけに大きく響いて、恥ずかしくなり布団の中に顔をもぐりこませた。

「……もしかして、泣いてる?」

 くぐもった声が横から聞こえてくる。
 泣いてないよ、と返事をしたら、また鼻水がたれそうになって、ずずっとすする。

「どうした?」

 泣いているってばれてしまうのが嫌で、ジャイさんに背を向ける。私の動きに合わせたように、隣から衣擦れの音がする。ジャイさんは私の方に体を向けたのかもしれないけど、もう背中を向けてしまったから、わからない。

「……凛香ちゃんは、意外と人に言いたいことを言わない子だよね」

 眠たげな柔らかい声が、すぐ近くから聞こえてくる。
 ジャイさんの指摘に、私は何も答えられない。

「辛いなら、言えばいいのに……。ちゃんと聞くし」
「つ、つらくなんか、ない」

 泣いているってバレバレな嗚咽交じりの鼻声しか出せなくて、ますます身を縮こまらせる。

「普段は傍若無人なくせに、弱いところを見せたがらないよなあ」

 ジャイさんの声は優しい。父親が娘の悪いところをぼやいてるみたい。悪いところを話してるのに、そこには愛情があるから、嫌なかんじがしない。
 はっとする。
 ジャイさんの言葉は、私に対する愛がある。
 だから、こんなにも心にじんと響く。包み込むようなこの雰囲気が、私の心を解きほぐしてくれる。

 ――私、ずっとずっとこの声に癒されてた。
 低音の声が心地良くて、ゆりかごの中で眠っているような気持ちにさせてくれる。
 初めてジャイさんと寝たあの日から、私はこの声に魅了されていた。

 そして、惹かれてた。

 優しく触れてくれる指先に、私を想ってくれる言葉ひとつひとつに。

「ジャイさんといると、何もかも洗い出される気がする」
「なんだそれ。アライグマ?」
「アラジャイグマ」

 ぷ、と噴き出す。アラジャイグマ、ちょっとかわいいかも。

「ねえ、腕枕して」

 もそもそと動いて、ジャイさんと向き合う。だけど、やっぱり恥ずかしくて、顔は見られなかった。
 ジャイさんの腕が布団から出されて、私の頭の下におさまる。
 そのまま体を引き寄せられたから、私はジャイさんの胸の中に顔をうずめる格好になった。
 ほんのりと煙草の匂いがする。
 煙草の匂いなんて、あまり好きではないのに、なぜだかもっと吸い込みたくなった。
 スーハースーハーしたら、ただの変態になるから、我慢するけど。

「ジャイさんは、なんで私が好きなの? 本当に好きなの?」

 ベッドの中で、聞くべきことじゃないかもしれない。
 セックスをするためなら、平気で「愛してる」って嘘をつく男なんてざらにいるのだ。

「面白いし、楽しいし。やることなすこと変てこで空回りしてるくせに必死でさ。平気で男と寝る女なのかと思えば、元彼のことをずるずるひきずって、一途丸出し。存在自体が面白すぎて、手放したくなくなった。俺のそばにいてよ」
「あんまり、嬉しくない言葉ばっかり」
「そう? 褒めてるつもりだよ」

 顔がニマニマしてしまう。抱き寄せられているせいで、今の表情はジャイさんにばれない。こんな顔、絶対に見られたくないから、抱き寄せられてて良かった。
 だって、素直な気持ちで、言えるんだもん。嬉しい。

 うん。嬉しい。

「……ありがとう」
「それは返事になってないな」

 少し不機嫌になったジャイさんの声が、ちょっとこそばゆい。

「だって、ちゃんと好きって言ってないよね」

 催促してるみたい。でも、言ってほしい。言葉にしてほしい。
 ベッドの中での、戯言の愛でもいい。セックスをするための、嘘でもいい。

 私を捕まえてよ。

 離さないで、強引でもいいから、連れ出してほしい。

 迷いの渦の中で、惑うばかりの心。ループする苦しみから、助け出して。

 私の肩を抱く手に、きゅっと力がこもる。
 熱く、強い手。

「凛香ちゃんが、ちゃんと元彼を吹っ切ったら、告白する」

 首筋がひやりと冷たくなった気がした。

「俺に逃げようとしてるだろ?」

 それは、何度も何度も、そう本当に何度も自問自答してきたことだった。
 私、今、流されて、楽な方の答えに逃げようと……してた?

「別に俺はそれでもいいけど、凛香ちゃんは納得できる?」

 体が固くなって、汗がにじみ出る。見開いた目が乾いて、また涙が出そうになる。

「昔の男を吹っ切るために、他の男を見つけるのだってありだよ。だけど、凛香ちゃんはそれで平気なタイプじゃないじゃん? 不安なことや不満なことを抱えまま付き合いだしても、うまくいかねえし。凛香ちゃんがちゃんと答えを出さなきゃ、進まないでしょ」

 答え。答えって、何?
 どんな答えを出せと言うの?
 不安なことや不満なこと?
 私が一体、何を抱えているというの?

「凛香ちゃんは、俺のことを好きになるから、俺は気長に構える」
「……な、なにそれ! どこから来る自信!?」

 思わず顔をあげる。ジャイさんと視線がかみ合う。
 涼しげな瞳を私に向けて、にやりと笑う。いつもの不敵な笑みを前に、私は蛇ににらまれたカエルのように動けなくなってしまった。

 落とされる口付けを、私は拒めない。
 首筋に添えられたジャイさんの手が熱い。少し乾いている手に触れられるたびに、その部分の水分を取られてしまいそう。
 口の中に侵入してくる舌を招きいれ、自分の舌を絡ませる。
 ジャイさんの背中をつかんだ手が熱を放ち、体全体が熱を帯びていく。
 ほんのりと漂う煙草の香りは、まるで媚薬のよう。
 名残惜しく、下唇を噛みながら、口を離す。

「これ以上は、だめ、だからね」
「わかってるよ」

 ぎゅっと抱きしめられたら、ほっとしてしまった。
 泣いていたのが、馬鹿みたい。

「……惚れさせてみせてよ」

 首筋に吐息を這わせて、挑戦的に言葉を吐く。

「言うねえ」

 ジャイさんが笑う。
 鼓動が溶け合う。
 愛おしい時間を、私はただ抱きしめる。

+++++++++++++

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拍手いただけると嬉しいです!

あとがき↓
メリークリスマスイブです!
つーか、クリスマス、はやっ!!


私のきゃわゆい甥っこと姪っこに何か買ってあげたいけど、クリスマスはがっつりがーーーーっつり仕事なので、渡せてもお正月…(涙)
クリスマスプレゼントじゃ、ない、よね……(涙)


拍手やコメント、ありがとうございます!Resにてお返事しております!


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【2009/12/24 03:00】 | Deep Forest(恋愛)
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マミ
初めて書きます。いつも楽しみに読まさせていただいてます。今夜はなにげなく立ち寄ってしまってコメントまで書いてしまって明日は仕事なのに・・・
もう夜中の2時すぎ・・・
なんもなかった今年のクリスマス 立ち寄ってよかったです。ほんのりした31話でちょっと私もあったかい気持ちになりました。とても良くねむれそうです。
更新楽しみにしています。頑張ってください。

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きょう、反論する?

*このエントリは、ブログペットの「ぷっちょん」が書きました。

【2009/12/24 07:16】 | ブログペットぷっちょんの部屋
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きよこの短編小説一覧です。

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たとえば、この恋。
たとえば、この恋が終わるのだとしたら。(文字数1000文字程度)

【2009/12/25 01:00】 | 作品一覧
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メリークリスマス!


たとえば、この恋








 たとえばこの恋に終わりがあるのだとしたら。




「ねえ」

 呼びかけて振り返る、その時の。

「明日は、会える?」

 一瞬見せる、困った顔。

 眉尻を下げて、黒目の大きな瞳を少し細める。

「……ごめん」

 答えを出される前に、私は自分で答えを出してしまう。
 だって。
 怖いんだ。

「また、ね」

 学校からの帰り道、駅前の踏み切りで、いつものように別れる。
 手を振ったのと同時に、踏切が鳴り始める。点滅する赤い光に照らされる表情が、あの頃のものとは変わっているのを、今、知った。
 閉ざされるのは、この踏み切りだけじゃない。
 私はきっと、私の心の扉も、閉じてしまう。

 またねと笑って、明日も会えると信じて、当然のように明日も一緒にいるって、思っているのに。

「明日は、ある……?」

 明日もあさってもしあさっても世界はずっと続いていけばいい、と思うのに、今すぐ終わってほしいとも思う。
 明日の辛さと、あさっての切なさと、しあさっての苦しさが、ずしりとのしかかって、重たくて仕方ない。

 灰色の空は、かすんだもやを漂わせて、私から『正しい判断』を奪う。

「ねえ」

 呼びかけても、答えてくれる声は無い。

 わかってる。私が我慢すればいいだけのこと。
 自分を追いつめてるのは、自分自身だってこと。
 だからこそ――だからこそ。

 一人で歩く家路はやけに遠くて、冷たい空気でむき出しの足が冷える。足の先っぽがジリジリと悲鳴をあげていた。


 彼の顔が、今は直視できない。
 きちんと見てしまったら、きっと居たたまれなくなって逃げたくなる。

 もっと笑ってほしい。
 困った顔をさせているのは、私だから。

 笑ってよ、心の中で、呪文のように投げつける。

 人懐っこいあの笑顔が、好きだったのに。

『メリークリスマス』

 携帯電話の液晶画面に踊る文字を見て、胸が高鳴る。

『明日はどこに行く?』

 ――明日。

「一緒にいられれば、それだけでいい」

 ぽつりとつぶやいて、携帯電話を閉じた。

 明日もあさってもしあさっても、どうかずっとその先までも。

 ずっとずっと続いていきますように。

 破滅をどこかで願っても、彼との繋がりがあるだけで、やっぱり世界は続いてほしいと願ってしまう。

 現金な、思考回路。

「サンタさんには、何がほしいってお願いしたの?」

 スーパーから出てきた親子の会話が耳につく。
 赤いセーターを着た幼稚園児くらいの女の子は、「うさぎー」と大きな声で返事していた。

――サンタさんには、何がほしいってお願いしたの?




 サンタさん。私は、時間が欲しい。

 彼と一緒にいる、時間。


 
 たとえば、この恋に終わりがあるのだとしたら。


 終わらない恋を、ただ願うだけ。







あとがき↓
メリクリ記念作品です。

明るい話を書こうと思ったんですが、ここは逆をついて暗い話にしてみました!

バックグランドが見えないようにしたので、『私』と『彼』がどういう状況なのかはご想像にお任せします。
一応、拙作(なろうに投稿した作品含め)の中のどれかの主人公なんですけど。
そこはヒミツです(笑)


皆様、素敵なクリスマスをお過ごし下さい(^^)


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【2009/12/25 01:29】 | 短編小説
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こんばんは^^
こゆみ
あちらの日記から飛んで参りました!

いいですね、こんな切ない胸のうち。
相手の気持ちを深読みしてしまって、自己完結してしまう彼女の気持ち解る気がします。
読んでいて「頑張って」と思わず声を掛けてしまいそうになりました^^

そんな不器用な恋もいいなぁ

それにしてもクリスマスって良いですね。
こうやって、素敵なお話を読めるのですから^^

では
メリークリスマス! 良い夜になるといいですね♪


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