きよこの書き散らかし小説。
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

Deep Forest

目次へ
TOPへ

第24話 ジャイさん品定め作戦、計画編

+++++++++++++

「だったら、合コンする?」

 電話の向こうで、舞子はのん気なことを言う。
 日曜日、昼間の内に部屋の掃除をして、一息ついたところで舞子に電話をした。
 舞子は彼氏とデート中だったみたいだが、ドライブ中で暇だからと私の相手をしてくれている。
 ドライブしてるんだったら、彼氏と仲良くおしゃべりすりゃいいのに。
 五年も付き合っているから、その辺はもう気を使いあう必要が無いらしい。

「なんで合コンなの」

 つい、ぶうたれる。
 ジャイさんとのことがひっかかってしまった私は、大親友(たぶん)の舞子に相談することにしたのだ。
 本気かどうかはさておき、ジャイさんは私のことを好いてくれている。私も、嫌いではない。
 でも、だからと言って付き合うのも、何か違う気がする。
 喉に刺さった魚の骨みたいに、飲み込めない何かが、くすぶってる。
 気になって気になって仕方ない。だけど、取り除こうとあがいても、それはしぶとく存在する。

 ジャイさんに対する感情が、自分でもわからないのだ。
 好きなの? と聞かれたら、嫌いではない、と答える。
『好き』と『嫌いではない』はイコールではないし、相容れない感情だ。
 やっくんと別れて不安定な今の私には、冷静な判断が出来ない。今、ジャイさんを好きだと思ったとしても、それが本物の『好き』ではないような気がする。
 そういうあいまいな気持ちをひきずりながら、ジャイさんと付き合うことが、私には出来そうに無い。
 ふられて傷心しているなら、新たな誰かと付き合うことで傷を癒すのも選択の一つだろう。
 でも、その選択を選びたいと思えない。
 いつかはそうすることがあるかもしれないけど、今の私には出来ないことなのだ。

 どうすればいいのかわからなくて、どっちつかずに彷徨う気持ちを誰かに話してすっきりしたかった。
 それで舞子に相談したら、舞子は開口一番。

 合コンする? ときたもんだ。

「だってさあ、好きかそうじゃないかわかんないとか、寂しいから勘違いしそうとか、だったら寂しくないような環境に身を置いてみるしかないじゃん」

 舞子は強気な口調でそう言う。

「とりあえず楽しいこといっぱいすればいいよ。楽しくして寂しさを紛らわせなよ。それから判断すりゃいいでしょ」

 楽しいこと、ねえ。
 ――ジャイさんとのデートはそれなりに楽しかった……かな。

「合コンで別の男を見てみるのも手じゃない? 別の男とデートしてみなって。そいつと遊んでも今みたいに悶々としないなら、ジャイのことそれなりに好きってことかもしれないよ?」
「え? 悶々って?」

 矢継ぎ早に繰り出される舞子の『ジャイさん品定め作戦』についていけなくなってくる。
 ベランダに干した布団に寄りかかりながら、もう一回言ってとせがむ。

「凛香さあ、ジャイのことすごい気にしてるじゃん。悶々してるじゃん。他の男に対してもその悶々抱えるんだったら、ジャイがどうのってことじゃなくてやっくんのことを未だひきずってるってことでしょ? 逆にジャイにだけだったら、ジャイのこと好きになる可能性高いってことじゃない?」

 舞子はジャイさんのことをさん付けしなくなってしまった。ジャイなんだかジョイなんだかジェイなんだかわかんなくなってくる。

「もしくは、ジャイとやれ」
「は!? やれって、何を!?」

 ベランダで大声を出してしまい、声が思いっきり外に響く。家の脇の私道を歩いていた小学生がびっくりした顔で見上げてきた。
 慌てて柵の下に身を隠し、声のトーンを落とす。

「な、……やれって、は?」
「エッチしてみれば?」

 あんた隣に彼氏いるんだよね!? と問いただしたくなる。電話の向こうから大笑いしている声が聞こえるから、舞子の彼氏に私との会話は筒抜けなんだろう。

「シラフでエッチすれば? ジャイの気持ちを確かめられるんじゃない?」
「ば、バカ言わないでよ! 私が遊び人だと思われる!」
「酔っ払ってヤる時点で、そう思われてるから今更だって」
「今更言うな! あれは、私がとち狂ってただけで! もうあんなことしないって、ジャイさんに言ったもん!」

 舞子の言うことは正しいよ。遊びでセックスするような女だって思われてしまっているから、ジャイさんは私にモーションをかけてくるのかもしれない。
 それがわかってるから、不安なのに。はっきり言われると、さすがの私でもへこむ!

「酒飲んでるときなんて、お互い判断能力低下してるでしょうが。酒飲まないで誘ってみてさ、ジャイがノリノリになるんだったら、あんたのことそういう目で見てるってことじゃないの?」
「そういう、目って?」
「ヤれる女」

 頭痛がしてきた……。

「だめって言ってくれたら、真剣に考えてくれてるってことかもよ?」

 舞子の言うことはわからないでもない。
 でも、試すような真似をすることが、まず気がひける。
 それに。

「言ってくれなかったら、へこむよ」
「もしかしたら凛香のこと好きすぎて逆に『やっと俺に心許してくれた!』って喜んでエッチしちゃうかもしれないし。判断基準にするには、微妙かもね」

 言いだしっぺのくせに、否定した!

「私から言わせれば、ジャイのこと、すごい気にしてるよね。それって、恋の始まりじゃない?」
「こいのはじまり」
「こうしたら相手はどう思うんだろうとか、こんなこと言ったら相手はどうするんだろうとか、そういうのって、相手のことを真剣に考えてるってことじゃない? 気になる、気にしてる。それは恋ですよ、お姫様」
「こい」
「池の鯉じゃないからね」

 どばーんと頭の上で鯉が跳ねた気がした。

+++++++++++++

次話(第25話)へ
目次へ
TOPへ

拍手いただけると嬉しいです!
スポンサーサイト

【2009/10/01 02:34】 | Deep Forest(恋愛)
トラックバック(0) |
*11月25日 拍手からコメント下さったほたさまへ*
拍手&コメント、ありがとうございます。
こちらこそ、ほたさまに読んでいただいて嬉しいです。
この二人、すっかりコンビ化しちゃってますね(笑)
週一は更新できるように頑張ります。
ほたさまのご感想でやる気が沸きました。ありがとうございました!


*11月25日20時に拍手から「久々の更新ですね」とコメント下さった方へ*
(反転してお読み下さい)
拍手&コメント、ありがとうございます。
お待たせしてしまってすいませんっ!
ですが、楽しんでいただけたようでよかったです。
ばあちゃんの「メイちゃ~ん」が脳内リピートしていることにほくそ笑んでます(笑)
更新は週一程度でノロノロですが、またぜひ読みに来ていただけると嬉しいです。
ご感想、ありがとうございました!



*11月25日 拍手からコメント下さったBIGAPPLEさまへ*
拍手&コメント、ありがとうございます。
どうなるんでしょう、このふたり(笑)
今後の二人の行く末を、見守ってくださると嬉しいです。
こちらこそ読んでくださりありがとうございました。
さらなるドキドキ目指して、頑張ります!


*11月24日 拍手から「Deep Forest一気読みしました」とコメント下さった方へ*
(反転してお読み下さい)
拍手&コメントありがとうございます。
一気読み、お疲れ様でした!
テンポの良さを褒めていただけるとは! 楽しんでいただけているようで嬉しいです。
遅筆でなかなか更新出来ていませんが、どうぞまた来て下さい。
ありがとうございました!



*11月16日 拍手からコメント下さった藍高さまへ*
拍手&コメントありがとうございます。
小説サイトはたくさんあるようですが、どれも素敵な作品が多くて楽しいですよね。
こちらのサイトも楽しんでいただけたようで幸いです。
また来てくださる日をお待ちしています(^^)
ありがとうございました!


*11月13日拍手からコメント下さったまきさまへ*
(反転してお読み下さい)
拍手&コメントありがとうございます。
楽しんでいただけたようで嬉しいです。
ジャイアニズムを崇拝(笑)している作者としては、ジャイアンネタをツボだと言っていただけると嬉しくってしかたありません。
またぜひ遊びに来てください!
間違えて送信された分は、一応消しておきますね。
ご感想ありがとうございました!励みになりました。



*11月11日に拍手からコメント下さったみどりさまへ*
(反転してお読み下さい)
拍手&コメントありがとうございます。
ついにジャイさんちに行っちゃいました(笑)
不定期でほんと申し訳ないですが、近いうちにまた更新しますので、もう少々お待ちくださいませ。
気になると言っていただけて嬉しいです。
ご感想、ありがとうございました!



*11月5日 拍手からコメント下さったちなさまへ*
(反転してお読み下さい)
ご感想ありがとうございます。
ちょちょちょ、読んでくださったんですか!
嬉しいですー!
ちなさんのおかげでやる気がでまくっております。
ちなさんの大好物の(笑)、女の友情燃えまくり作品に出来たらと思います。
ありがとうございます、ブラザー!



*11月2日 拍手からコメント下さったほたさまへ*
(反転してお読み下さい)
ご感想ありがとうございます。
主人公のあほなノリを気に入っていただけて嬉しいです。
ジャイさんとの関係がどう変わっていくのか、ぜひ見届けてください!
ほたさまのご感想でまたもや力をいただけました。
ありがとうございました!



*10月31日に拍手からコメント下さったみどりさまへ*
(反転してお読み下さい)
優しいお言葉、ありがとうございます(涙)
しかも、新連載の方まで読んでくださるとは・・・!!
90度頭を下げてお礼を言わせてください!

月末月初は仕事でやることが多くてなかなか書けないのですが、もうすぐ終わるので、また更新ペースを戻して頑張ります。
ありがとうございました!



*10月12日にコメント下さったヤマトさまへ*
(反転してお読み下さい)

コメントありがとうございます。
お言葉、すごく嬉しかったです。
ヤマトさまに楽しんでいただけるように、執筆頑張ります。
気になると言って頂けると、意欲が湧きます!
ご感想、ありがとうございました。



*10月9日にコメント&拍手下さったromさまへ*

コメントありがとうございます。
続きを待ち望んでいただけるのは作者冥利に尽きます。
仕事もありますので、なかなか早いスパンでの更新は難しいのですが、頑張ります。
ありがとうございました!


*10月7日に拍手からコメント下さったほた様へ*
(反転してお読み下さい)

拍手とコメント、ありがとうございます!
この作品まで読んでくださったんですね。すごい嬉しいです。ありがとうございます。
ジャイさんが意外と好評なことに驚いてます(笑)
ほた様に最後まで楽しんでいただけるように頑張ります。
ご感想ありがとうございました。
はげみになります。

【2009/10/09 01:29】 | 拍手・コメントお返事
トラックバック(0) |
Deep Forest

目次へ
TOPへ

第25話 ジャイさん品定め作戦、お誘い編

+++++++++++++

 これが恋だというなら、なんて最悪な始まりなのだろう。
 セックスから始まった男女が付き合う。うまく行く可能性は、そんなに高くはないはずだ。
 男はセックスするのがゴールだと、誰かが言っていた。女はそれが始まりなのに。
 男女の気持ちの温度差はそうして発生する。気持ちのすれ違いはすぐに破局に繋がる。
 始まっても、終わってしまう。

――好きだったの。

 そう言って泣いたのは、ほんの三週間前。
 またあんな思いをしなければいけないのか。
 誰かを好きになれば、いずれ別れる時にこれでもかと打ちのめされる。好きで好きで好きで。その気持ちでいっぱいだったのに、いとも簡単に終わってしまう。
 風船がぱちんと弾けるように、あっけないものだ。

 どんよりと曇った空を見上げる。持っていた傘を握りしめ、ため息をこぼした。
 通勤途中のサラリーマンが私を追い越していく。その背中に、やっくんの背中を重ねる。
 あの日、見送った背中。
 もう二度と見ることの叶わない背中。
 上背のあるやっくんはスーツがとても似合っていた。働く男の背中は頼もしくて格好良い。あの背中についていきたかった。
 隣をずっと一緒に歩けたら、どれだけ幸せだったろうか。
 結婚しようと言ってくれたやっくんに、笑顔で「YES」と答えていたら、今と違う未来があったのだろうか。
 その方が幸せだったのだろうか。それとも、不幸に落ちていくだけだったのだろうか。

 いつだって、自分の選択を間違っていたとは思いたくない。
 思い悩んで、自分が出した答えを、誤っていたと思いたくない。

 ……でも。

 かぶりを振って、腕時計を見る。始業時間が差し迫っている。急がなければいけない。私の周りを歩く人たちも足早に会社を目指している。

 今日は、ジャイさんが久々に来る。システムの件で打ち合わせの予定が入っているのだ。
 システム開発でしょっちゅう私の会社に訪れていたジャイさんだが、最近は顔を出す回数が減ってきていた。システムもほぼほぼ出来上がっていて、後は私たち社員の意見を参考に多少の改良を試みているだけで、稼動はもうすぐだ。
 そのため、やりとりはメールが多く、ジャイさんは自分の会社で缶詰状態で働いているらしい。
 今週に入ってから、一度も会っていない。来週もデートだなんて言っていたけど、デート出来るんだろうか。
 どうするのか聞こうと思ったけど、今更ながらジャイさんのメアドを知らなかったことを思い出した。やっくんと別れた日、会社用のケータイに電話をかけたことから、ジャイさんは私の番号を知っているようだが、私はジャイさんのプライベートの携帯番号さえ知らないのだ。

「あー……」

 急に結論が出る。
 なんてこった。私とジャイさんは、希薄な繋がりなのだ。
 お互いのプライベートな連絡先さえ把握してない。
 そんなの、どう考えたって、お遊びじゃないか。

「遊びか」

 納得した。順を追って考えれば、結論はすぐ出る。
 馬鹿らしい。
 遊びに付き合うほど、私は飢えてない。別に男なんていらない。今は恋なんてしたくない。傷つくのはまっぴらごめん。どうせ男は浮気する生き物だ。本気で恋したって、無駄!

 はっと鼻息を飛ばして、早足に進む。通勤途中だというのに思い悩む自分に活を入れるため、傘を強く握る。 明けない梅雨空を睨んで、スカートの幅限界まで足を広げて歩く。

 でもさ、でもさあ。

 本当は誰かにそばにいてほしい。
 独りでいるのは辛いんだよ。

 いつまでも気持ちは右往左往。道の真ん中であっちに行くべきかこっちに行くべきか悩んでる。
 矛盾してばかりで、自分の心が見えない。
 どこに行けばいいのか、わからない。


 ***

「佐村、これ」

 目の前の席から、ぬっと手だけが現れた。握りしめられているのは、伝票の束だ。

「……川田さん。いつからの伝票ですか」
「今月頭から」

 こめかみがひくつく。営業の川田の物忘れの激しさっぷりは私の堪忍袋の緒を見事に切ってくれる。

「いつも言ってますよねえ。伝票はすぐに出して下さいって」
「すまん、悪気は無い」
「あったらただじゃすまないですよ! 殴りますよ。殴っていいですか。平手打ちとげんこつと浣腸どれがいいですか。選ばせてあげるだけの心の余裕はありますよ」
「全然、心の余裕を感じないんだが」
「わかりました。平手打ちですね」
「何も言ってねえだろ!」

 寝癖を直し忘れたみたいなぼさぼさ髪をさらにぐしゃぐしゃにして、川田は後ずさる。
 いつかこいつを隅田川に落としてやろうと誓った。早く春にならないかな。隅田川沿いで花見でも企画して突き落としてやるのに。

「あ、こんな時間だ。営業先に行ってきまーす」

 後ずさったままカバンをつかむと、川田はさっさと逃げてしまった。
 ちっ。逃げ足だけは速いんだよな。

「佐村さん、相変わらず怖いですねー」

 のん気な声が聞こえて、はっとする。
 川田と入れ違いで、ジャイさんが入口に立っていたのだ。

「おはようございます」

 薄い唇に爽やかすぎる営業スマイルを張り付かせ、ぺこりと会釈してくる。
 隣に座っている岸川さんがにこやかに「おはようございます」と挨拶を返したから、私も慌てて頭を下げた。

「システムが正式に完成したので報告に来たんです」

 ――シラフでエッチすれば?

 急に舞子の言葉を思い出して、顔が火を噴いたように熱くなる。

「会議室を借りてるんで、今からいいですか?」

 パソコンに入ったスケジュールを確認する。そうだ。ジャイさんとの打ち合わせだ。

「はい」

 妙に慌てふためきながら、ノートとスケジュール帳を手にとって、会議室に向かうジャイさんの背中を追った。
 会議室に入り、ジャイさんを奥の席に座らせ、私も息を吐きながら席についた。
 こほんと咳払いをしたところで、私の後輩の女の子がお茶を出してくれる。「失礼致しました」と頭を下げて後輩が出て行くのを見送り、もう一度咳払いした。
 右耳がドアの閉まる音を捉える。途端に、緊張感が増す。

「本当は一対一で打ち合わせする必要無いんですけどね。職権乱用ってことで」

 ジャイさんはそう言っていたずらっ子みたいに笑い、お茶をすすった。

「あの」

 聞きたいことがあるような気がして先に声を発したけれど、なにが聞きたかったのかわからず、言葉に詰まる。

 ――シラフでエッチすれば?

 舞子の言葉がまたもやリフレインする。
 シラフでエッチって、どうするの? 色気でも出しゃいいのか? どっから出るの、色気! 脇の下? 口? 鼻? 髪の毛?
 ストレートに誘えばいいんじゃない? ジャイさん、私とシラフでエッチしようぜ!

 ……アホか! 出来るか、んなこと!

 絶対、舞子にそそのかされてる。ていうか、シラフでエッチに何の意味があるの?!

「凛香ちゃん、どうしたの? 百面相の練習?」

 いつの間にか、変顔百連発していたらしい。

「あ、いや。あの、友達にジャイさんとシラフでエッチしろって言われちゃったもんで……」
「え」
「え?」
「えーと……」
「え、えええええ」

 今、私、とんでもないこと、言っちゃいましたよね?

+++++++++++++

次話(第26話)へ
目次へ
TOPへ

拍手いただけると嬉しいです!

あとがき↓
拍手やコメント、ありがとうございます。
ほんとにほんとに励みになってます(涙)

お返事はこちらです。

投稿小説サイト「小説家になろう」でも、この作品を連載しています。
なろうがリニューアルしたのですが、ちょっとサイトが安定して稼動していないようなので、しばらく更新を待とうと思ってます(^^;
なろうとのお付き合いも長いので(笑)、気長にサイトの安定を待ちます(^^)

こちらは今までどおり週1程度の更新でやっていきます。


追記を閉じる▲

【2009/10/09 01:52】 | Deep Forest(恋愛)
トラックバック(0) |
Deep Forest

目次へ
TOPへ

第26話 ジャイさん品定め作戦、お返事編

+++++++++++++

「あは、あははあははははっはっは」

 笑ってごまかすしかない。喉の奥から声を絞り出し、強張った口角を無理やり上げる。片手で頭を掻きながら、てへっと小首を傾げてみせた。
 ジャイさんは呆気にとられた顔でぽかーんと口を開けていたが、私の笑いにつられたのか、引きつった笑みを浮かべた。

「というわけで、帰ります」

 どういうわけなのかわからないが、ここはとっとと退散しよう。お疲れ様でした。

「ちょ、ちょ、待てーい」

 立ち上がりかけた肩を押さえつけられ、私はもう一度どさっと椅子に座ってしまった。

「今、面白いこと、言ってたよね?」

 不敵な笑みで、私をじっと見つめてくる。目をへの字に歪ませて、実に楽しそうだ。

「エッチビーの鉛筆削りの話ですか」
「そんな話してないはずだけど」
「エロな男は削ってしまえというお話ですけど、聞きますか?」
「……想像するだけで恐ろしいから聞きたくない」
「じゃあ、帰りますね!」

 有無を言わさぬ会心の笑顔を出してやる。たぶん今、我が人生で一番最高な笑顔をしてると思う。

「凛香ちゃん、シラフでエッチしようって言ったよね?」

 直球で来たよ! ズドガーンと大砲で胸を貫かれた。痛い。死ぬかもしれない。

「しようなんて言ってません。してみれば、って言われただけです」

 日本語がカタコトになる。口がカクカクとロボットみたいな動きをしてしまう。
 誰か、タイムマシーンを下さい。私、一分前に戻りたい。

「それじゃ、聞き間違いじゃなかったってことか」
「どほぢぐおい語で、『家に帰りたい』っていう意味の言語ですから、聞き間違いですね。帰ります」
「何語? どこの国? ていうか、何人?」
「う」
「う?」

 言い逃れが出来なくなった私がよっぽど面白いのか、ジャイさんの顔がどんどん意地悪くなってくる。切れ長の目を細め、笑いをこらえる口元を手で一生懸命隠してる。

「うっさい! バカジャイ! エロ! 変態! ドエス! ど根性ガエル!」
「り、凛香ちゃん、聞こえちゃうから」

 思わず怒鳴り散らしたら、ジャイさんは笑うのをやめて「しー」と人差し指を立て、ドアの向こうを目で指した。
 ああ、もう! わかってるってば。ここは会社だ。大騒ぎすれば、薄い壁の向こうに聞こえてしまうかもしれない。
 皆、仕事をしているから気付かないかもしれないけど、もしかしたらってことは充分ありえる。

「ど根性ガエルは関係ないよね」
「そんなこと言ってません」
「思いっきり言ってた」
「叫びますよ」
「すいません」

 立場は私の方が優勢らしい。

「で、どうする?」
「どうするって、何が?」

 またもやジャイさんの顔に笑みが浮かぶ。身を少し前に乗り出して、「する?」と聞いてきた。
 ……残念ながら、立場は私の方が優勢になる隙なんてほとんどない、ド劣勢らしい。

「するって、何」

 一応、聞いてみる。
 わかってます。わかってますけど、主語が無ければ、日本語ってよくワカラナイ。

「セックス」

 ぱかーと男子用の便器みたいに口が開いてしまった。口元に両手を当てれば、ムンクの叫びの出来上がりだ。
 はっきり答えられた。濁してくれなかった。やっぱり、ジャイさんはドエロだ!

「俺はいいよ。凛香ちゃんさえよければ」
「ぱ、ぱ、ぱぴぱなぱぴ」
「凛香ちゃん、宇宙と通信し始めないで」

 こ、こ、こ、この人、率直過ぎじゃない?
 宇宙と交信もしたくなるわ!

「俺は凛香ちゃんの気持ちを一番大切にしたいから。俺とヤッて、何かが変わるならその方がいいし。俺に断る理由は無いからね」

 一部を除き、すごく嬉しいことを言ってくれたけど。一部が、非常におかしいんですけども。

「今週のデートまでに考えておきなよ。一時に海浜公園駅ね」
「デート!?」
「約束したじゃん」
「してないしてない」

 いや、したけどさ。してないことにしたい。

「じゃあ、今約束ってことで。ほら、時間無いから、システムの説明をしますね」

 しゃべりながら、あっという間に仕事モードにオンしてしまったジャイさんは、さっきまでのニヤニヤ顔もどこへやら。広げたノートパソコンを真面目な顔でいじりだす。
 真っ赤になる顔を押さえつけながら、スーハーと息を整えた。顔の火照りは取れそうにない。ドキドキと高鳴る心臓を心の中で押さえつけて、パソコンの画面に集中したふりをする。

 なんで、こうも強引なんだ。
 そんでもって、なんで私は断れないんだ。

「こういうの、やめて下さい」って真面目な顔で言えば、たぶんジャイさんは聞き入れてくれるだろう。面白がってこんな風にお誘いをかけてくるのは、私が本気で嫌がってるように見えないからだ。

 ――本気で嫌だと思ってる?

 ううん。思ってない。
 本音は、違う。

 そんなの、もうずっと前から、わかってる。



 ***

『来週の金曜、あけといてね』

 仕事帰りの電車の中でボケーと中吊り広告を読んでいた時だった。
 ケータイがブルブル震えたのに気付いた。
 舞子からのメールは表題も絵文字もないそっけないものだった。

『いいけど、なんで?』

 すぐに返信メールを送ると、舞子からもすぐ返事が来た。

『合コンやるよー』
「はあ!?」

 つい声をあげてしまい、恥ずかしくなってうつむく。もう一度ケータイを見るが、やはり『合コンやるよー』の文字と、笑顔の絵文字が踊っている。
 この間、電話した時に「合コンやる?」なんて言っていたけど、まさか本気だったとは。

『十九時に新宿に決まったから。オシャレしてきてね。イケメン来るから(はーと)』

 ……マジデスカ。

+++++++++++++

次話(第27話)へ
目次へ
TOPへ

拍手いただけると嬉しいです!

あとがき↓
拍手やコメント、ほんとにほんとにありがとうございます。
がーっと書ける時は書けるのですが、書けない時はほんとに書けないので、コメントいただけるとやる気がメラッと燃えちゃいます。
ありがたい限りです。

お返事はこちらです。


おいしいワインを飲みました。
お酒あんまり飲めないので、ワインも苦手だったんですが、飲めた!
口当たりもまろやかでお酒の臭さが無いというか。おいしいのは違いますねー。

まあ、速攻で頭痛に苛まれましたけど。
二日酔いならぬ一日酔いです。
酒、こわい!!


追記を閉じる▲

【2009/10/18 04:41】 | Deep Forest(恋愛)
トラックバック(0) |
『Deep Forest』、更新が遅れていまして、申し訳ありません。
月末は仕事でやることが山積みなのと、モチベが下がり気味で、なかなか書けない日が続いてます(涙)

次回の更新は30日深夜(31日1時~4時ごろ)を予定しています。
もうちょっとだけお待ちいただけると幸いです。



久々の2連休でした。何の予定も入れてなくて、ゴロゴロして終わりました・・・
昼間に小説でもかいときゃよかったと後悔中。

一日目は買い物とかしてぶらぶらしたんですが、二日目はほんとに何もしなかった・・・
なんで何も無い日って、何もしないで終わらせてしまうんだろう(^^;

***

10/31追記

すすすすすすすいません。
あと一日お待ち下さい!



【2009/10/29 02:54】 | 雑記
トラックバック(0) |
きよこと、会話を結婚したかった。

*このエントリは、ブログペットの「ぷっちょん」が書きました。

【2009/10/29 07:13】 | ブログペットぷっちょんの部屋
トラックバック(0) |
Fly high, High sky

「あてのない旅に出よう」
美月の突然の誘い。
私たちの人生の、プロローグを終わりにする旅が始まった。


TOPへ
最新話はこちら

第1話 疲れた人生と、始まりの言葉
第2話 ふられて旅
第3話 目指せ、桃源郷!
第4話 ミノムシの思い出
第5話 美月と私
第6話 似たもの同士
第7話 本当は、わかってる。
第8話 恋愛ごっこ
第9話 世界一、かっこいい
第10話 予感
第11話 嫌になること
第12話 俗世を楽しむ
第13話 夢見る乙女
第14話 心の傷
第15話 私たちの距離
第16話 美月の行方(12/5UP)
第17話 逃げていた(12/5UP)
第18話 道程(12/5UP)

あと3,4話くらいで完結します。




ぽちっと押していただけると励みになります。
 nnr.gif image163.gif *長編小説ランキング*

【2009/10/31 07:02】 | 作品目次
トラックバック(0) |
Fly high, High sky

目次へ
TOPへ

第1話 疲れた人生と、始まりの言葉

+++++++++++++++

 泣くしかない時ってのは、なぜか突然やってくる。
 ボロボロに泣き崩れて、頭の中がぐるぐる回って、酒を飲んだわけでもないのに、酔っ払ったみたいに何も考えられない。
 ご飯を食べても泣けてくるし、トイレにいても泣けてくるし。
 いつになったら、このボロボロ状態は終わるんだろう。

 家路を急ぎながら、空を見上げる。空の上は風が強いのか、雲が勢いよく流されていく。淡い光を放つ月が藍色の雲に隠された時、私は大切なものをなくしたことを、思い知らされた気がした。

 戻ってこない。

 もう二度と。

 この手に触れるあの温もりは、もうどこにも。

 ――ない。



 ***

 ずきずきと痛む頭をかきむしり、鳴り響く携帯電話のボタンを思いっきり押した。携帯電話の目覚まし機能は五分おきに時を知らせる。もう一眠りとまどろみかけると、すぐに現実に引き戻される。
 大きくため息をついて、腕に力を入れ体を持ち上げる。
 体ってこんなに重かったっけ。そう考えてしまうほど、腕はなかなか上がってくれない。

「あー……」

 口の端についたよだれをぬぐい、目をかきむしった。
 今日はとある企業の面接だ。就職活動を始めて早半年。夏休みに突入する直前に、ようやく最終面接までこじつけた。最終面接、最後の戦いが待っている。これが採用になれば、もう大学もほとんど行く必要が無いし、もしかしたらこの夏を満喫できるかもしれない。
 頬をパチンと叩き、ベッドから這い出る。
 カーテンの隙間から、夏を望む陽光が零れ落ちていた。


 ***

 就職活動というのは、自分を否定し肯定する。
 面接に落ちるたび、自分は社会に必要とされていない、誰にも必要とされていないと、気分が滅入ってくる。
 長所を必死に探して肯定を繰り返すけれども、そんなのは結局、自己満足に過ぎず、どんどんどんどん落ちていく。
 自分の横で同じように悲嘆に暮れていた友人が「内定もらった!」と歓喜の声をあげるたび、「よかったね」なんて嬉しそうに振る舞うくせに、実際は面白くなくて、心の中は嫉妬心で黒く染まる。
 そういう自分が情けなく卑屈な人間に思えて、またもや落ちていくのだから悪循環だ。

「人生って、重苦しい……」

 背中にのっそりと子泣きジジイが乗っかっている気がする。
 重い。背中が重すぎる。
 満員電車の中で、明日も見えない未来を思い浮かべ、ため息をこぼす。疲れたおっさんのような自分が哀れに思えてくるから、余計に泣ける。
 携帯電話がメールを受信し、メールマークを点滅させた。
 目の端ににじみ出る涙をこっそりとふいて、右手でボタンを押す。

『よっす。和実(かずみ)、元気かい? 夏休み、旅に出ない?』

 あて先には、栗井美月(くりいみつき)の名前があった。
 小学生の頃からの友達で、もう十年以上の付き合いになる美月。ここ一年ほど連絡をとっていなかったのに、突然どうしたのだろう。

『旅ね。いいねえ!』
『あてのない旅に出ようぜ、ブラザー』

 私は女なんだからシスターだろうよ。と、思ったがあえて突っ込まない。
 あてのない旅って、なんだ?

 電車の窓に映る自分の姿を眺めながら、しばらく考えた。
 胸のあたりまで伸ばした髪は疲れのせいか艶がない。前髪が影になって、隈がいっそう目立つ。チークをつけてなんとか血行良い顔に見せているのがバレバレな青白い顔。
 ああ。なんてこったい。
 私、顔にまで疲れがにじみ出てる。

 ストレスフルな人生。
 ここで一回、リセットすべきかもしれない。
 あてのない旅なんて言ってるけど、夏休みを丸々使うわけでもないだろう。長くて二週間くらいの旅行なら、たとえ今回の会社に落ちても就職活動を休んだって大丈夫のはず。

 携帯電話を広げ、ボタンをすばやく押していく。

『いいよ! で、あてもなくどこに行くの?』


 ***

 それは、私たちの最後の大冒険だった。
 行く場所も泊まる宿も、何も決めない、あてのない旅。
 私たちの人生の、見えない道筋をなぞるような旅。
 人生のプロローグを終える一歩手前、人生という物語の本番を始めるために、そして、子供の自分を終わりにするための旅。
 人生で最初で最後の、途方も無い迷路でゴールを見つける、旅だった。

+++++++++++++++

週3くらいで連載予定。

目次へ
TOPへ

あとがき↓

青春コメディです。
楽しんで読んでいただければ幸いです(^^)


追記を閉じる▲

【2009/10/31 07:05】 | Fly high, High sky(青春コメディ)
トラックバック(0) |
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。