きよこの書き散らかし小説。
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空に落ちる。In Blue


プロローグ:恋は苦しくて。


 空に思いを馳せるのは、あたしのくせなのかもしれない。
 苦しかったり辛かったりするたび、空を見上げて、言い聞かせてる。

 飛べる。飛べる。飛べる。

 まるで呪文のように唱えて、口ずさんで、反芻する。

 目に沁みるような青も、頬を照らす光も、手の平に触れたくなる雲も。

 あたしの中で溶けて消えて揺らいで。



 ――落ちていく。





「どうして、あの子なの」

 待ってて、と言われた。
 昇降口で待っていろと、そう言われた。
 靴箱が並んだ学校の昇降口は、スノコがひいてある。板と板の合間を眺めながら、膝を抱えて佐村を待っていた。
 隙間に落ちた砂埃が風で少しずつ移動するのをずっと見ているのも飽きてしまって、なんでこんな待ちぼうけをくらわなければいけないんだと、ちょっと怒りを覚えて、立ち上がった。
 そしたら、なんか気になって、いてもたってもいられなくなってしまった。

 階段を上がるたび、心臓がどくどくと音を立てた。

 それは、何かの予兆だったのかもしれない。

 三階の教室の、そのはじっこ。やましいことでもあるみたいに、隅で向き合う二人がいた。

 佐村と、佐村の腕を掴んだ女の子。

 隣のクラスの女の子だった。
 綺麗な顔立ちをしていて男子に人気がある子なんだけど、なぜかあたしはいつもにらまれるから、あんまり好きじゃない。

 斜めに下ろされた前髪の下の、マスカラで縁取られた瞳を佐村に向けて、訴えかけるように見上げる。
 小さな唇がわずかに震えて、佐村の服の袖を強くつかみ、大きな声で言葉を発する。

「どうして、あの子なの」

 とっさにあたしはドアの横にしがみついた。見つからないように縮こまりながら、嫌な場面に遭遇してしまったと、頭を抱える。

「どうしてって、なんで」

 佐村の顔はあたしの位置からでは見えない。白いシャツの背中がやけに遠く感じる。

「あの子、嫌な感じじゃない」
「それは、お前が竹永のこと、知らないからだろ」

 佐村の低い声は怒ってるようにも聞こえる。

「豊介が『知らない』んだよ。あの子、性格悪いよ」
「お前にとって悪くても、俺にとってはいいんだから、それでいいんだよ」
「絶対、後悔するから。竹永さんと付き合うの、絶対後悔するよ」
「なんだよ、それ」




 苦しい。

 苦しいんだ。

 佐村が、そばにいればいるほどに。

 汚い自分が浮き彫りになって、視界にこれでもかと入ってくる。

 怖くて、逃げ出したくなる。

 逃げたい。

 このまま、逃げ出してしまいたい。



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【2009/01/06 02:26】 | 習作
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